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日本語が大好きな帰国子女です


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記事:桑山千怜(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」
 
これは、かの有名な川端康成の雪国の最初の文章だ。たった2文に、日本語のもつ繊細な美しさが凝縮されているようで思わずため息が出そうになるほど美しい。
 
さてここで、雪国の英訳であるSnow Countryの冒頭を見てみよう。
 
The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky.
 
え? いや、そうはならんくない?
 
ここで誤解してほしくないのは、私は翻訳者さんにケチをつけたいわけでもないし、英語が下手くそすぎると言いたいわけでもないということだ。そもそも私はこんな偉そうに意見できるほどの英語力も日本語力もない。でもこれではあまりにも、言葉にしがたいけど、肝心な「何か」 が抜けている「雪国似ている何か」 な文章ではないか。
 
また別の文章も見てみよう。
 
「吾輩は猫である」
 
これもまた日本を代表する文豪、夏目漱石の吾輩は猫であるの有名な冒頭である。
 
さてここで、吾輩は猫であるの英訳を見てみよう。
 
I am a Cat.
 
……。嫌な予感はしていた。確かに、これ以外、訳しようがないことはわかる。でも決定的に違う、違いすぎる。コレジャナイ感というか、脱力感というか。猫の偉そうな感じや、独特な雰囲気がかき消されてしまっているし、これではインパクトが半減すると言っても過言ではないだろう。その上、タイトルも`I Am a Cat` なのだ。やっぱり、雪国同様、圧倒的に「何か」 が足りない。
 
その「何か」 とは何だろう。
 
それは、英語にはない、日本語特有の繊細さや儚さそして鋭さだと思う。
 
私はイギリスで生まれ育ち、約10年イギリスに住んでいた帰国子女だ。両親が日本人で家では日本語、現地の学校では英語を使うという環境で育った私は、物心ついたときから日本語の本も英語の本も読むのが大好きだった。でも、日本にきて、日本語の本に触れる機会が増えてから、私は日本語の持つ特有の魅力にどんどん惹かれていった。
 
春夏秋冬のそれぞれ美しさの表現であったり、人間の生々しく、時に醜い葛藤の表現であったり、音色や匂いなど見えないものにも色を付けてしまうような表現。こんなにもきめこまやくも鋭く物事を描けるのは日本語ぐらいじゃないだろうか。もちろん、英語のダイナミックで豪快なまでに直球なセリフや描写も大好きだ。そして、日本語、英語に優劣をつけたいわけでもない。けれども、やっぱり日本語の刹那的な美しさは唯一無二だなと思う。
 
また、その実態のつかめない美しさは十人十色の解釈や感じ方を読者それぞれに与える。私は現在高校で放送部として活動している。放送部には、本から箇所を抜き出し、表現する朗読や、自分で何か取材をし、原稿を書いて読むアナウンスの2つの部門があり、放送部は学校の中でも特に日本語を扱う部活だと思う。私は現在、アナウンスとして活動しているが、以前は朗読をしていた。朗読の醍醐味はなんといっても日本語をどう自分の声に乗せて表現するかにあると私は思う。表現する過程で、単語の一つ一つに触れ、味わうことがすごく好きだった。本当に日本語は奥が深い。人が変われば朗読による表現も変わるのだが、その理由は日本語が持つ彩り豊かな表現によって、読者に解釈の幅を与えていることにあると思う。正解も間違いもない。日本語から何を読み取るか、感じ取るかは本当に自分次第なのだ。
 
もしもに英語がステンドグラスみたいなものだったら、日本語は万華鏡みたいなものだと思う。英語は一つ一つのパーツが支えあい、主張しあいながらも一つの絵を作り上げ、輝くことに対し、日本語はクルクルと変幻自在に変わり、その時その時で輝き方も変わるからだ。私はそんな素晴らしい言語が使われている日本に住めて、本当に幸せだと思う。
 
でも、日本語に日本人が触れている機会が減ってきているように思える。学校の休み時間や電車で周りを見てみると、スマホを触っている人がほとんどで、本を読んでいる人はごくわずかだ。また、2017年にドイツの調査会社が世界の国々の読書量の調査したところ、一カ月で全く本を読まない日本人の割合は40パーセントにも上った。これは世界で見ても下位中の下位だ。また、私のクラスメイトの中には文章を書くのはインスタグラムの投稿の短い文章だけという人も多い気がする。それはすごく残念なことだと私は思う。
 
日本語は本当に美しい。I am a cat が吾輩は猫であると表現できる言語なのだ。他言語に比べると圧倒的に儚い分、その分魅力もたくさんある。もっともっとたくさんの人が日本語に触れ、日本語に親しめたら、日常はとても豊かになると、私は思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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