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メディアグランプリ

【私的福岡】幻となったevening time


私的福岡 幻 koikeさん

記事:Ryosuke Koike(ライティング・ラボ)

 

すっかり日没が早くなった。仕事を終え勤務先を出る頃には、辺りは暗くなっている。
11月というのに福岡の昼間は汗ばむ気候である。それでも、秋の深まりとともに夜の時間は着実に長くなっている。

私は夜が好きである。

子どもを寝かせた後、読書をしたり記事を書いたりすることができる自分の時間だから、飲み会で気持ちよく酔っぱらっている時間だから……だけではない。

夜のドライブが好きなのだ。
免許を取りたての頃は、男友達とあてもなく夜の道路を走っていた。昼間と違い渋滞もなく、知らない、見たことがない道をすいすいと駆け抜けることができて、わくわくしていた。

今は、1人走る。
家族で遠出したときも夕暮れを過ぎて帰宅していると、遊び疲れた子どもも寝不足の妻も、うとうとしていて車内は静かである。
運転中、音楽もラジオもいらない。エンジンの音だけに集中する。
そうすると、孤独を感じることよりも、日々の色々な束縛から解放され、何もかも頭の中から消え去り夜に溶けていくような感覚に襲われる。心が安らぎ、自分に素直に向き合うことができる。

福岡で気持ちよく夜のドライブをしようと思うと、都市高速が良い。今では都市高速も環状化し、620円で1周約30分のナイトクルージングを楽しむことができる。
百道付近を通過するとき、福岡タワーやドームの光に癒しを感じ、どこか遠く知らない場所まで連れて行ってくれそうな道路照明の列に、切なさがこみ上げてくる。

都市高速の下の外環状線でもよい。日中は激しい渋滞の場所もあるが、深夜になるとほとんど信号に引っかかることなく街中の整備された道路を突っ走ることができる。

ドライブではないが、夕暮れ以降、福岡空港周辺に車を止めて離着陸する飛行機を眺めるのも気持ちいい。光を手にした飛行機が轟音とともに飛び立ったり、光の道しるべに沿って降りてきたりするのをぼーっと見ていると、悩んだり気にしたりしていたことがどうでもよくなってくる。

夜は、人の感情が先鋭化する、感受性が高くなる時間・空間なのだと思う。
暗闇は、人の恐怖心や不安をより煽る一方、人の目を気にしなくていいという解放感をより強くする。情報の主な入力源である視覚が制限されることで、他の感覚が研ぎ澄まされたり、思考に集中することができたりする。
昼間と比べて、感情、感覚、妄想にレバレッジがかかるのだ。

これが男女の話になると、薄暗い中、ほのかな明かりに照らされた彼女の顔はより美しく見える。耳に入る言葉の一つ一つが、いつもより心に響く。ほんのちょっとしたことに対する意味づけが膨らみ、恋愛感情へと発展してしまう。なんとなく手を繋ぎたくなってしまう。いつもなら身構えることにも警戒心が緩んでしまう……などなど。

そういった効果もあってか、夜景スポットにはやっぱりカップルが多い。

そこで、車で行くことができる福岡の夜景スポットを紹介しておこうと思う。

まずは油山である。城南区にある油山の展望台からは福岡地域一帯の光を眺めることができる。市内からも近くて行きやすい場所なのでおすすめである。

続いて、米ノ山である。福岡市の隣、篠栗町にある米ノ山では大パノラマの夜景が待っている。車で登っていく道中は道幅が狭く、正直かなりの難所であるが、米ノ山の良い点は、眼下を見渡せるところまで車を寄せ付けることができて、車内からでも夜景を楽しむことができるのだ。寒い日でも車外に出ることなく、長時間眺めていられる。
そんな絶好のデートスポットだからか、私が男女数人の友達と行ったときは、周りは本当にカップルばっかりだった。

ちなみにその後、その友達の中の1人の女性と私が結婚したことは、完全に蛇足であるが、一応報告しておこうと思う。

夜景恐るべし!
だから、正直ほっとしているのだ。
仕事帰りに立ち寄ろうと思っていた福岡天狼院が、恋人の聖地にならなかったことに。

今泉のほかに福岡天狼院の候補地に挙がっていた場所は、市の中心部から離れていてアクセスはそんなに良くない。むしろ悪い。人通りも少ない。
しかし、店の窓から眺めることができたであろう夜景は、そんなことが気にならなくなるくらい魅力的なものだったと想像できる。

音もない暗闇の海に浮かぶ都市高速の橋。その上の整然と並んで浮かぶ照明の淡い光の列が、海にゆらゆらと光を棚引かせている……ような風景。
やや落とした照明の室内では、静かなクラシックが流れ、本のシャングリラの下でシャンパン片手に語り合う男女のシルエット。

幻の福岡天狼院。
単なる私の妄想かもしれないが、家族持ちの仕事帰りのサラリーマンには、容易に踏み込めない場所になっていたかもしれない。

今泉にある福岡天狼院の、大きな窓から下を眺める。都会の中に見晴らしのいい公園がある。
座敷のこたつに入り落ち着いた時間を過ごせるのもまた良い。
ここでよかった。

今度、休日に子どもとジャーパフェを食べに来ることにしよう。
いや、やっぱりクレミアの方がいいかも。

 

***
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2015-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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