メディアグランプリ

SNS戦国時代のファン作りは「いちご大福」のようにデザインするべし


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記事:ともえ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
どうみても悪役プロレスラーにしか見えない強面のおじさんが、カメラ目線で睨みをきかせながらタンバリンを演奏するYouTubeチャンネルにどハマりしている。
チャンネルの主は、ガタイのいい髭面長髪おまけに金パツ頭のおじさんである。できれば街ですれちがいたくない。実際に目が合ったとしたら、潔く目的地に向かうことは諦めて全力で迂回するだろう。
それなのに私はスマホの中のその怖い顔のおじさんから目が逸らせない。
とにかく圧倒的なタンバリンの演奏技術を持っていることが素人から見てもすぐにわかる。というかタンバリンって、こんなにも楽器として存在感を放てるものだったのか。
めちゃめちゃすごい。ただただすごい……。
磨きをかけまくられたその技術で、金色の長髪を振り乱しながら一心不乱に演奏されていたのは、「おジャ魔女カーニバル」だった。
 
なぜなんだ……。
 
こうして私は「もう後戻りできないタンバリン奏者」大石さんの虜になった。
 
ファン心理とは一種の疾患のようなものだと思うのだけど、依存症や中毒症とは少し違うのではないだろうか。その成分が身体から抜けると禁断症状が出てソレを欲するという構造は、どこか危うい。見ている人をジャンキーにしてしまうことは、お互いにとって有意義な関係性へと成長しうるだろうか?
私にとっての大石さんという存在は、タバコやお酒がもっている「刺激」とは少し違うようにおもう。彼はまるで、いちご大福のような作用をしているのではないだろうか。
そう、私がおこしているのは「中毒症状」ではなく「消化不良」なのだと思う。そしてこれこそが、これからのファン作りにおいて最も意識される部分なのではないかと感じている。
 
はじめていちご大福の存在を知った時の驚きは今でも覚えている。大福のなかに、まるまる一粒のいちごが入っている……それは、私の想像力をはるかにこえていた。私は、あんこと水々しいフルーツを同時に食べると一体どんな味になるのか全く想像できなかった。何年もの間、私はいちご大福を食わず嫌いしていた。
今でも、いちご大福の味を脳内に思い浮かべろっていわれたら、私の脳みそは混乱をする。そして、本当にアレって美味しかったっけ? ということを確かめるために、私はまたいちご大福を買い求めるのであった。禁断症状からソレに手を伸ばすわけではない。なのに、ついつい食べてみたくなる。いちご大福には、そんな怪しげな魅力があると私は思う。
刺激を餌にして相手をジャンキーにするのではなく、未知の掛け合わせにより相手の脳内に「???」を作り出し消化不良にする。そうすることで、ついついリピートしてしまうのだ。誰もが「???」を消化させたい噛み砕きたいと願っている。そして、沼にハマっていくようにファンになるのだ。
 
2020年現在はSNS戦国時代に突入したことは間違いない。YouTubeというSNSひとつを取ってみても、チャンネル数もYouTube全体の視聴者の数も、どんどん増えているそうである。そのなかで確実に輝きを放ち、その魅力に視聴者を引きずり込む実力を孕んだチャンネルの存在が目立つようになった。これまで主流だった、過激な企画で見ている人に刺激を提供し、人気をえることの危うさを感じている人は少なくないだろう。この戦国時代を生き残るのに必要なのは、もはや刺激物ではない。子供が大人に成長するように、ジャンキーもいつかは中毒症状から醒めるだろう。
 
きっとこれからに必要なのは、視聴者の脳内が消化不良をおこすような「あたらしい食べ合わせ」を発信することではないだろうか。
だからといって、みんなが見たこともない異国のめずらしい料理を出すことが「あたらしさ」ではないのだと思う。それよりも、みんながよく知っている「大福」と、よく知っている「いちご」を掛け合わせる勇気のほうが新鮮に心に残るのだと思う。
大石さんのチャンネルには、「まだ後戻りできた頃の俺」というタイトルで過去の映像が投稿されている。そこには、神がかったパフォーマンスを披露し、観客から喝采をうける爽やかなイケメンパーカッショニストの姿がうつっていた。すらりとしたスタイル。整った顔立ち。清潔感あふれる短髪。そして思わず立ち止まってしまう優れた演奏パフォーマンス。
しかし私はといえば、イケメンがものすごい演奏を披露する動画より、強面のおじさんが「おジャ魔女カーニバル」を演奏してる動画をリピートしてしまっている。
ものすごく美味しくて慣れ親しんだ老舗の間違いのない大福よりも、ついつい「いちご大福」をドキドキしながら食べてしまっているのだ。
 
「なんで大福にいちご入れようと思ったんだろう……」と思考するように、
「なんでおジャ魔女カーニバルをチョイスしたんだろう……」という消化できない思考が好奇心となり、私を彼の作品へとかりたてている。
 
ファンはなんとかこのモヤモヤを噛み砕き、自分のものにしたいと感じる。そのモヤモヤは議題となって、ファンの間で共通認識が生まれコミュニティーは盛り上がる。濃ゆいチャンネルは、コメント欄まで含めて一つの作品として成り立っているように思う。
演者から投げかけられた「モヤモヤ」を、ファンはあの手この手で投げ返す。結果、コメント欄は大喜利のように盛り上がることになる。それがまさに消化作業になっているのだと思う。一緒に、この飲み込みづらいお題を消化しようとするうちに仲間意識が芽生え、ファン同士の横の繋がりを強化していく。
そして、それこそがSNSの本質の部分なのだと思う。見ている人の「参加の余地」をどのようにデザインできるのかが、SNS発信者の腕の見せ所なのかもしれない。
SNS視聴者はパフォーマンスを楽しんでいるのではなく、消化作業を楽しんでいるのだと私は感じている。
 
このSNS戦国時代に自分の発信にチャンネルを合わせてもらうためには、完璧なものを作り上げるよりも一音外れたものを発信していくことが戦略として求められそうだ。その歪みで生まれた消化作業まで含めて自分の作品とできる懐の広さが求められているのかもしれない。
 
 
 
 
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2020-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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