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誕生日は死へのカウントダウン


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:瀬崎英仁(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
2月24日は私の誕生日。
いや、正確に言うと、私とムギの誕生日。
 
毎年、この日が来ると、うれしさと寂しさが入り混じって複雑な気持ちになる。
でも大事な日だ。
 
ムギとは、愛犬のチワワの名前だ。
メス犬で年齢は5歳、人間で言うと36歳になるらしい。(諸説あり)
白黒のまだら毛に愛くるしい目、整った鼻筋。
人間だったらきっと、橋本環奈ちゃんのような美人に違いない。
 
私が仕事から帰ってくると、妻はスマホ、子供はSwitchに夢中で目も合わしてくれませんが、ムギは違う。
すぐに近寄ってきて、前足を上げ、シッポをパタパタふりながら抱っこをせがんでくる。
小型犬を飼った経験のある人なら誰でも見たことのあるしぐさだろう。
とにかく愛らしいのだ。
軽い体を抱きかかえて、小さい温もりを感じるだけで、毎日、癒やされている自分がいる。
そして、ちょっと怖さを感じる……
 
ムギとは、ブリーダーを介して出会った。
「犬を買うなら、ペットショップは嫌。健康に育ててくれているブリーダーからがいい」
という妻の強い希望があったからだ。
 
妻はペットショップでの飼育状況にあまりいい印象を抱いていなかった。
餌をちゃんとあげていない、散歩させないなど、いろいろ噂があることは後で知ったが、当時の私は、ペットショップとブリーダーの違いさえよく理解していなかったので、正直どっちでも良かった。
 
妻がネットで見つけてきたブリーダーは白井さんという男性。
実際に会ってみると、年は50歳くらいだろうか? とにかく笑顔の素敵な方だった。
目尻の深いしわが印象的で、これまで笑顔を積み重ねてきたことの証になっている。
 
白井さんは、1匹の子犬とその親犬を私たちの前に連れてきた。
「この子のお母さんは、見てのとおりすごく足が太くしっかりしているので、きっと健康で丈夫に育つと思いますよ。同じ日に生まれたこの子のお兄ちゃんは、同じ兵庫県の淡路島に旅立っていったんですよ、この子のお父さんは……」
 
白井さんは、ゆっくりとした口調で、子犬に絡んだエピソードトーク続ける。
ときおり子犬に視線をうつす様子が、これまでの関係性を感じさせる。
 
「ああ、この人は寂しんだな」
「ああ、この人は本当にこの犬が好きなんだな」
「ああ、この人はちゃんと育ててくれよって、私に言ってるんだな」
と、いろいろな感情が頭の中を駆け巡った。
 
それと同時に、
「この子犬は親犬と離れ離れになってしまうんだ」
「犬を飼うって、すごい重いことなんだ」
「大切な家族を自分が預かるんだ」
重圧が私を襲ってきた。
 
浮かれた気持ちで「ペットを選びに来ていた」自分を痛烈に批判したい気分。
いつのまにか笑顔は消え失せていた。
視線を移すと、横にいる妻の表情は真剣そのものだった。
笑っていたのは私だけだったのだろうか……
 
その後は、只々黙って、白井さんの話に耳を傾けました。
彼の話は続きます。
食べさせたらダメなもの、好きな撫で方、そして、子犬の誕生日……
「この子の誕生日は2月24日です」
 
え?
子犬の誕生日が自分と全く同じ2月24日であることを知り運命的なものを感じた。
 
ペットショップで犬を買っていたら、この日のような経験はきっと得られなかっただろう。
帰りの車の中で妻に感謝の言葉を述べ、一緒にこの子犬を大切に育てようと誓った。
 
小さい新入りは、「ムギ」と名付けられた。
そんなムギとの出会いから5年が経った。
 
白井さんが言ったとおり、ムギは母親に似て、チワワにしては体が大きく丈夫に育った。
さらに見た目は橋本環奈似だ。ルックスも申し分ない。しぐさもかわいい。
それに何より私にナツイている。
何も言うことはない。ムギがいてくれて幸せだ。
 
しかし……
しかしである。
 
正直に言おう。
私はこれまでの人生で犬を飼ったことが一度もない。
死ぬのを見るのが怖いのだ。
 
チワワの寿命は12年~15年と言われてる。
あと7年……
いつかは必ずやってきてしまう別れに48歳の大人が怯えているのだ。
 
「死ぬのを見るのが辛いから、二度とペットは飼わないことに決めたんだ」
今までの人生で、知人の口からこの言葉を何度か聞いたことがある。
 
その時は何も思わなかったが、今はすごく気持ちがわかる。
まだ、死んでいく姿を1度も見たこともないのにだ!
 
実際、そうなってしまったらどうなってしまうんだろう?
平気でいられるか?
妻や子供たちもきっと悲しむ。
それを支えられるか?
 
想像しても答えは出ないので、なるべく考えないようにしている。
 
しかし、2月24日は毎年やってくる。
Facebookには、たいして親しくもない「友達」から祝福のメッセージが送られてくる。
嬉しくないと言えば嘘になるが、今日が自分の誕生日だと思い知らされる。
それはムギの誕生日でもあり、死へのカウントダウンが一つ宣告されたことになるのだ。
 
ムギと出会ってから、2月24日の誕生日はうれしさと寂しさが入り交じる不思議な記念日になった。そして、おそらくムギがいなくなってしまっても、それは変わらないだろう。
だからこそ、この日を大事にしたいのだ……
 
 
 
 
***

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2020-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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