メディアグランプリ

『天狼院』冒険者が集う店だ


天狼院 冒険者 金子さん1

記事:金子千裕(ライティング・ラボ)

 

その店は東都の北、寺町の一角に居を構える。
初めて訪れる人はまず、行き着くことが出来ない。寺町というのは独特だ。墓や寺、教会を壊しての開発というものは難しい。
そのため、その店『天狼院』がある界隈は昔からの狭い路地や、無理矢理建てたような不思議な構造の建物が目立ち、人通りも決して多くはない。

そう『天狼院』。
その名に相応しく、ここ冒険者たちが集う店だ。
店先で冒険者たちを出迎えてくれるのは、私から見れば従妹や姪と同い年くらい年が離れた可愛らしい娘さんたちだ。しかし彼女たちもまた歴戦の冒険者である。
日々、列島中を忙しく駆けずり回る大冒険家の店主が見込んだ『選りすぐり』だ。

店内はいつも冒険者たちでひしめいている。
彼らはそこで思い思いに店で時間を過ごす。

その日……2015年11月8日、私はあるイベントに参加するため朝早くに店を訪れた。いつもは夜に訪れるので雰囲気が少し違って感じられた。
いつもの時間であれば『一度訪れてみたかった』というパーティや、店員や冒険者仲間と談笑する常連客が必ずいる。
しかし、イベントを前に皆、緊張しているのか空気が張り詰めているのを感じた。

ここに来る事情は本当に人それぞれだ。

さらに言えば服装も人それぞれで、この日は、陰陽図のような大胆なモノクロームなドレスに身を包んだレディや、私の祖父が好んで着るような古風な出で立ちの若者が居た。

夜であればアルコールを頼むところだが、朝だったのでブラックコーヒーを頼んだ私は、お気に入りの外が見えるカウンター席に座り『その時』が来るのを待つ事にした。

午前9時。
『マスター』つまり進行役の前説が入り、ついにファナティック読書会が始まる。
なんだ読書会か、と馬鹿にしてはいけない。
ファナティック=熱狂的な読書会なのだ。
そして、朝早くに寺町くんだりまでやってくる人間は相当『ファナティック』だ。

読書とは冒険だ。
一見、読書をしている人間は起きているのか寝ているのか分からない事がある。しかし、その脳は盛んに活動をしている。

登場人物に感情移入し、時に笑い、涙し、怒り……そう本の登場人物たちと共に、あるいは同化し、冒険を繰り広げている。
読書会とは、その冒険の成果を語り合う場所だ。
それと同時に、冒険者を新しい冒険(クエスト)へと誘う場所でもある。人間、どうしても一人でいると守りに入りがちだ。この作者は読むけれど、この出版社は読むけれど、このジャンルは読むけれど……とえり好みをしてしまう。

人間だもの。どうしても合う・合わないはある。
しかし、思い込みから本来ならば自分に合う冒険を見逃している事もある。
そして、逆に自分に合うと『思い込んでいる』冒険を……本を積んでしまうという事もある。最近ではこれを積読(つんどく)というらしい。ゲームの『テトリス』と違い、いくら積んでも消える事はない。ただ積み上がってゆくだけだ。

冒険には出た方が良い。脳科学的に言っても。私は脳科学者ではないから今のは適当に言っただけだが、筋肉にしても脳にしても動かした方が良いに決まっている。

仮に自分が読んだことがある本が紹介されても大丈夫。経験から言って100%自分と同じ感想を抱いている人間など居ない。絶対ギャップが生じる。それが面白い。とっても。

さて、私は読書家=冒険者と語ってきた。
しかし、それは正確ではない。
最近、月並みな表現だが『目から鱗』な一文に出くわした。

――感じる人=アーティスト

これは2015年11月16日から18日までの三日間、豊島公会堂で開かれる天狼院大文化祭のキャッチコピーだ。
これに倣い私は言いたい。

――感じる人=アーティスト=冒険者

冒険とは何か? 秘境に行くことか? 違う。
冒険とは経験だ。感じる事だ。つまり、画家も、写真家も、落語家も、役者も、学者も、アスリートも等しく冒険者だ。
五感を、脳みそを、筋肉を働かせ『鮮烈な経験』をすること。それこそが冒険の本質だ。秘境ではそれを感じやすい。それだけだ。

天狼院という店の名前が書店にしては大仰過ぎると常々私は感じていた。
シリウスか? おおいぬ座か? 夏の大三角形か? と名前の由来を知りたいと思っていた。店主の三浦さんに訊こうと思った事もあるが、なんとなくスルーしてきた。

しかし、こう考えるととても自然に受け入れられる。
この店は冒険者が集う店だ。
例えるなら、ゲーム『ドラゴンクエスト3』のような『指輪物語』の『踊る子馬亭』のような場所だ。
進行役を『マスター』と呼ぶのも、TRPG(テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム)と同じで狙っているのか、偶然なのか気になる。

とにもかくにも、天狼院は冒険者が行き交い、冒険談義に花を咲かせ、そして先達たちから何かを学び取る。そんな場所だ。

2015年11月8日の読書会で私は新しい冒険(クエスト)に出会った。
今はその冒険……本に掛かりっきりだ。
読書会はとてもエキサイティングな、そしてファナティックな体験だった。
また是非、参加したいと思う。

私は、おそらくは冒険者。
そして、たぶんあなたも……。

 

***
この記事は、ライティングラボにご参加いただいたお客様に書いていただいております。
ライティング・ラボのメンバーになり直近のイベントに参加していただくか、年間パスポートをお持ちであれば、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2015-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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