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メディアグランプリ

あの時、卵が全てだった


Masatoさん 卵

 

記事:大場 理仁(ライティング・ゼミ)

 

小学2年生の頃だったと思う。まだ、福岡に住んでいた頃、小さな庭があって、家のお隣に夏にヘビが出たりする川がある、こじんまりとした一軒家でいつもはしゃぎまわっていた純粋な僕が、卵を焼くという能力を手に入れた。なにやら、あれは簡単に作れるらしいと、子供ながらに母の手を借りながら、卵をコツコツと割って、フライパンの真ん中をめがけて、落とした。バチバチッと油と卵が交わる音がして、次第に、液体だったものは個体へと変貌を遂げていき、母が何食わぬ顔をして、皿に目玉焼きを入れた。

それからというもの、僕は卵を焼くということを研究した。砂糖をこれくらい入れると失敗するらしい。醤油はこんなに入れたらしょっぱい。油はごま油がやはり一番いいらしい。目玉焼きの時は目玉になる部分も裏返して焼くのが、自分は好みらしい。といったように、幼い僕はふむふむと言いながら、母がいない時を見計らって、キッチンを研究室に変えていたのだ。

思えば、それが自分の料理好きの始まりだったのだ。

それからというものの、妹よりも兄の方が率先して料理に参加していった。無論、洗い物はしない。断固反対だった。そういう兄を見て育った妹も、自然と自分で卵焼きの一つを見よう見まねで作っていった。もちろん、洗い物は妹も断固反対であった。しかし、どちらともそういうわけにはいかないので、妹に洗い物をいつも任せていたのは、兄妹という関係上、仕方のないことだったと思う。

母が昼にどこかに出かける時は、必ずのように作り置きの味噌汁に火を入れ、炊飯器からご飯をすくい、フライパンに油をひいて卵を落とすのが、基本スタイルとなっていった。それから、数年が経ち、母から学んだことが頭に入って、次は肉を焼き始めた。それも焼き方を色々と工夫した。最初は胡椒から始まり、様々な調味料へと手を伸ばすあたりは、卵焼きの時と何ら変わらない。ただし、肉という卵よりも高級な食材に勝手に手を伸ばし出して、母から怒られるということもしばしばあった。

小学4年生の自分はそうやって、米を洗って炊く、卵を焼く、肉を焼くということをマスターした。さらに、家庭科の実習で味噌汁を作れるようになって、もう食事を作るということに関しては、マスターしたと言っていいほどだった。その頃の、僕にとって飯を適当に冷蔵庫のもので作れるというのは、人生勝ったようなものだった。母の帰りを待たずして、腹が減ったら、自分で適当にやればよかったからだ。

それもこれも、母が何でも僕に作らせようとしたことが良かったことだったと思う。

今では、だいたいのものは何となくでできる。「ああ。こんなもんね」とクックパッドさんが教える手順でやっていって、調味料は目分量で何とかなる。適当に作る料理も、おしゃれに見えたりすることもあったりする。味付けで失敗することはまずもうない。(小学生の時は、泣く思いをしたことはあったが)。

小さなことからスタートしていって、こうも大したことも考えずに料理がえきるようになったものだと、改めて振り返ると、感慨深くもある。

自然と成り行きで身につけていったものというのは、あまり努力していないから、当たり前という気がする。できて当たり前だよなと思ってしまう。

大人になってみて、ふとした時に、こういうプロセスを踏むことを忘れてしまいがちになる。最初から、おしゃれなイタリアンを作ろうとしてしまうのだ。

確かに、一品ならパクれるが、応用が利かなくなる。味付けを少し変えてみるということが難しく感じたりする。それか、毎回作るごとにレシピとにらめっこをしなきゃいけなくなる。結果として、「料理って難しいのね」と面倒臭くなって、挫折をする。

これって、勉強するときも同じ感じがする。語学だとか、プログラミングだとか、試験勉強だとか、なんでもそう。急ぎすぎて、自分で勝手にプレッシャーを作り出して、「ああ。私には難しいのね」と諦めてしまう。

それって、何か違うと思う。

受験勉強とかの目標があっての勉強なら別だけど、自分の興味があって、始めたことは、もっと時間をかけてあげてもいいんじゃないかな。

自分でやろうと決めたんだから、ゆっくりでいいから一歩一歩進んでいけばいい。卵焼きを焼いていた僕のように「あ。この調味料うまいぞ」と一つ一つ味をしめていけばいい。時には、「うわー! しょっぱい!」と涙をするときもいいじゃない?そうやって、小さく小さく前へと進んでいけばいい。

そうやっていったら、気付いた時にはとんでもなく自分が成長しているはず。

今ではパスタをサクッと作っている私がいるのも、必ず卵焼きを焼いていた小さな僕がいたからだ。

あの時、卵が全てだった僕がいてくれたからだ。

 

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2015-12-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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