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メディアグランプリ

【わたし、白紙恐怖症なんです】みはるの古筆部屋


記事:酒井

 

 

この白紙を真っ黒にしなさい。

今までで何回も感じてきたこの恐怖と私は今戦っている。

先生の「始め」という声と共に、裏返していた紙を表にする。そして、左上に自分の名前を書いて深呼吸。戦いが始まるのはここからだ。狭い机の上に並べられた2枚の紙のうち1枚を凝視し、もう1枚に素早くペンを走らせる。所狭しと並んでいる1枚目の文章の意味を理解し解いて、2枚目の回答欄の中に答えを書いていく。

30分が経過すると「問題文に訂正があります」と別の先生が教室に入ってくる。それを「はいはい、わかっていますよ。大問2の問い4でしょ?」とすでに白紙を黒くし終わった私は得意げな顔をしてスルーする。

残りの20分は自分の答えが本当に合っているのかを確認。

「はい! 回収!」先生の声と共に2枚目の紙が後ろの席から回ってくる。私は満足げに自分の紙を1番上に乗せて前の席へ回す。

定期テスト。

それは学生をやったことがある人なら必ず通った道である。大抵の学生はこの定期テストというものが嫌いらしい。これを読んでいるこれまでに学生をやってきた人もそうだろうし、現在進行形で学生をやっている人もそうだろう。

なぜなら、この定期テストのために自分の好きなゲームも漫画もデートも遊びも我慢して勉強をしなければならないからだ。勉強をしないという手もあるがそれはほとんどの親が許さないだろう。

一方、私は中学から始まったこの定期テストが大好きだった。いや、定期テストが好きというよりは回答欄をすべて埋めることができたときの達成感と結果が返ってきたときの高揚感がたまらなく好きだった。自分より頭のいいはずの先生が考えた問題を簡単に解く快感とクラスの誰もが解けなかった問題を自分だけがわかったという優越感が最高だった。

それを周囲の同級生も察していたのか、テスト後にはよく
「みはる、今回も結果よかったんでしょ?」と私を冷やかしにきていた。しかし、5教科500点満点中480点を取って、学年3位になったときだって私は「みんなが思っているほどよくなかったよ」と返していた。

今になっては何て嫌な女だったのだろうとは思うが、そのときは本気でそう思っていた。私の両親は教育熱心な方ではなかったし、テストの点数を教えたところで何かご褒美がもらえたわけでもなかった。だから、私はテストでいい点を取るために勉強をしていたというよりは、

白紙を埋めて達成感、高揚感、快感や優越感を得るために必死に勉強をしていた。この必死さというのが親も心配するほどだったようで……。

勉強(50分)+休憩(10分)の合計60分を1セットとして、平日には帰宅してからこれを5セット、休日は12セットが当たり前だった。要は食事、トイレや入浴以外はテスト勉強にあてていたということになる。これだけ勉強しているとさすがに頭は痛くなるわ、疲れるし辛かった。けれど、私がもっと辛くて怖かったことは

白紙が真っ黒にならないこと

だった。全く回答を書けないということではなく、私は空欄がひとつできてしまうことですら怖かった。自分が解けない、わからない問題を見たときは手の震えが止まらなかった。テスト中には過呼吸になりそうなくらい極度の緊張と恐怖に襲われていた。

私はばかみたいに完璧主義者だ。当時を思い出すと定期テストごときに恐怖を感じていたとは我ながら笑える。大学に入学してからは、中学や高校のような定期テストではないため白紙に怯えることもなくなった。

と思っていたのに……

今までで何回も感じてきたこの恐怖と私は今戦っている。

私の目の前には、真っ黒になっていない白紙がある。さあ、埋めてくださいと言わんばかりに見開いている。怖い。埋められない。今、私の目の前に広げられている白紙それは、

スケジュール帳(春休みである2月3月のページ)だ。

大学生の春休みは言ってしまえば夏休みよりも長い上に課題がないため自由な時間が有り余るくらいある。学期中はあんなに切望していた自由な時間なのに、いざ目の前にすると私はすごく怖かった。

2月の1ヶ月分はなんとか埋めた。そうすると、定期テストと同様によくわからない達成感を得ることができた。毎日何かしらの予定が書き込まれている私のスケジュール帳を見た友人に「みはる、忙しそうだね!」と言われたときは「そうなの、私忙しいの」と友人より充実した生活をしているんだという優越感が私の胸を支配した。

しかし、2月も後半になった今は白紙を埋めてしまったことに後悔している。毎日はいっている予定をただ“こなす”ようになっている自分に気づいたから。バイトも遊びも歯医者や美容院の予定だって、“楽しむ” ことより、まず予定を “こなす”毎日。

あんなに感じていた達成感は埋まったスケジュール帳を見ても感じなくなり、急遽はいる予定に対応できない自分からは優越感なんて消えていた。

3月の予定が埋まらない、怖いと思っていたばかみたいに完璧主義者の自分とはもうさよならをしよう。

何かの予定をいれるのではなく、自分がしたいことや楽しいと感じることを予定にしよう。予定がない空欄があったっていい。“こなす”だけの予定なんていらない。

もし、どうしてもその空欄が怖くなったときは

「天狼院」

と書いてみよう。新しい本やまだ知らない仕事、自分のしたいことや楽しいことを見つけに……。

 

 

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2016-02-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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