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メディアグランプリ

立ち止まって、時間を止めて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事: 萩野 晴(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
2020年4月。
例年ならゴールデンウイークの計画でソワソワと浮足立つ期間。
だが、今年はそれどころではない。外に出ても人通りはまばら。
こんなことは生まれてこのかた、初めてだ。
 
「STAY HOME」。
私たちは、新型ウイルス感染防止のため人との接触を減らすという目的のもと、外出の自粛を要請されていた。
 
イベントは中止になり、店舗は休業・時短。
静かな通りを歩くと、社会が眠ってしまったような感覚に襲われた。
人影のないこの町で、今も、時は進んでいるのだろうか。
 
自宅に戻りスマホを見ると、うって変わってSNSではお祭りのようになっていた。
著名人が自宅から歌ったり、踊ったり、前向きなメッセージを配信する。みんなの想いを一つに繋げるリレー動画。「自宅でできる〇〇」や、「ステイホームチャレンジ」と称して、おうち時間を利用して何かと有意義なことに挑戦し続ける人たち。
 
外の静けさとのギャップが大きくて、面食らった。なんだこりゃ。
 
ただの休日、夕方まで寝てしまって、どこも行かず何もせず一日が終わったとしても「ああ、やっちまった」で済む。休日を疲労回復に充てたと考えればまあ、そんな過ごし方もアリだ。
だが日本中、いや世界中がステイホームしている今は、休日ともなれば、おうち時間をいかに充実させるか選手権が至る所で絶賛開催中なのだ。いつも以上にキラキラした報告でタイムラインが埋め尽くされた。
ゴロゴロ過ごしている人はどこにもいないのだろうか。
 
日常生活に追われながらも、時間があればやりたいことはたくさん持っていたはずだ。創作活動、積読本の消化、語学の勉強……だけど、体験したことのない漠然とした不安に包まれた状態で、この時の私は生産的なことが全くできなくなっていた。
なのに、何かをやって発表しなければ、この期間に何か目に見える成果を上げなければいけない気がしている。できない自分がもどかしかった。
 
そっとSNSを閉じた。また、時が止まった静かな世界が戻ってきた。
少しほっとした。
 
フィクション作品では、時を止める能力を持った者は、他の人間が動いていないのをいいことに好き勝手している。誰も目撃していない今なら、何をしても責められないから。
 
そうだ。外にも出ず人にも会わない外出自粛期間、私が家で何をしていようと誰にも咎められない。時が止まった世界で気の向くまま漂ってみよう。
 
ふと、少し前に手芸店で購入した「羊毛フェルト」の材料と道具が目に入る。とりあえず開けるだけ、開けてみた。
「羊毛フェルト」とは、繊維状の羊毛を加工してポンポンやマスコットなどを作る手芸だ。
フワフワした羊毛を軽く手で丸めて、専用のニードルでツンツンつつくと繊維が固まり、フェルト状になってくる。言葉で説明すると伝わりにくいが、ニードルを刺すことで繊維同士が絡んでまとまりになるのだ。
開封した勢いで、解説書にある基本中の基本「フェルトボール」を作ってみることにした。
ただ真ん丸いボール状にするだけだ。
羊毛フェルトの良い所は、製作作業のほとんどが、「ニードルでツンツン」の動きに占められていること。
一つのパーツを作るのに、何百回もひたすらツンツンつつかねばならない。
同じところばかりつついているとそこだけ固くなってしまうから、表面を、まんべんなく。
深すぎてもいけない。浅すぎてもいけない。
慣れてくると一定の力加減で安定してツンツンできるようになる。そうしたらもう、無になることができる。私は何かを作っているのではない。何かを得るためにやっているわけではない。ただツンツンしてるだけ。
そうして無心にツンツンやっていると、雑念が拭き飛んで、気づいたら目の前の小さな繊維の塊だけに全神経を捧げている……そんな境地に至ることができる。
指先でちょいちょいと形を整えてはツンツン。つつきすぎてちょっと痩せすぎてしまった所に羊毛を足しては、ツンツン。
ひたすらツンツンやっていると、何となく形になってくるのが分かる。
何かを作ろうという強い意志を持って作業していないのに、無心にツンツンやっているだけで、そこそこいい感じにまとまってきた。難しいことを考えなくても、手を動かしているだけで何かが出来上がっていた喜び。このフェルトボール、このままでは何の役にも立たないが、何かしら仕上げたという達成感がひとしきり感じられる。
 
最初のフェルトボール1個を作ってからというもの、来る日も来る日も製作に没頭した。
ネットでレシピを探して作ってみたり、好きなキャラクターをフェルトで再現しようと挑戦したり。
何のチャレンジでも発表目的でもなかったが、毎日毎日、何百回もひたすらツンツンやってると、経験値と仕上がりが比例してきた。
数日間、時間が止まった世界の中に籠って始めた趣味が形になってきた不思議。
 
無理やり何かにチャレンジしようと自分を焚きつけても、祭りの中に飛び込もうと思っても、ココロが「NO」と言ってる時はうまくはいかない。
だけど、少し歩みを止めて、気の向くままに任せると、何もしていないつもりでも、気づいたら何かを成し遂げてることだってある。作り出そうと思っていないのに、手の中に急に現れた成果物の姿は、時に自分自身をも驚かせてくれる。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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