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子どものころ福岡に7年間住んでいた 《冬の日の記憶》


Yamamotoさん 冬

記事:Mizuho Yamamoto(ライティング・ゼミ)

 

先週末、九州は未曾有の雪に覆われた。
Facebookのタイムラインに、さまざまな雪だるまの写真がアップされ賑わいを見せた。

公共交通機関がストップし、予定がキャンセルになり、連絡を取るのにあたふたしながらも、雪だるまにいらいらを癒される自分がいた。

スノーマン、昔ながらの雪だるま、人気はやはり『アナと雪の女王』のオラフ。長野の友人は、「オラホ」と記憶していて、それは長野弁だろうと突っ込みが入り「(笑)」マークの花が咲く。

雪は人々の心を童心に返してくれる。

「雪が校庭に積もったから、さぁ外で遊ぼうとクラスの子どもたちと雪合戦をしていたら、校長室に呼ばれた」

「どういうこと? めったに雪の降らない九州では、雪遊びも貴重な体験だよね?」

「教育課程のどこに、雪合戦が位置付けられているのですか? って」

校長にこっぴどく叱られたとしょんぼり話す長崎県の小学校教員の友人。

「確かにね、雪が積もったのにこの学校の子どもたちは、どうして雪遊びをしないのかなと……。普通さぁ、体育の時間に変更してみんなで外に出て雪遊びをするよね!」

数年前の友人との会話がふと思い出された。

私が小学生時代を過ごした福岡も、めったに雪を見ることがなかった。
しかし、はっきりと覚えている冬の日の校庭の光景がある。

しんしんと冷える冬の日の放課後、校舎から外を見ると、校庭のトラックに水をまく先生がいた。何人かの上級生が楽しそうにそれを手伝っていた。何をするのだろう?

翌朝登校して、水まきの理由が分かった。
先に来た子どもたちがスケートリンクと化した校庭を滑っているのだ。運動靴で。

私もあわてて校舎の階段を下りて校庭に走った。ちょっと怖かったけど、氷の上を滑るのは初めての体験で、なんだか誇らしく楽しかった。チャイムと共に教室に戻り、2時間目の後の中休みの時間まで、氷が溶けないことを願いつつ、授業は上の空。みんなそわそわしていたと思う。

残念なことに、九州の冬の太陽はあっという間に氷を溶かしてしまっていた。ただの濡れた地面と化したスケートリンクは、その後復活することはなかった。

そんな話をすると友人たちが、長野は先生たちやPTAで水まきをしてスケートリンクの整備を毎日してくれていたと教えてくれた。
小学校の先生をしていた友人のお父さんは、冬は毎朝4時起きで、学校のスケートリンクの水まきのため出勤されていたという。

福岡の小学校で、校庭をスケートリンクに変身させた先生は、どんな方だったのだろう?
小学生だった私の想像の及ばないところで、その先生は子どもたちを思って実行に移されたのだろう。とにかく楽しませてやりたいと。

およそ九州人にはない発想だと、今になって思う。

その小学校では、雪の日に上級生がかまくらを作って、下級生たちにも開放してくれたことも思い出として残っている。

それはかなり大きなかまくらで、私たち低学年が10人以上一度に入れる大きさだった。
上級生は朝からずいぶん頑張って作ってくれたらしいとみんなで話したのを覚えている。

思うに、きっとスケートリンクとかまくらは、同じ先生のしてくださったことではないだろうか。出身が雪深い街だったのだろうと推測される。

授業時間を費やしてのかまくらづくりは、社会科の「雪国の暮らし」の体験学習として処理したのだろうか? 学校中の子どもたちが順番にそこに入った記憶があるので、校長先生も大いに認めてくれた活動だったのだろう。

今、学校教育は、マニュアルから外れることを嫌う傾向にある。先の雪合戦禁止の校長も保護者からクレームが来たら、どう対応するかとか、年度末に教育課程を消化できていなかったらどう教育委員会に報告するかという管理職の論理が先に立ったのだろう。

めったにない雪が降ったのだから、普段はできない雪遊びを子どもたちに体験させたい!
という担任の純粋な気持ちが、いけないことになってしまう今の状況を寂しく思う。

私自身の体験からもわかるように、マニュアルから外れることが、子ども時代の大切な記憶を構成する場合もあるのだ。特別な時には柔軟に、弾力的に対応できる力量のある管理職は、今の学校教育の現場では育たないのだろうか。

どんどん窮屈になって行く子どもたち。息抜きのできない教員たち。

肩の力を抜いて、深呼吸をして……。

マニュアル通りにいかない人生、寄り道や回り道も、決して無駄ではないことを学ぶ機会を持った子どもは、たくましく育つ気がする。

例えば私みたいに。

おそらくスケートリンクをつくってくださった先生は、もうご存命ではないだろう。

それほど歳月は流れてしまった。

しかし、雪を見るたびにあの時の楽しさがよみがえる。

身体に刷り込まれた「楽しさ」の感覚は、案外消えないものである。

今回、たとえ雪のせいで不自由を強いられる生活が数日続いても、なぜか憎めなかったのは、寒波の裏側に、子どものころの記憶が横たわっていたからだ。

「マニュアルから外れることが記憶を作る」

時にはそんなこともあると再認識した、大雪の日だった。

 

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2016-02-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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