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職員室が歓喜に沸いた揚げパン

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山﨑陽子(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
私の仕事は学校給食を作ること。世間一般でいうところの「給食のおばちゃん」と言ったイメージが湧くと思う。
安心・安全に気を付けて日々、子どもたちが美味しく食べてくれる給食を作っている。
 
メニューの中には旬のお野菜を使った季節のものや、海外の料理も作るのだが時々子どもたちの声も聞いてひっそりと何が好きかリサーチもしている。
低学年から高学年のいろんな子供たちに
 
「一番好きな給食のメニューは何?」
 
と聞くと必ず上ってくるメニューがある。
私は勝手にそのメニューを「給食ビック3」と言っている。
 
まずは王道のカレー。
ポークカレー、チキンカレー、根菜カレー、カレーうどん、などいろんな手法でカレーが月に1回は必ずでてくる。
 
次に唐揚げだ。
油、おろしにんにく、ショウガで味付けされた鶏肉を大量の油の中に入れて一気に揚げるので冷めてもサクサクとした食感が不動の人気。
 
そして最後は揚げパン。
昔ながらの揚げパンは、きなこと砂糖が混ぜられたものに隠し味に少しだけ塩を入れて油で揚げたコッペパンに絡ませる。たっぷりのきなこが幸福感をもたらせてくれる。
 
そんな揚げパンが最近少しずつ進化しているのだ。
私たちはメニューをもらって現場で作る「調理師」
そのメニューを考えるのが栄養教諭と呼ばれる「管理栄養士」
 
あるとき、いつものようにメニューを確認していたら目に飛び込んできた。
 
揚げパンココア味
 
んん?ココア味?また斬新なメニューを考えたな。こんな揚げパンを思いつくのはコンビ二によく行く20代の若い管理栄養士さんだな。子どもたちにはうけるのか??どうなのだろう?
揚げパンココア味一つで妄想を膨らませる私
 
しかし未知なるメニューだ。
 
ココア味より前にキャラメル味なるものを作ったことがあるという同僚がいた。
 
「キャラメル味、どうだった?」
「ありって言えばありだけどね……」
 
それを言ってしまえばなんでも「あり」になるし、なんでも「なし」になるやんか!
 
という言葉がのどまで出かかったが、私は飲み込んだ。
だって私はまだ揚げパンココア味を食べてないからだ。
キャラメル味がイマイチだった同僚も、もしかしたら今回は違う感想かもしれない。
 
そんな期待も込めて揚げパンココア味の日がきた。
私はココア味のパウダーがかかった揚げパンを各クラスに人数分入れる担当だった。
 
揚げパンに軽快な手つきでココア味のパウダーをかける作業を見守る私はなんとなく
「これはきっと美味しい違いない」という思いになってきた。
なぜなら、つけているマスクを通り越してココアの甘―い香りが漂ってきたのだ。
その香りは一瞬にて調理室全体に広がって、みんなの作業をする手が止まったのだ。
 
「いい香りー」
「絶対に美味しいやつやん」
「その揚げたて、今すぐ食べたい」
 
みんなが口々にそんなことを言い始めて、私の期待は大きく「美味しい」という確信に変わっていったのだ。
 
給食の時間が始まった。
子どもたちは「美味しい」と喜んでくれたのか?
いつもはたくさんある残飯が少なくなるのではないのか??
そんな気持ちのまま私もついに揚げパンココア味を食べた。
 
「うん! これは美味しい」
 
間違いのない味。これなら子どもたちも喜んでくれるだろう。
そんなことを思っていると意外な所からの反応があったのだ。
 
職員室だ。
比較的、20代30台の若い世代が多いこの学校で40代、50代の先生方が大絶賛してくれたのだ。後々聞くと、揚げパンココア味を食べた時にあまりにもおいしいということで拍手が沸いたとか?
40代、50代の人たちにとって揚げパンは「きなこ味」しか知らない世代だ。
その世代の人たちに揚げパンココア味を受け入れてもらえたことが本当にうれしかった。
 
今年は新型コロナウイルスの影響で学校が休校になり、給食も3か月間も止まった。
その間、子どもたちはもちろん、先生方も「早く給食が食べたい」といってくれていたことを思い出した。
 
「食べてくれる人が居てくれることは当たり前ではない。それを食べて美味しいといってくれることも当たり前ではないのだ。」
 
私にとってこの揚げパンココア味は大切なことを思い出させてくれた。
きっとこの先も2020年という年を揚げパンココア味が思い出させてくれると思う。
まさにターニングポイントとなったメニューだと思う。
 
給食の時間が終わり、食器を返しにくる子どもたち。
やっぱりいつもより揚げパンココア味の残飯が少ない。
残さずに食べてくれることはやっぱりうれしい。
 
揚げパンが入っていたケースを返しに来た3年生ぐらいの女の子に聞く。
私はいつものリサーチを始めた。
 
「揚げパンココア味 おいしかった?」
私は自信満々に聞いた。
 
その女の子は私の顔をチラッと見てから視線をずらして言う。
 
「私はきなこ味の揚げパンの方が好き」
 
その言葉を聞いて私は大声で大爆笑した。
 
だから私はこの仕事が好きなのだと思う。
 
 
 
 
***

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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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