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台風の晩に聞いた人生を変えた言葉


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:成田陸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
強い台風の晩だった。雨戸に何かがあたる音がする。木が倒れる音も聞こえた。
建物は大丈夫だろうか。いつ吹き飛ばされるかわからず、ビクビクしながら布団をかぶっていた。
「おい! 起きているか! 部屋から出てこい!」
ドアのノック音とともに先輩の声がドアの向こうから聞こえる。
「はい!」と返事をして、電灯をつけてドアを開ける。
「追加で雨漏りがあちこちで起きてる。片付けるぞ」
そりゃ、そうだよな。昔ながら木造住宅がこの雨で雨漏りが発生しないほうがおかしい。
「少し待ってください。パジャマから着替えます」ドアを閉めながらそう答えた。
「おう、1分で着替えろ」、「了解です」と答えて着替える。しっかりと1分以内に作業できるような格好に着替えて部屋をでる。
 
先輩と合流した瞬間、電灯がきれる。
「えっ?」と思わず声が漏れた。「チッ、電線が切れたか。しようがない。ろうそくと懐中電灯で対応するぞ」
突然の事態に戸惑いながらも、わたしは懐中電灯と雑巾、スマフォを持って雨漏りの対処にあたった。
途中「先輩、ヘビがいます! 大きいヘビ! がいます!」慌てながら声を上げて、それに「ギャーギャーうるさい。ハブ(毒蛇)じゃないから慌てるな」と先輩から叱られたりもしたが、日付が変わるころには無事に雨漏りの対処が終わった。普段見ていた館内も真っ暗のなか作業するとお化け屋敷にいるみたいで怖かった。あぁ怖かった。突然ガシャンとぶつかる音が聞こえるのだから、その度に体をブルリとされていた。心は震えているチワワだった。
 
作業を終えた先輩とわたしはフロントのソファに座る。ろうそくの灯が雰囲気をだす。
「あのなぁ……」と先輩は人生論を語りだした。この晩のことは忘れられない。
 
わたしは大学1年の夏休みリゾートバイトをしていた。沖縄県の西表島の民宿だ。西表島までは、東京から石垣島まで約4時間かけ、そこからフェリーで40分ほどかかる。島には観光客の半数近くが外国人で、英語表記のものが多い。開発があまりされておらず、自然が多い島だ。地酒の八重泉はスッキリとした口当たりで、本州のスーパーでよく見る久米仙に近い味がする。またマングローブをはじめとした熱帯林の樹種など本州でなかなか見ることのない独自の生態系を築いている。特に、イリオモテヤマネコは、写真でしか見たことないが目がくりくりとした猫でカワイイ。天然記念物にも指定されている。
 
リゾートバイトに応募したきっかけは、以前バイト先の民宿に家族旅行できたときに女将さんに誘われたことだった。植物や動物が好きなわたしは、二つ返事というわけではなかったが、GW明けには応募していた。期間は1ヶ月。大学生1年生の夏休みをほとんど西表島で過ごすことになる。
 
仕事は掃除にはじまり、食事づくり、送迎など民宿の業務のほぼすべて行った。家事などをロクにしたことがなかったモヤシっこのわたしには、うだるような環境での仕事は厳しいものがあった。あまちゃんのわたしに厳しく指導にあたる先輩。よくもまぁ、仕事のイの字もわからないガキに丁寧に仕事を教えてくれたと思う。
 
先輩は別世界の人だった。以前は六本木のホストリーダーをやっていて、映画に無頓着なわたしでも知っている有名な女優や俳優を接待したこともあったそうだ。いわゆる仕事ができる人だ。確か当時35歳頃だったと思う。だから社会に出たこともないようなガキへの指導は慣れていた。「もし、自分の店の後輩だったら、もっとシゴイてやった」というのが常だった。いま聞いたらパワハラに捉えかねない言葉だったかもしれないが、別に気にしていなかった。
 
だからあの晩、先輩が人生論を話してくれたときは、いつも違う光景で目に焼き付いている。
 
「お前には夢があるか? 夢なんて大きなことでなくてもやりたいことがあるか?」
いつものトーンと違い背中を押すような優しい声で話はじめた先輩に、わたしはあまりいつも違いすぎて、逆にビクビクしながら「わからないです」と答えた。「そうか、別に叱らないからそんなに緊張せず話してみ」といつもの鬼教官のような声を取り戻しながら話を続けた。
「なら少し俺の話をしようか」とポツリ、ポツリとしゃばりだした。なにかを思い出すように、それでいてわたしを見据えて口を開く。やれ、昔はバカやった、何人抱いたなど武勇伝が絶えることなくマシンガンのように出てきた。少し真面目な話をしたらと思えば、お前はここのところの掃除が甘いなど、手を抜いている、こうした方がキレイにできるなどのお説教がはじまる。
 
だからかなぁ、先輩の「俺はやりたいことをやってきた。仕事もできるし、楽しく生きている。こうしてお前に偉そうに説教できる。
別に“いつでも死んでもええ”と思っている。俺の人生に後悔はない」と言い切る姿はかっこよくみえた。生まれて初めて誰かに憧れた。
それから、わたしはやりたいことを全力でやるようになった。“いつ死んでもええ”ように後悔なく生きるため。少しは先輩のようにかっこよく生きれているだろうか。わからない。ただ日々全力で生きるしかない。
 
台風が通るすぎた日の朝焼けは、胸が焼けるほど真っ赤に染まっていた。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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