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彼女の表情が変わったとき


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記事:西後知春(ライティング・ゼミ特講)
 
 
またしても目が覚めてしまった。
時計を見ると、4時13分。
流石に二日連続で4時13分に目が覚めてしまうとちょっと怖い。
それでなくても、毎年、11月になると夜明け前に目が覚める。
父が亡くなって6年になった。
父の命日が近づいた頃、この時間に目が覚めてしまう。
 
このネコはサクラ。
父が大好きだった猫だ。
この猫には多分、先天的に病気を抱えていたようだ。
とにかく、触られることを嫌がった。
皮膚病か何かで、多分痛かったのかもしれない。
そんなことは知らないから、
「サクラ〜」
っと撫でようとする。
彼女はものすごく怒った顔になる。
でも、私は大好きで。
その頃、私は転勤で車で6時間くらいかかるところにいた。
でも、彼女に会いたくて。
月1くらいで実家に帰っていた。
嫌がられているくせに。
父は、自分の皮膚疾患を持っていたこともあり、彼女をとてもデリケートに扱う。
だから、彼女にとっても好かれていた。
 
父はずっと前から病気だった。
私が高校生の頃からだ。
肝臓の病気で、高校生の頃はもう大学進学も叶わないかもしれない、そう思っていた。
けれども、父は大好きなお酒はもちろんのこと、お刺身などありとあらゆるものを食べずに頑張った。
食道に静脈瘤があり、食べ物が詰まった。
血液をサラサラにする薬、やらいろいろ。
色々な薬を飲んでいた。
 
彼女が父を引っ掻くと、血が止まらなくなる。
だから、彼女に薬を飲ませたり、薬を塗ってあげたりするのは母の仕事。
とても嫌がられていた。
「私が薬飲ませてるのに〜」
とっても母は不満顔。
その顔をよそに父とサクラは今日も一緒にソファで一緒に寝ている。
 
父が入院した。
そんな時でも、父はサクラに会いたいらしい。
母はサクラを車に乗せて、病院の前まで行って。
父もちょっとだけ病院を出てサクラに会っていたようだ。
サクラは最初、車に乗るのを嫌がっていたはずなのに。
車に乗ると、父に会える。
そう、わかっているらしい。
そんなこんなで退院。
それの繰り返し。
入院するのは毎回だし。
 
私もそんなにお見舞いには行っていない。
「菌を持っていかないで」
母に言われる。
私は菌なのか?
サクラはいいのに?
でも遠慮しておいた。
 
私が青森に移住していた頃、危篤状態に入ったと連絡が来た。
「危篤状態なの、本人の意識はあるんだけど」
一瞬、頭の中がハテナになる。
危篤なのに? 意識あるの?
うちの兄もそうなのだが、ショック状態に陥ったとしても、意識がある。
ちなみに兄は大阪に出張中に倒れ、ショック状態でいつどうなるか分からないから大阪に向かってほしいと言われた時も、「意識はあるんだけどね」と言われた。
行ってみると、やっぱり意識はある。
なんで私が来たのか? と兄は思っていただろう。
 
父も意識はある。
危篤状態でも。
少し盛り返してきた時に、ここは一か八かで札幌のここよりも大きな病院に行ってみようということになった。
 
いや、行かないほうがいいんじゃないかな?
そう思うものの、今の病院ではもう何もできない。
札幌の病院に行ったとしても……
そう思うものの、意識のある父は札幌に行くと言い出して聞かない。
そして、転院した。
 
母は残り、私は実家に帰ってきた。
夜中近く、危篤状態になった。
いや、父のことだからまた大丈夫になるんじゃないか?
でも今回はどうなるか分からない。
母に札幌に行った方がいい?
そうメールで聞くも返事が来ない。
そんな頃、母から電話。
先ほど息を引き取ったという。
迷う間も無く、札幌に行ったほうがよかったんだろうか?
でも、と考えていると、サクラの姿が目に入った。
 
サクラ、お父さん死んじゃったよ。
そう伝えながら頭を撫でていた。
ちょっとむすっとした表情の彼女。
その時、なぜか私はいつものように彼女の頭を撫でずに父がいつもやっているように頭をポンポンと軽く叩くように大事に撫でていた。
その時、彼女の表情が変わった。
いつもなら私に撫でられるととっても嫌がるのに。
穏やかな顔をして私をじっとみて撫でられていた。
その時、彼女も父が亡くなったことを察したのかもしれない。
そう思う瞬間だった。
 
父が家に帰ってきた。
サクラは父に近寄っていく。
もう、お話しできないし、撫でられることもない。
でも、サクラは父に寄っていく。
 
葬儀も終わり、そろそろ私も帰らなければならない。
サクラはとっても元気がなかった。
父がもういないということは察しているようだ。
 
父が亡くなって半年くらいでサクラもこの世を去った。
やっぱり父さん、大好きだからかな?
そんなことを母と話ししていた。
サクラは父さんに会えたのかな?
父さんに会って、甘えてるんじゃない?
もし、そうならいいね。
 
もう猫はいい。
そんなことを言っていた母だけれども。
今は、1才になった保護猫と今年の夏に生まれた半野良の猫2匹、合わせて3匹と暮らしている。
もう、猫はいいわ。
そう思っていたんだけど、猫がいるとやっぱり違うね。
そういう母は、現在もとっても元気いっぱいである。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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