メディアグランプリ

居心地の悪い場所に


Kasaさん 居心地

 

記事:大場理仁(ライティング・ゼミ)

 

成人するまでに2回の転居を経験した。

神戸で生まれ、福岡、東京へと移り住んだ。

その度に、いやな想いをした。

まずは、方言でいじられる。幼い頃だったから、なおさら人との違いに敏感になっている同級生から、方言がぽろりと出るたびに、方言を真似され、いじられた。福岡から東京に来た時は「〜と」「〜やけんね」などの博多弁はかなり真似をされた。

そして、地方ごとの文化になれることが難しかった。西日本ではあまり馴染みのない「ちくわぶ」を東京に来た時に、友人の真似をして食べてみた時に、あまりの馴染みのなさに一口で箸が進まなくなった。いまだに、ちくわぶは食べない。

そういえば、福岡では体育の時に、立ち上がる時などに「ヤー」の掛け声をするなどは、あまりにも常識的だったので、東京に来てなくなってうっすらとビックリした。

それ以外にも、挙げればきりがないほどだ。

自分のように、転居経験がある人には、あるあるな話だと思う。

それはきっと髪型を変えた時にも似ている。

美容師さんに髪をバッサリ切ってほしいと頼んで、「似合いますよ。 大丈夫ですよ」という甘い言葉に従って、切ってみると「うーん。 なんで切っちゃったんだろう」と凹むことがありますよね。

周りからは「全然似合っているよ」と言われるけれど、自分では納得できなくて、髪を触っては「早く伸びないかな」とため息をしてしまったり。

鏡を見ても、なんだか自分が自分じゃないような感じがして、「やっぱり切らなければよかった」と落ち込むのだ。

諦めて毎日をため息とともに過ごしていたら、ある日ふと、もうそんなに髪のことで悩んでいない自分がいることに気づく。

鏡を見ると、「あれ? なんか自分不自然じゃない」と自分の髪型に見慣れるということがある。

伸びたのか、見慣れてきたのか、それは人それぞれだけれど、なんだかその自分に気に入って、次に髪を切りに行く時には、また同じ髪に切ってもらう。そうすると、馴染んでいて、「あ、やっぱりいいじゃん」と感じる。

そうすると自分が好きになってきて、もっとアレンジをしたくなって、髪の流し方とか、整髪料のつけ方などを工夫していくようになって、さらに気に入っていく。

そうなったら、こっちのもの。毎日が楽しくなってくるし、それが当たり前になっていって、友達からも「髪の短い自分」が私になる。

でも、そうしていって時間が経っていくと、飽きてくる。毛先を見ながら、早く伸びないかなと、また髪型を変えたくなってくる。

そうして、髪の色を変えたり、パーマをあてたり、女の子ならエクステを付けてみたり、いろいろなことでそれを紛らわせる。それをしながら、長くなるのを待つ。

紛らわせるも、やっぱり我慢ができなかったりする。

そして、髪を伸ばすという自ら課した枷を解き破って、またバッサリ髪を切ってしまったりする。そうして、周りから「伸ばすって言ってなかったっけ」と突っ込まれる。

そのループを繰り返していって、年を取っていくとゆっくりとループの期間が長くなっていき、だんだん自分の定番にはまるようになる。

それと同じように、その土地に初めは慣れないかもしれない。いじられるし、文化が違うかもしれない。だけれど、はと気づいた時には「いつもの日常」になっている。そうしたら、どんどん街が広がって見えるようになって、地元のいろいろなところがわかってきて、楽しくなってくる。東京も楽しみ方がわかって、最初は観光地的なところに行っていたのが、次第にそうではないところに行くようになってくる。わかりやすい大通り沿いではなくて、小道を歩くようになって、小さいけれど素敵なお店を見つけたりして、別の楽しみ方が増えてくる。

そうやって、ある程度その場所を知っていくと、目が別のところに移ってくる。今いる場所とは違う場所に行きたくなってくる。ちょっと旅をしたくなって、どこか別の県に行ったり、青春18切符でいろいろなところを訪れてみたりしたくなってくる。

その度に、その土地土地の良さを感じて、どこかにまた引っ越したいなと思ってしまうし、また元の場所に戻りたいなと思ってしまう。

そして、「海の近くに住む」「自然の多い場所に住む」「もっと都会に住む」などと友人に宣言するも、数年後くらいに、「あれ?結局引っ越さなかったんだ」と言われたりもする。

そうやっていって、その土地にどっしりと慣れてしまう。そして、ひょんなことから引っ越しが決まり、このループを繰り返す。また、土地に慣れるところから始まって、楽しめるようになって、別のどこかに行きたくなって、落ち着き、引っ越すというようになる。

でも、それはすごくいい経験だと思う。髪を切ることで、どういった髪型が似合うかがわかってくるように、いろいろな場所に移り住むからこそ、どういう特徴のある街が自分に合うかわかってくる。そして、髪型のアレンジをいろいろすることで、スタイリングがうまくなるように、街の楽しみ方をいろいろと知れるようになる。そういう大きな学びが引っ越しにある。いろいろなことを知っているからこそ、知っているもの同士で話がぐっと弾んだり、共感しあえたりする。

来年、少しの間だけど、オーストラリアに行くことになった。次は、国が変わるから方言とかではなく、言語が変わり、本当に文化もガラリと違うから、馴染むのに時間はかかると思う。だけれど、自然と馴染んでいって楽しくなるに違いないと思えば、とってもワクワクする。

そうやって、もっと引っ越しを楽しんでいこう。居心地の悪い場所に行くことは、きっと髪を切って新しい自分を見つけることだから。

 

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2016-01-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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