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メディアグランプリ

種から芽、そして花へ


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山﨑陽子(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「あの子たちを県大会に連れて行ってください」
お願いというより私の夢だったと思う。
当時、私は地元のサッカー少年団でコーチとして活動していた。
担当していたのは2年生、8人の子供たち。
サッカー経験のない私にサッカーのコーチをして欲しいと言われたとき、正直私で務まるのかとても心配だった。
でも、不安よりも少しだけワクワクした気持ちが勝ったので引き受けることにした。
コーチを始めて4年目。私は自分の体調面を理由にコーチを辞めることを決めていた。
 
2年生の子どもたちはとにかく自由奔放でやりたいことと、やりたくないことがはっきりとしていた子どもたちだった。とにかく話を聞かない。集合時間に集まらない。チームの子ども同士でけんかをするのはしょっちゅうあることで、練習の時間になると私は大きな声で叱ることも多く手を焼いていたのだ。
そんな子どもたちと私を見た他の学年のお母さんたちは
「コーチ、毎回、毎回本当に大変ですね」と言って苦笑する。それが本当に悔しくて、悔しくてたまらなかった。
(いつかこの子たちは強いチームになって、笑っていた人たちみんながビックリするようになるから)
と心の中で思いながら私は子供たちを見守っていた。
それはまるで芽が出ていない花を育てるような気持ちだった。
 
その気持ちを私は任期が終わるとき、子供たちを引き継いでくれるGコーチに伝えた。
Gコーチはきょとんとしていた。その時の私は、気迫、願望,悔しさの全てをぶつけたと思う。
中途半端な形で子どもたちから離れてしまう自分自身への不甲斐なさにも悔しさがあったからだ。だから余計に熱くなってしまったのかもしれない。
藪から棒にそんな言葉をぶつけられてGコーチは少し困った顔をして笑っていた。
 
Gコーチはサッカーの指導歴も長く、いろんな子どもたちを見てきたベテランだ。
自分が担当した学年は県大会にも毎年常連のように出場していた。
何よりも大きな声で怒るのではなく、静かに諭すように指導する姿に私はいつも尊敬していた。私とは逆のタイプのGコーチならあの子たちをいい方向に導いてくれるのではないのだろうか?いい化学反応が起きるのではないだろうか?と私は期待していた。
 
しかし、その期待はすぐに崩れ落ちた。
たまたま、コウダイのお母さんに会った。
コウダイはチームの中心となる選手で彼が良くも悪くもチームの雰囲気を作っていると思っていた。コウダイのお母さんは私を見つけると笑顔で駆け寄ってきて軽く頭を下げた。
「コーチ、お元気ですか?」
「はい、おかげさまで。コウダイはどうですか?Gコーチとうまくやっていますか?」
「それが最近サッカー面白くないって言っていて。Gコーチが怖いって言うのです……」
どうやら静かに諭すGコーチの指導方法はコウダイにとって(静かに怒っている人)という印象があって持ち前のガツガツしたプレーができなくなってしまったらしい。
(あちゃ~、裏目にでたかー)と思っていたらコウダイ本人がお母さんの後ろから走ってくる姿が見えた。私は大きな声でコウダイを呼ぶと少し恥ずかしそうに近寄ってきた。
「コウダイ、Gコーチ怖い?」
「うん……なんとなく。」
唐突にGコーチのことを言われたコウダイは気まずそうに下を向く。
「Gコーチは怒ってないから。コウダイにうまくなるアドバイスをしてくれているのだよ」
「そうなの?怒ってないの?」
「うん。怒ってないよ。Gコーチを信じて言うとおりに練習したら県大会で活躍できる選手にコウダイはきっとなれるから」
そう言うと迷っていたものがすっきり晴れたのか、コウダイは笑顔になった。
 
あれから月日は流れて2年生だった子どもたちは4年生になった。
そして私は久しぶりに子どもたちのサッカーの応援に来た。
県大会に繋がる予選。私はドキドキしながらピッチでアップする子どもたちを探す。
いたいた! 少し大きくなったコウダイもアップしている。
試合のホイッスルが鳴り試合が始まった。
そこにはコートを自由に走り回り、ボールを力強く蹴る子どもたちがいた。
もう私の知っている自由奔放で手を焼くような子どもたちではない。
サイドからのボールをセンタリングで上げて頭で合わせてシュート!
目の前でどんどんシュートが決まる。
もう誰も子ども達を笑う人はいない。
その試合を終えて見事、予選1位で県大会出場を決めたのだ。
それは私の夢が叶った瞬間でもあった。
 
その日の夜Gコーチにメールを打つ。
「Gコーチ、強いチームに育てましたね」
返事が来る
「僕は何もしていませんよ。引き継いだままです。県大会も頑張ってもらいます。」
その一文には、まだまだこれから!という気持ちがこもっているような気がした。
(子どもたちを託したのがGコーチで本当によかった)
返信画面を見ながら私は心から思った。
 
県大会は来月。
今度はどんなプレーを見せてくれるのだろうか。
芽が出た子どもたちはこれからもっと大きくなって立派な花を咲かせてくれると私は信じている。
 
 
 
 
***

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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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