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【犬に学ぶ恋愛学】目や耳で恋を始めてはいけない理由


mitoさん 犬

 

記事:小笠原 雫(ライティング・ゼミ)

 

先日のライティング・ゼミが終わってからゼミ仲間と話が盛り上がり、3人で夕食に行くことになった。初めて入った串カツ屋で、
Kさん「ロボットが好きすぎて、先日ついに自分で組み立てるロボットを買ってしまいました」
Dさん「実はEテレってすごく面白い番組のオンパレードなんですよ」
ゼミ仲間たちが聞かせてくれる、私の知らない世界がとても新鮮で、話が尽きることなく、気がつくと閉店時間までワイワイと話し込んでいた。ずっとずっと話をしていたい、と思うほど楽しい時間だった。

「またねー!」とお別れし、家に帰りながら、私は不思議な気分だった。
どうしてゼミの仲間とは時間が足りないほど話せるのに、お見合いでは何も話せなかったのか、と。

かつて婚活をしていた頃は、「お相手とは同じ趣味じゃなくてもいい、共通の趣味なんて、仲良くなってから2人で見つけたらいいんだから」という考えで男性のプロフィールを見ていた。同じ趣味よりも、自宅が近いとか、年齢が近いとか、物理的なことを優先させていたような気がする。
しかし実際、お見合いで男性と向き合って座ると、目の前の素性の分からない男性に興味が持てない。会う前のメールであんなに話が盛り上がっていたのに……だ。しかも、下手に話をして嫌われたら……などと考えるとますます何を話したらいいのか分からなくなり、結局お断りしてしまう、という悪循環をたどっていた。

しかし、今日ゼミの仲間たちとこれだけ楽しい時間を過ごすと、お見合いでも同じ趣味とか何か共通の話題がないと恋が始まらないのではないか、私のお見合いのあり方は間違っていたのではないか、と考え込んでしまうのである。

“人に好かれようとするよりも、人を好きになる方が、断然面白いことだと思わないか。人の目を気にして、あれこれ自分を偽るよりも、あっこの人はステキだな、この人と友達になりたいな。そういう人を見つけて好きになる方が、はるかに楽しいことじゃないか”
(池田晶子「14歳の君へ」)
私がお見合いで足りなかったのは、”この人と仲良くなりたい”という気持ちだったような気がする。そう言えば、ゼミの仲間とは仲良くなりたくて私から話しかけてた。私の知らない世界を見せてもらいたくて、「私Macintosh使ったことないんですけど、Windowsと何が違うんですか?」とか、隣に座った人に遠慮なく聞いてた。嫌われたらどうしようとか考えてなかった。
とは言っても、婚活していた当時はそんなことに気付くことなく、仲良くなりたいと思えるポイントなんて、どうやって探したらいいのか、この鈍感な恋愛難民には全く分からないまま、なかなかまとまらないお見合いに嫌気が差し、結婚を諦めてしまった。そんな昔のことを思い出しながら、ゼミ帰りのその日は布団に入った。

ゼミ仲間と話し込んで帰りが午前様になっても、愛犬は待ってくれない。翌日、愛犬コロン(オス・10歳)が散歩を催促する。コロンはいつも、パッと見、何もない所で立ち止まる。そして、そこら辺をクンクン嗅ぎ回る。

「あー、もう。ほら、行くよ!」

私は鎖を強く引っ張るが、この老犬もなかなか負けてない。お気に入りの香りを楽しむために、テコでも動くまいと前足を突っ張って自己主張する。恐らくメス犬がいた形跡が鼻から入ってくるのだろう。そうやって、オス犬は毎日「散歩」という貴重な時間で、恋を探している。

私たち人間は、どうだろう?
かつて「職場と自宅の往復で出会いがない」と私はよく周囲に愚痴をこぼしていたが、うちのコロンが「自宅と散歩の往復で出会いがない」とか「いつも同じ散歩コースで、同じオンナの匂いしかなくて飽きた」などと愚痴をこぼすのを聞いたことが無い。もちろん人間の言葉が話せないからだとは思うが、それでも愚痴ひとつ言わず、嗅覚を研ぎ澄ませ、毎日毎日同じ場所で立ち止まり、まだ見ぬ”オンナ”に想いを馳せる。下手したら、オンナの匂いを身に纏うため、なりふり構わず地面に身体をこすりつけることもある。一緒にいて恥ずかしいから止めて欲しいのだが。

“男は目で恋をして、女は耳で恋に落ちる”とはワイアットの名言だが、私たちは新しい恋の探し方を間違っていたのかもしれない、と老犬の”オンナ探し”を見て思うのである。
「あの人、歌声が素敵よねー」
「こないださぁ、彼からこんなことを言われてね」
「話が面白い男性とは、ずっと一緒にいたいわぁ」
これは、私の周りでよく聞く、男性に関する会話だが、やはり(言葉を含む)耳で恋を探している。これは想像にすぎないが、男性の間では
「あの女、顔が可愛い」
「俺は顔よりもスタイルのいい女がいい」
「あの女は俺が絶対に落としてみせる」
こんな会話がなされているのではないだろうか。
この名言通り、男にとって恋とは目で「する」もので、女にとっては耳で「落ちる」ものだ。なのに私たちは目や耳で恋を「探」そうとしていないだろうか。では、恋を「探す」ときは何を使うのか。それが「鼻」ではないかと私は老いぼれた愛犬を見て気付いたのである。

「私は、このなりふり構わず道路に身をこすりつける老犬と同等か?」
と落胆したくもなるが、理想の夫婦像でよく挙げられる「空気のような存在」これも鼻だ。
そして『身体知-身体が教えてくれること』(内田樹、三砂ちづる著)には、こう書かれてあるそうだ。
“ごはんを食べていてまずくなったら、それは家族の危険信号なんです。だいたいテレビドラマでも、家族の間に亀裂が入るというときは、ちゃぶ台をひっくりかえすか、作ってくれたものを残して「もう、いらない」と席を立つ場面ですからね。
セックスするまでもなく、男と女はいっしょにごはんを食べるだけで、いっしょに居られる人かどうかはわかるんです。うまくゆかない相手とだと、ごはんの味がしないから。「味がしない」というのは、「この人といっしょにいても、あなたの心身のパフォーマンスは上がらないです」って身体がシグナルを送ってきているわけですから。いくら頭が「いっしょにいるほうがいい」というメッセージを送っても、消化器の方が「いやだ」って言っている。だから、食事の時にたわいないことをしゃべっていても、やたら食が進んで、「おかわり」と言える時は、身体が「この人とは相性がいいよ」って教えてくれているんです。”

ご飯が美味しい=味覚=鼻から入ってくる情報が重要

やはり鼻は恋を探す過程において重要な立ち位置にいたのだ。だから私は、恐れ多くもかの名言にひとこと付け加えたいと思う。

「男は目で恋をして、女は耳で恋に落ち、犬は鼻で恋を探す」と。

以前ネットで「一度も結婚したことのない人が、『恋愛の達人』と称してナンパ術とか披露してるけど、本当の恋愛の達人は、最初にお付き合いした人と結婚した人のことを言うと思う」という考えを読み、当初は「遊び足らない人の負け犬の遠吠え」だと思っていた。しかし、鼻の重要性を信じる今なら納得できる。
人生の相棒を見つけられる人は嗅覚が優れているのだ。自分にとって”最良の空気”を探す能力に長けている。

どうして婚活していたときに、このことに気付けなかったのかと、いま激しく後悔している。私は必死で男性のプロフィールを読み、メールの交換をし、そこに書かれた言葉だけで男性像を作り上げ、恋を探していた。
どんなにパソコンの画面に鼻を近づけようとも婚活のプロフィールは匂わないのだ、当たり前だが……。相手を知るには相手の空気に触れなければならない。実際に会い、相手の空気と自分の空気が混ざり合い、なおかつその中で食事をし、その食事が美味しいか、味がするか、で判断すべきだったのだ。

でも、このことに気付いたとき、婚活は止めたけど、結婚を諦めるのは止めようと思った。というのも、私には鼻で仕事の相棒を探した経験があるからだ。

私はストレスの多い仕事をしている。鳴り止まない電話。飛び交う怒号。そんな中、香水を使うことで、私はストレスを乗り切っている。電話でどれだけ怒られても、次の電話はすぐに鳴る。泣きたい気持ちを抑えて、香水の香りで深呼吸し、気持ちをリセット。勤務時間中の私にとって香水はなくてはならない相棒だ。

香水といっても何でもいいわけではない。銘柄も決まっている。しかし、この銘柄にたどり着くまでは、いろんな事があった。
手当たり次第に香水を買いあさった「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる期」。いろんな香水を使ううちに、どれも似たり寄ったりに思えてきて「香水ジプシー期」。ネットの口コミを読んで取り寄せ、ガッカリした「低迷期」。やっと自分に合う香水を見つけたと思ったのに廃盤で在庫が残り1本しかなかった「失恋期」。たくさん道に迷ったが、結局実店舗で店員さんと相談しながら買ったものに落ち着いた。(ちなみに失恋した香水は、使うのが勿体無くて、引き出しに眠らせてある)

それもこれも、諦めずに探し続けていたからこそ、見つかった香りだと思う。仕事の相棒も鼻で見つけられたんだ。だから人生の相棒も諦めず、自分のこの鼻で探していきたい、これからは。

 

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2016-01-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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