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初日の出は美しくない

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:涌井 康平(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「初日の出は美しくない」
私はそう考えたい。
 
私は今まで何度も初日の出に感動してきた。真っ暗な中に家を出て、近所でも見晴らしのいい高台に赴き、その時を迎えてきた。初日の出は美しい。絶望的な寒さでカチンコチンになった体が、じわじわと溶けていくような、その瞬間が大好きだった。あんな美しい太陽が見られるのは元日だけだと信じていた。
しかし私は自分のそうした初日の出への思いを改めなくてはならないと思う。というのも、「あんな美しい太陽が見られるのは元日だけ」ではないからだ。

もちろん冬の澄んだ空気によって太陽は美しく見られるが、それは元日に限ったことではない。いや、むしろ「中秋の名月」なんていうような秋の方が綺麗に見られるのではないだろうか。そう、初日の出はベストな美しさではない。(一年の中で比較すれば)「美しくない」かもしれない。元日の太陽を超える美しい太陽を人生で何度見ただろうか。私は見たことがない。比較できない以上、初日の出への美しさ信仰は怪しいものだ。
 
私は初日の出に何か恨みがあるのではない。初日の出は美しいと思う。私は私が「日の出」というものを元日にしか見てこなかったことを問題視しているのだ。曇りの日を除けば毎日見られるにも関わらず、無視してきたのだ。その無視してきた太陽の中には私が見てきた初日の出を超える美しいものもたくさんあったかもしれない。私は、みんなから注目される初日の出だけを見て、あたり前にあった、もっともっと感動を与えてくれたかもしれない他の日の出は存在さえ気にも留めてこなかった。
 
こうしたことを考えだしたきっかけは、コロナ禍で続く「おうち時間」だ。
おうち時間のおかげで、今まで自分の目には全く入って来なかった我が家の魅力に次々と気がつけるようになった。今までは仕事から帰ってドサっと座っていただけのソファーも、よくよく見たら愛おしい姿をしていて、そっと座ってあげたくなってくる。座り心地もいい。窓から見える景色にも、新しくできた建物を見つけるなど意外と発見がある。適当に済ませていた料理も凝りだすと大変面白い。「あたり前」の中に、全く当たり前とは思えぬようなやさしい感動がある。私はそうしたやさしい感動に幸せを感じたのだ。
むやみに「初日の出」を美しいと思ってはいけない。
みんなが群がるわかりやすく感動できるものばかりに感動していると、みんなが目もくれない「あたり前」に感動するチャンスを逃してしまう。「あたり前」には自分で、主体的に感動していかないといけないのだ。私は今まで特に何も考えず初日の出に喜びすぎていた。初日の出は美しいのか?一回でも引いた目で見ることはなかった。「あたり前」に存在する他の日の出を見てみようと思ったことはなかった。周りの人に流されるまま、初日の出を見ていた。感動に対する主体性なんか、ちっともなかった。
 
しかし私は変わった。
おうち時間の楽しみ方は誰も教えてくれなかった。今年は主体的に感動していくことをだいぶ鍛えられた1年だったと思う。待っていても何も面白いことがないから、目の前のあたり前のものに集中して向き合っていくしかない。そうしていくうちに目の前の何の変哲もないものが無限大の面白さをまといだす。おうち時間のおかげで鮮やかな日常を過ごす癖がつきはじめてきた。
空を見上げれば毎日違う色をしているし、違う形の雲が浮かんでいる。花は徐々に咲いていき、散っていく。それはもちろん、日の出だって毎日違うだろう。初日の出よりもっと美しい日の出があるのならば、ぜひ見てみたいと思う。決して初日の出だけが特別美しいというわけではない。
 
一方、私が今心配しているのは、コロナが収束したらそうしたアンテナが再び鈍感になってしまうことだ。現在のような時間の余裕がなくなり、心の余裕も無くなればたちまち日常はモノクロに戻る。
ある程度は仕方のないことかもしれない。あたり前を観察する時間がなくなれば、当然感動する回数は減ってしまうだろう。私はそれでも、1日ひとつでもいいから、自ら、自分だけの感動を見つけたい。継続は力なり。身近な感動にアンテナを張り続けていきたい。
来年はまず、初日の出よりも美しい日の出を拝むことから始めたい。
でも、1年の初めに初日の出を拝むこと自体は大好きなので元日は初日の出のために近所の高台にのぼりたい。
 
 
 
 
***

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2020-12-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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