メディアグランプリ

コロナの中心でアンパンマンの勇気を叫ぶ ーたとえ 胸の傷が いたんでもー


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記事:タマひろし(リーディング・ライティング講座)
 
 
「パパ、聞いて」
小学5年生の三女が、国語の宿題で音読をするので聴いてほしいと言ってきた。
 
しかたないなぁ……
今日は、リーディング・ライティングの課題提出日。締切の23:59まで残り3時間あまり。
時間は気になったが、娘との時間は大切にすべきである。
私は「いいよ」と答えて、娘の音読を聞くことにした。
 
ところで、私は小学生時代、国語の教科書が好きだった。いつも読む物語ばかりの文庫と違って、教科書はいろんな文章が載っている。物語もあれば、説明文もある。いつも読むものよりもちょっと大人びた表現をした、少し古めかしい表現の物語もある。こんな教科書を使って、国語の時間を過ごすんだな……そんなふうに考えると、国語の授業の時間が待ち遠しく思ったものだ。
 
血は争えない。私の子供も本が好きで、教科書が好きだ。
娘が楽しそうに国語の教科書を読んでいるのを見るのは(子供が楽しそうにしているのは何でも楽しいのだが)、私にとってもたまらない楽しみの1つだ。
しかし、最近、嬉しいような困ったことがある。娘の音読がだんだん上手になってきたのだ。最初はしかたなく聴いていたはずの私であるが、引き込まれてしまうことが多くなってきたのだ。ところが、音読の宿題は文章の一部だけを読むものなので、引き込まれてしまうと、「えっ⁉」と驚くような微妙な所で放り出されてしまうことになる。後が気になってしまったり、落ち着かない気持ちになったりすることも多いのだ。
 
今日は、私も宿題があるので、絶対に引き込まれないよう密かに誓った。続きが気になるようなことがあれば、締切が危うくなる。私は引き込まれないように注意しながら、彼女の音読を聞くことにしたのだった。
 
音読の宿題は、「やなせたかしーアンパンマンの勇気」であった。ノンフィクション作家の梯久美子さんによる9ページの物語だった。
 
その一部を娘は読んだ。
題名を聴いたときから、勝負はわかっていた。
娘がそこに教科書を置いていった後、私は続きを読んだ。
最後まで読んで、また最初から読み直した。
最初のページで、ぐっときた。
涙が出そうだった。いや、出ていたかもしれない。
あくびをしたふりをしてごまかそうとしたが、できなかった。
 
5ページ目で胸が熱くなった。
「かっけー」
私は叫んでいた。
 
7ページ目で、さらに胸が熱くなった。
「すげーよ。アンパンマン! 男だよ。アンパンマン!」
私はますます叫んでいた。
 
9ページ目まで読み終えて、感動に震えながら、また最初から読み直した。
「これはすごい」
 
感動した私は、また最初から読み直した。
結局、4回通して読んだ私はすっかり興奮して、妻に言った。
「かっこいいよ、アンパンマン! すごいよ、やなせたかし!」
隣を見ると、先に読んだらしい妻も、嬉しそうに頷いていた。
 
アンパンマンの認知度は、調査によると95%らしい。ほとんどの方はアンパンマンをご存知だと思うが、念の為に少しご紹介しよう。
アンパンマンは、アンパンでできた正義の味方である。
自分の顔を食べさせることで、みんなに元気を与えることができるが、食べられた分だけ元気をなくしてしまうという異色のヒーローである。
なお、顔が濡れても力をなくしてしまうし、かっこいい武器も持っていない。
持たざるヒーロー、それがアンパンマンだ。
 
アンパンマンは、子どもたちに大人気だ。丸と半円だけで設計されている愛らしい顔も大人気の秘密なのだろうと思うが、それだけではない。
アンパンマンは格好いいのだ。丸ばかりで書かれたそのフォルムではない。中身が格好いいのだ。誰か困っている人を見かけたら、自ら省みずに助けに行くのだ。そして自らを差し出すのだ。人を助けるため、正義を貫くため、彼は自分の身体が傷つく覚悟があるのだ。まさに勇気の塊なのだ。
 
物語では、東日本大震災の時に被災地のラジオで「アンパンマンのマーチ」が繰り返し流れ、それに合わせて避難所の子どもたちが大合唱していたと紹介されていた。
 
避難所では苦しい思いをしながらも、助け合う人。寒い中で水や食べ物の列にきちんとならび「お先にどうぞ。」と譲り合う人達。肉親や友人をなくし、どんなにかつらいはずなのに、みんな、たがいにはげましあい、助け合っている人たち。悲しみを心にしまって、他人のために一生懸命働いている人も大勢いたそうだ。
こういう人達こそが、本当のヒーローだとやなせたかしは思ったのだそうだ。
 
現在、世界では新型コロナウイルスの流行によって、大変な混乱の状況にある。
この混乱から救い出してほしいという声、社会を導くリーダーを待っている声が様々なところから上がっている。
私も、誰かに助けてほしい、そんな気持ちになることがこれまでにあった。
 
しかし、この物語を読んで気付かされた。
間違っていた。私たちそれぞれがヒーローとなるべきなのだ。みながアンパンマンとなり、互いに励まし合い、助け合うべきなのだ。悲しみを胸に秘めながらも、毎日を歩んでいくことによって、未来がつくられるのだ。
 
そうだ うれしいんだ 生きる よろこび
たとえ 胸の傷が いたんでも
 
やなせたかし先生、アンパンマンを遺して下さって、ありがとう。
梯久美子先生、光村図書出版さん、素晴らしい教科書をありがとう。
たとえどんな敵があいてでも、私たちは前に進んでいきます。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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