メディアグランプリ

夢を見つけられなかったおじさんの末路


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:堀川 哲朗(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「いや、聞きたいのはあなたの夢ですよ、10年後とかどうなっていたいですか」
 
彼は少しいらだったようにして、オンラインの画面越しに言葉を投げかけてきた。
向こうの画面には、あまり関心のない自分でも
分かるブランドものの時計が視界に入った。
 
苦笑いを浮かべているのが自分でもわかる。
違う価値観の人にふれることで自分を成長させる機会を
こうやってあえて作ろうと、ある交流会に参加している。
時には忍耐が求められることもある。
 
おそらく彼が欲しかった答えは、
「3年以内に起業して、社長になってやりたい事業をやる」
「必ず国家資格を取って、開業する」
「自分の専門分野で日本一になる」
 
といったあなたにしかできない「唯一絶対の目標」だったと思われる。
残念ながら、彼の期待する答えは持ち合わせていなかった。
○何も無くていいのよ
さっきのような場面に出くわすと、私はいつも困惑してしまう。
夢や具体的な希望があって当たり前の方に
自分のスタンスをご理解頂くのは難しい。
 
「夢やビジョンがないと生きていく意味ないでしょ」的な価値観を投げかけてくる人に強烈なアレルギー的感覚を覚えてしまうのだ。
 
そりゃ反論するわけじゃないが、私にも
夢だってあったのだ。
ありきたりだが、プロ野球選手になりたかった。
でもセンスは全くなかったことを悟り、早い段階で諦めざるを得なかった。
 
じゃそこでプロ野球選手の夢を諦めたから、次の夢やビジョンが見つからなくても、生きていけないことはない。
ただ、自分の本当にやりたかったことが実現できなかったやり場のないもどかしさは、諦めた瞬間から続いていた。
 
そんな日々が続く中であるきっかけ、ある言葉で良い意味で開き直りができるようになった。
 
世の中の人の大半の中の大半は凡人なのだから、夢とかビジョンとか
語ることができなくても楽しくいきていける。
もちろん夢のある人はカッコイイけれど。
「何も無くていいんだ。
人は生まれて、生きて、死ぬ。
これだけで大したもんだ」
20代の時にこの発言をラジオで、偶然耳にした。
映画監督の北野武氏の言葉である。
言葉でカラダが軽くなることができた。
 
周りは人生の目標がはっきりしていて、資格を取りに行ったり資金集めに
奔走していたり、充実な日々を送っているように思えた。
一応何とか大学卒業後、就職ができて、夢のためではなく「食べていくため」に職業選択をした自分は後ろめたさがあったのだろう。
この言葉は様々な解釈ができると思うが、救われた。
 
みんなに認められなければいけない崇高な目標や夢を持ち合わさなければならない、
という呪縛。
 
知らず知らずのうちに持たされていたと気づくことができた。素直にいまできること、やるべきことをコツコツやっていこうと決心がついた。
 
あとはある心構えがあったおかげで「夢がないコンプレックス」から脱却できた。
自称、夢が見つからなかったおじさん日本代表の極意をあなただけに伝えよう。
 
○トレッキング型で人生を歩め
山を楽しむときには、まっさきに頂上を目指すタイプの人、そうでない人が
いるらしい。登山の楽しみ方は2通りあるのだ。
 
ひとつは、「司法試験に受かって弁護士になる」といったように、はっきり頂上を見定めて登っていくタイプ。典型的な登山タイプといったところか。
 
もうひとつは、絶対頂上を目指すというよりも変化や偶発的なめぐり合わせで、登っていくスタイルである。トレッキング型とここでは呼ぼう。
これは山登りでいえば、ひたすら頂上を目指すのではなく、その場その場で見つけた途中の草木や花を鑑賞し、楽しみながら登っていくイメージだろうか。
 
まさに就職してからの私の人生は
こんなトレッキング型だった。
事業を起こすとか大きな頂上は見つけられなかった。
目の前の仕事に打ち込むことで、少しづつ仕事が楽しくなってきて、やりたいことに輪郭が見えてきて、キャリアチェンジをしてきた。
 
いまでこそ、健康経営コンサルタントを名乗ってはいるが最初はファミレスのウェイターから始まった。
 
バイトでも店舗運営という目線を上げて店長から学んだことがコンサルタントになったいまでも役に立っている。
 
これから就職活動や社会に出ようとしている人は、ほとんどが自分の頂上が分からずに登山口で右往左往しているのではないだろうか。
 
あがいてはじめて見つけた、登山口を歩いてみる。見えてきた景色から学んだことが財産になって次の道が見えてくる。
それも悪くないと伝えたい。
 
もちろん登山型の人生もそれはそれで素敵だ。
ただ40年近く生きてきて、これが多数派ではないと感じている。
登山型で目標に一直線の方も、トレッキング型に切り替えなければならないケースもある。
大多数の方がこれにあたるのではないだろうか。
 
・プロ野球選手を目指していても、大学生のときに再起不能の大けがをした。
 
・弁護士を目指していたが、家庭の事情でロースクールに行く学費が用意できなくなった。
 
こんな「軌道修正」を余儀なくされるケースがある。
 
トレッキング型なら、他に野球に関わる仕事を探すことを考えてもいい。また司法書士といったような弁護士と同じ法律家を目指すなんて方法もあるだろう。
 
自分の目指していた頂上にこだわりすぎず、現在位置で見えてきた景色から、最適な道を選べばいい。
間違っても頂上に固執しすぎて、悲観してしまっても、傷つかないでほしい。
 
目標や夢か見つからなくて、もがいている人は焦らないで、目の前のことに
没頭してほしい。
 
夢が見つからなかったおじさんの末路。
その行き着く先。
目の前のことに没頭すれば、
気がついたらそれなりの景色が見える場所まで連れて行ってくれる。
あなたが真剣になればなるほど、素敵な景色が見えてくる。
 
そして肩の力を抜いていこう。
 
あの、明石家さんまさんもこう言っている。
 
「生きているだけで、まるもうけ」
 
 
 
 
***

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2020-12-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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