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自由の女神はソフトクリームを掲げている


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記事:田村 彩水(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
最初に言っておくと、私はソフトクリームが好きだ。
日本人のソフトクリームの年間購入個数は大多数が月一回ペースの12個らしいのだが(日本ソフトクリーム協議会調べ)、私は軽くその3倍は購入している。
登山が趣味なもので、月数回行くその帰り道には、必ずと言っていいほどソフトクリームを片手に持っている。
滋賀県にある百名山・伊吹山では、なんと山の頂上でもソフトクリームを食べていた。
標高1377mの山上でのソフトクリームなんて、もう気分がいいわ、美味しいわで最高過ぎて、仕入れて下さった山小屋の人と営業を頑張って下さったメーカーさんに感謝と敬意の気持ちを禁じえなかった。
 
アイスクリームも好きだが、やっぱりソフトクリームにはかなわない。
ソフトクリームもアイスでしょとかいう人がいたら、ちっちっちと、人差し指を左右に揺らして教えて差し上げたい。
ぜんぜんちゃいますのよと。
 
思い浮かべてほしい、あの美しい形状を。
中2のとき、体育祭の応援看板に自由の女神を描いたのだが、そのときに手にタイマツでなく、ソフトクリームを持たせた。
何か形状に似てるなーと思って持たせたら案外ハマって、悪ふざけにしては上出来だと思ったものだ。ビジュアル的にも美しい。
そして思い出してほしい、あの滑らかな柔らかさを。スプーンを突き刺してすくって食べるアイスクリームとはまず“固さ”が明らかに違う。
前出の日本ソフトクリーム協議会のHPによると、アイスクリームは-30度で急速に固めて作成されているのに対し、ソフトクリームは「フリーザーで-5~7度程度にフリージングされ、アイスクリームのように固めないでそのまま食べるもの」と定義されている。
いわば出来立てのアイスクリームなのだ。
 
出来立てフレッシュな存在ゆえに、その寿命は短い。
暖かい日差しの中で、コーンにつたう溶けたソフトクリームの一筋を、慌てて舌で追いかけたことのない人などいるだろうか。いるかもしれない。
ソフトクリームが販売されている主な場所は、パーキングエリア、観光地、レストラン、喫茶店である。儚い命の食べ物ゆえ、基本的には外出先でしか食べられない。
その場で食べきることが求められるため、楽しい外出時の思い出とリンクして、記憶に残りやすい。
 
また、近年ではソフトクリームミックスにその土地ならではの名産品を組み合わせたご当地ソフトなるものが盛んに制作されている。鳥取の梨ソフトや北海道の牛乳ソフトなどは味が想像しやすく、確実に美味しいことが予想できるフレーバーであるが、中には青森のほたてソフト、静岡のわさびソフトなんていう、強者ソフトも数多く存在する。
立案したメーカーの営業さんとお店の人の発想力と勇気に敬礼したくなるような、勇気ある商品開発である。しかもすごいのが、一回こっきりの旅先の怖いもの見たさの心理につけこんだとんでもない商品たちかと思いきや、意外とちゃんとおいしいものばかりであることだ。ちなみに私の中で特に印象日残っているのは、小豆島で頂いたおしょうゆソフトである。
旅先では是非ともその土地ならではの魅力の詰まったソフトクリームを見つけ、勇気を出して舌を下ろしてみてほしい。
 
思えば、ソフトクリームほど“旅”と密接な関わりを持つ食べ物もないと思う。
楽しい思い出を象徴するような幸せな食べ物だ。
 
しかし、今年になってから、そんなソフトクリームをぱたりと食べに行けなくなる事態が発生した。
 
新型コロナウイルスの大流行である。
感染拡大を受け、2020年4月7日、東京都・大阪府をはじめとする7都道府県に緊急事態宣言が発令された。のちにその範囲は全国に拡大され、期間も5月末日まで延長されることとなった。不要不急の外出は慎むように要請され、私の勤務先も在宅勤務へと切り替わった。
家族以外、生身の人間とほぼ誰とも会わず、家から一歩も出ずに一日が終わる日々が続いた。
休みも平日も外に出かけて動き回っていることが多い私にとって、こんなにも外に出ない日々は初めてであった。
 
自由に外出できないということは、私にとって相当なダメージであった。
過去に行った山の写真を見返しては、ため息をつく日々だった。
 
緊急事態宣言が解かれた後、私はひっそりと京都の美山にでかけた。
常にマスクと除菌スプレーを携帯し、蜜を避けての行動を心掛ける初めての遠出だったため、気を使うことも多かったが、美山の自然は美しく清らかで心癒された。
桜も見ずに過ごした春を越えて、いつのまにか夏の気配が近づいていることを感じた。錆びついてしまっていた、季節の移ろいへの感性が蘇ってくるのを感じた。
 
そこで私はソフトクリームを食べた。
美山の豊かな自然で作られた牛乳ソフトクリームである。実に三か月ぶりのソフトクリームだった。
ソフトクリームは口に入れた瞬間、濃い牛乳の甘みが舌を撫でて、瞬時に溶けていった。ああ、なんて久しぶりだろう。
自由に外に出られるようになった喜びを、ひしと感じたひとときだった。
 
ふとくだらない思い出が蘇った。中2のときの体育祭の応援看板の自由の女神だ。
図案決定のためのクラス会議に提出用のラフを作成するために、実際に女神の絵にとりかかった際、とある疑問が頭に浮かんだのだ。
 
自由の女神が右手で空高く掲げている、あれって一体何なんやろ?
 
普通に考えてタイマツなのだが、何を思ったか当時の私はソフトクリームを描いてみた。
なんかこんな感じの形やったよなあ……と思っての悪ふざけだった。
以外にいい感じにハマって、これはいけるぞと夜に一人で机の前で盛り上がっていた。
 
そんな何の変哲もない思い出が蘇り、17年後の現代の私は、やっぱり自由の女神はソフトクリームを持ってたんじゃないかなと思った。
外にでかけないと食べられない、旅先の食べ物。楽しい記憶のかたわらにあるもの。まさに自由と平和の象徴ではないか。
 
自由の女神の掲げるタイマツは、移民たちの自由と希望を表すシンボルであるという。
まだまだ、ソフトクリームを気軽に食べに行ける世の中ではないけれども、いつかまた自由に外にでかけ、楽しい思い出とともにあるあの食べ物を、幾度となく心置きなく、食べに行けたらいいなと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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