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メディアグランプリ

地方でもいいのかもしれない《ユキヒラの覚書》


ユキヒラさん 地方

記事:ユキヒラ(ライティング・ゼミ)

 

テレビには、雪に埋もれた西郷隆盛像が映っていた。
40年ぶりの寒波。大雪が九州を襲った。
私の地元の鹿児島も、雪に見舞われていた。

もうすぐ、地元で過ごした時間よりも離れた時間のほうが長くなる。
最近では、Uターン、Iターンと言って地方へ移住する人の流れが強いらしい。
私もそれを頭の片隅で夢見ている一人である。

しかし、それを阻むものがある。
東京にいなければできないことがある。

 

著者との出会い。
これは、東京における圧倒的メリットである。

三省堂を初めとする大手書店はもとより、B&Bなどの書店でも頻繁にイベントを行なっている。移動費が相対的に低く呼びやすいことが大きな理由だろう。また、周辺人口の絶対的多人数により、集客も見込みやすい。ほぼ毎日、都内では何かしらのイベントが行なわれている。

もちろん、会わないほうがいい場合もあるかもしれない。
小説に代表されるような本そのものに独自の世界観がある場合には、著者の空気との齟齬があり、逆効果になることもある。

けれど、本と著者との世界観が近い、またはそのものの場合、そのインパクトは計り知れない。

昨年イベントで直に声を聴いた方でもっとも印象深かったのが、家入一真氏である。
引きこもりからペパボを創業、リバ邸をつくり、クラウドファンディングサイトのCAMPFIRE、最近ではネットショップの開設が非常に容易になるBASEにも関わり、Twitterのフォロワー数は14万人に及ぶ。

その著書から受ける印象は、破天荒で、約束が守れなくて、でも底知れないぬくもりを湛えた人物像であった。

当日、ニット帽に黒縁メガネで家入氏は現れた。
トークイベントで言葉を紡ぐ彼は、寡黙に見えた。
言葉を発しているのだけれど、その言葉は自ら伝えようとして表現されているのではなく、内に掘られた洞窟の奥にある湖の波紋が指先に触れたような静けさを湛えていた。

たまらず僕は質問した。
「『自分を生きる』ためにはどうしたらいいでしょうか」

即答はしない。
「もっと……周りを気にしなくていいんじゃないですかね」

その言葉を聴いた瞬間、傷だらけの家入さんの姿が浮かんだ。
きっとぼろぼろになりながら、この人が培ったものなのだ。
ありていだけれど、勇気をもらった。

 

イベントの後、再度、家入さんの本を読み直した。

頭の中に音声が流れる。
これまで僕の声だったその言葉は、今聴いた家入さんの声で響いてくる。
これまで映像でしか見ていなかった家入さんの姿が、この目で見、感じた家入さんの背中で浮かんでくる。

瑞々しさがまるで違った。

全く違う本だった。

 

地方にいてはなかなかできないこと。
演劇鑑賞もそうかもしれない。

過日僕は、劇団天狼院の新年会に参加した。

年末に公演された『コーヒーが冷めないうちに』の上映会が開かれるというのである。しかも、キャストさんやスタッフさんも多数参加する。おそらく場違いではなかろうかと思いつつ、あの天狼院5代目秘本がどのように演じられるのか観たかった。(本番に見に行きたかったのですが、そのころ私は鹿児島への20時間耐久ドライブという名の修行中、残念!)

キャストさんやスタッフさんが9割の状況の中、申し訳なく東京天狼院の片隅からスクリーンを見ていた。サッカーで言えば、左サイドバックがオーバーラップしてボールを持ったとき、9割はセンタリングを選択する位置である。つまりは角度がない。

それくらいに、東京天狼院には人が溢れていた。そして、話を聞くとほぼ全ての人が劇団天狼院に関わっていた。キャストは10数名。その倍に匹敵する方々がこの公演を裏方として支えていたことを知った。

十分に観賞する事ができた。
言葉の強さに感動した。
東京天狼院書店の音響がどれほどすばらしいかはわからない。
けれど、強くつよく胸の扉を叩かれた。

著書自体、すばらしいものだ。
想いが沁み渡り、胸がいっぱいになった。
どうしても職場では読みたくなくて、
昼食はあえて、喫茶店で食べた。

演劇には、本とは異なる感動があった。
内気な僕を、叱咤するような力強さがあった。
一歩が出ない躊躇いに、背中をハタク激励があった。

上映終了後、懇親会が始まった。
実際に関わった人に話を聞くと息遣いが伝わってくる。実は、この本は先に脚本があり、それがすばらしいということで書籍化が決まったものだった。上映決定から本番までは実質10日間という業界ではありえない日数だった。

主役の数役の波里さんは、脚本と書籍とのキャラの違いに最初は戸惑ったと話してくれた。決め台詞の「コーヒーが冷めないうちに」と言って、ケトルからコーヒーを注ぐ動作への工夫は何度となく繰り返したという。

キャプテンであり、ケイ役の井上さんには、言葉の強さをお伝えさせてもらいました。書籍とは違う言葉の波動が胸を打ったこと。書籍と異なる感動。キャストの、劇団の熱が心の扉を開けてくれたこと。喜んでくれた。

 

書籍には、文字が書かれている。しかし、その言葉を紡いだのは間違いなく人。
その人を知ることで、書籍に血が通う。それがトークイベント。

書籍にある世界観を現実にするのが劇団。でも演じているのはやっぱり人。
人が発する言葉には、波動がある。響きがある。

 

この響きは、地方では出来……るのか?

天狼院は今、もっか地方へ、進出している。
すでに、福岡天狼院は稼動し、京都、仙台も準備中だという。
三浦店主は、数年以内に10店舗にすると豪語している。

そう言えば、天狼院書店ではライティングゼミなどのイベントを東京と福岡で同時に開催している。プロジェクターとカメラとマイクとなんか専門的なソフトを使って、テレビ会議みたいな感じでやっちゃってしまっている。

もういちど、劇団天狼院の『コーヒーは冷めないうちに』観たい。
東京以外の人にも見てもらいたい。
キャストさんは東京に集まっても、福岡とつないでQ&Aとかできてしまう。

東京にいなくても言葉の響きはきっと伝わる。

 

東京にいなくてもいい気がしてきたな。
まさか、天狼院は東京一極集中という社会問題さえも解決しようと目論んで……はいないな。

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2016-02-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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