メディアグランプリ

憮然は憤然ではなかったと悄然とした、というお話――あれを読んだらこれも読む、連想する読書――


西部さん 憮然

 

記事:西部直樹(ライティング・ゼミ)

 

彼は憮然とした表情で彼女を見ていた

ある小説あった文章だ。
これを読んで私は小説の中の彼は彼女に怒りを感じているのか、と想像を巡らせたのだ。
だが、どうもしっくりこない。彼が怒る場面ではないのに、なぜ、怒っているのだろう。
と気になっていた。

あるとき、たまたま憮然の意味を調べて、憮然としてしまった。
なんと勘違いをしていたのだ。
憮然とは、怒りのあまり無口になっているような様子のことだろうと、思っていた。
しかし、辞書には
「ぶ‐ぜん【憮然】
(1)失望してぼんやりするさま。失望や不満でむなしくやりきれない思いでいるさま。
(2)あやしみ驚くさま」
広辞苑 第六版 (C)2008 株式会社岩波書店
とあるではないか。
自分の無知に失望し、驚き、ぼんやりとしてしまう。

あの小説の流れも怒りより、失望したり、驚いたり、の方がしっくりくるのだ。
そういうことだったのか!

思い込みで小説の読み方を誤ってしまっていたのだ。

思い込みは、視野を狭くする。
一つの出来事も他の面から見ると、違う様相を示すことがある。

男女のすれ違い、行き違いも視点の違いが生み出しているのかもしれない。

例えば、プロポーズ! 男女間の一大イベントなのだが、これがどちらから言ったのか、言わせたのか、によってのちのちの家庭内ヒエラルキーというか、力関係というか、尻に敷かれるかどうかの分かれ目になる。ように思う。私は分かれ目になった。

私は、のちの妻が画策してプロポーズを、私から言わざるを得ない状況を作り上げたと認識しているのだが、妻に言わせるとそうではないらしい。
彼女曰く、仕方なく受け入れてやったのよ。となる。やれやれ。

そして結婚記念日も――事実婚なので、入籍日とかはないのです――3ヶ月もずれていたことが、最近判明した。いやはや。何ということであろうか。20年間もだ。
結婚記念日はこの日にしようと、二人で話し合ったはずなのに、なぜかお互い認識している日が違うのである。
同じ出来事も、視点が違うと違う意味や解釈が生まれてしまうのだ。

そんな、視点の違いを巧みに描いた漫画がある。

交際10年うち同棲8年のふたり、ふたりの物語、一つの出来事を男性側の視点からと女性の視点からそれぞれ描いている。

もう、そろそろ結婚も考えたいふたり、女性はなかなかプロポーズをしてこない男性にすこし不安も覚える。それに対して、男性は……。
一つの出来事の認識の違いが、すれ違ったり、食い違ったり、時には喧嘩や不安に繋がっていく。

この作品、本読み仲間から薦められたのである。
「面白いよ、奥さんと一緒に読むといいよ」と。
そして、この漫画を読んだよ、と本好きの仲間にいうと、この漫画の主人公たちと同じく数年間同棲している女性は、「彼氏に読ませている」といい、「そうそう」と煮え切らない彼に少し苛立っている女性が同意するのであった。
恋人以上、結婚未満の方々へ、そして、そこを目指す方々へ、男女どちらも、読んで異性への認識を新たにしたい。

・喰う寝るふたり住むふたり1~5 日暮キノコ ゼノンコミックス 徳間書店

物事の見方、とらえ方の違いですれ違うのは男女ばかりではない。
家族だってそうだ。
長年、同じ屋根の下で暮らしていたからといって、同じに考える、とらえるとは限らないのだ。
たまに里帰りすると、母や姉たちと昔話に花が咲く。
あの時は~、となる。
幼い頃は、ふたりの姉に虐められていたというか、いたぶられていたというか、からかわれていたというか、遊ばれていた記憶があるのだが、姉たちに言わせると「もう、わがまま坊主で、私たちが面倒を見ていた」ということになるらしい。やれやれ。

他愛もない遊びならまだしも、人生を左右するようなことで、食い違ったら……。
大阪の中華料理店、戸村飯店の二人の息子。要領のいい兄ヘイスケと、単純な弟コウスケの青春物語。兄弟は反発し、お互いが持っていないものを羨ましく思うと同時に、疎ましくも思うのだ。
しかし……。

瀬尾まいこさんの視点は、いつも優しい。
最後は少し涙する。
すれ違いも悪くないかもしれない。

・戸村飯店 青春100連発 瀬尾まいこ 文春文庫

すれ違い、思い違いに気がついたとき、ふたりの関係が変わっていくこともある。
こういう人だろうと思っていたら、意外な面を見つけて戸惑うことも。

友人に見た目が大変厳ついというか、男性ホルモンむんむんの男がいる。
彼は、どう見てもスタミナラーメンニンニク入り大盛りと餃子をガシっと食べて、ついでにビールをジョッキでぐいぐい、というタイプに見える。実際そうなのだが、思いの外女子力が高く、繊細な料理をつくったりするのである。
また、見た目はたおやかで、趣味はお菓子作りです、というような女性がいる。
彼女はどう見ても、食事はサラダで、お酒なんか……。というタイプに見える。のだが、飲みに行くと、ガンガン呑んでほとんど酔わない酒豪だったりするのである。

昔「私、脱ぐとスゴイんです」というセリフで一世を風靡したCMがあった。
若かった私は、「凄いところを是非お願いしたい」とブラウン管に向かってお願いしたりしたものだ。

このような人だろうと思っていたのに、一皮脱ぐ(ママ)と凄いことだったら。
可愛くて、貞淑な妻と思っていたら、ある日失踪してしまう。
彼女を捜し、追っていくと、そこに現れた彼女は……。

映画化され、世の男性の心胆を寒からしめたのが、「ゴーン・ガール」だ。
この映画を見終わり、男同士で、
「いやあ、怖いよね」と震えながら、語り合ったものです。
どんな妻が現れるかは、読んで下さい。

・ゴーン・ガール ギリアン フリン 中谷 友紀子訳 小学館文庫

いつまでも小さくて、可愛いと思っていた娘。
出張の度に何か可愛らしいものをお土産に買って帰ったものだ。

しかし、最近は「チッ、なんだあ、これよりお菓子がよかったのに」ともう喜んでくれない。
いつまでも可愛いと思っていたのに!
彼女の成長した? 一面を見せられて、父親は憮然とするのである。

 

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2016-01-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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