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メディアグランプリ

占いとは意志である。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ひのえうまねえさん(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ぼく、当たってると思うんすよ」
わたしは毎週月曜の夜にパーソナルトレーニングを受けに行っている。トレーナーのTさんとは日々の他愛のないことを気軽に話せる仲だ。
「ほんまに? マジで?」
「だってぼく、その占いの人に、小さいけどこういうお店を持つよって言われましたもん。当時はそんな考え全然なかったのに」
わたしは人生に悩んでいる。20代で結婚離婚をし、幸いなのかわからないが子どももおらず、お気楽なおひとり様をエンジョイしているはずのアラフォーだ。
 
ところが、家と徒歩圏内の会社の往復が行動範囲で、仕事漬けの毎日。休日出勤も当たり前。かろうじて通っている家の近所のパーソナルトレーニングもしばしばキャンセルすることもある。気分屋社長のお相手をしながら、理不尽なことに怒鳴られ、働かされる日々。もううんざりだ。転職がしたい。明るい未来はわたしに訪れるのだろうか。
と、しょうもないことをTさんに愚痴っていた。Tさんもわたしの愚痴にうんざりしたのだろう。占いに行ってみたらいいんじゃないかと提案をしてくれたのだ。
「占い好きだし、Tさんが当たったなら行ってみようかな」
当たるのならぜひ行ってみたい。いや、なんでもいいから希望が欲しい。
「じゃあ、あとでお店の名前とかLINEしますわ」
律儀なTさんは丁寧に予約の仕方も教えてくれた。言われたとおりに占い師へ連絡し、予約日当日は絶対に会社へ行かないと決め、久しぶりに大阪ミナミの繁華街、心斎橋へ赴いた。
御堂筋を少し外れ、雑居ビルが立ち並ぶ区画の中に埋もれるように建っている古ぼけたマンション。その一室に占い師は店を構えていた。インターホンに貼り付けられた「ピンポンを押さずにそのままお入りください」と手書きされたメモが、外気にさらされ続けたせいか、乾き切ってカピカピだ。指示通りそっとドアを開け、声をかける。
「いらっしゃ〜い。今ちょうどたばこ吸おうと思っててん。そこのソファに座って待っててー」
数分待つ。
「さぁはじめよかー。質問は4つね。何聞きたい?」
質問はしっかり考えておいたほうがいいと口コミのネットに書いてあった。わたしが知りたいのは、1転職して大丈夫か、2食い扶持として所属している業界以外の仕事は向いているか、3恋愛はどうか、4起業はできるかの4つだ。
「あっなたっのしっごとっはどっうかなー」と唐突に歌いながら、タロットカードを混ぜ始めた。歌うと知らなかったため、ちょっぴりひるむが顔には出さない。何度もくり返し聞いていると、不思議と心の中で一緒に歌い、体もそのリズムに乗っていく。
「あなた優しいし、人から好かれるし、今の仕事も悪くない。会社もつぶれないし……あ! このカードがここに出たわ。今は転職したら絶対ダメ。大失敗する。絶対やめや。来年の9月まで辛抱したほうがいいわ。その間に副業したらいいわ」
(会社つぶれないのか。つぶれたらいいのに。副業かぁ)
「今の業界以外でも成功するわよ。何したいの? あ、ライター? それなら、自分で本買いて、印税生活がいいわよ。成功するわよ。4年後か54歳のときかな、もしかしたら49〜54歳のあいだかもしれない。副業やわ。副業がんばり」
(本書きたい! 副業! )
「一度会った人からもう一度会いたいって言ってもらえるから、起業向いてるわ。食うには困らないね。お金には困らない。副業やわ、あなた、転職より副業したらいいわ」
(副業!! )
「パワーくれるから」と、最後にアメジストの丸い玉に両手を乗せ、パワーチャージをして終了した。ちなみに恋愛については内緒である。
 
確かによく考えなくても、転職することはこのご時世で年齢的にもリスクが高い。”副業”でやりがいや楽しみを見つけたほうがいいだろうことも予想できる。
この占い師はわたしの周辺から目に見えないなにかを感じ取っているのか。わたしの希望を言葉にしてくれ、書くことが仕事になると背中を押してくれたような気がした。
「本を書きたい」と小学生の頃から思っていた。だからといって努力をしていたわけではないし、漠然とした憧れだ。
少しでもなんとかしようともがいていたのは、人生の中で5年間くらいだろうか。細々とブログで文章を書き溜め、やっと受注したコラムの仕事で、わずかなおこづかいを稼ぐことはできたものの、どんどん積み重なっていく日常の仕事に忙殺され、ついにブログすら書く時間が捻出できず断念してしまった。
 
わたしは二足のわらじを履くほど器用じゃなかった。
ただ、これで本当にいいのかとグルグルグズグズ考えていた。できることと言えば、何の利害関係もないTさんに愚痴ることだけだった。
もやもやしていた感情がスッキリ消え去ったようだった。今後は来年9月までは省エネモードで仕事して、副業ができる環境作りをすればいい。そのあとのことはその時になってから考えればいい。なんといっても、わたしには「本を書いて印税生活」という子どもの頃の夢が、近い未来に待っている。どれだけ占いを信じてるんだと馬鹿にされてもかまわない。わたしの人生には、わたししか責任を取れないのだ。今の仕事代わりはいくらでもいる。
 
よーし、やるぞ。さてなにから始めようか。鼻息荒く、両腕をぶんぶん振り回し、歩幅は広く、ずんずんと心斎橋の街並みを横目に歩き、この11月に新しくなった心斎橋パルコへふらりと入ってみた。偶然にも天狼院書店が目に入った。そして流れでライティング・ゼミを受けることになった。
引き寄せているのか。天の思し召しか。探していた「すること」があっという間に決まった。
 
当たるも八卦当たらぬも八卦。占いは、自分から当たりにいくと決めて行動をしないと当たるものも当たらないのだ。書く仕事を生業とできるように、素直にたくさんのことを吸収して、たくさん書こう。わたしを占ってくれた占い師の評判をさらに上げていくために、何よりわたしのために、絶対にこの占いを当てるのだ。
「わたし、当たってるとおもうんだよね」といつか会うであろう迷える誰かさんに言える日がくるように。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2020-12-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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