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ポケットに今日使う一言を入れておく生活


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記事:タチヒロ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ラディション シルヴプレ」
旅先のパリ、フランス語で僕はカフェの店員のおじいさんに向けてそう言った。店に入ってキッシュとビールの注文までは英語で話していた僕が、急にフランス語を話したので、おじいさんはびっくりした表情をしていた。海外でアジア人は20歳後半であってももう少し若くみられるというが、その見た目に加えて、カタコトの予習してきたフランス語を使う僕が、おじいさんには健気な少年に映ったのか、「ラディション?OK!!!!」と言って笑顔で対応してくれた。
 
イギリスに住んでいたときに、ヨーロッパに旅に出る時にはその土地の言葉をポケット入れとく感覚で用意して旅行に出ていた。実際はネットで言葉を探したりガイドブックを見ながら慣れない言葉を必死で覚えるので、「ポケットに入れとく」という表現にある手軽さみたいな意味とは逆で努力して持っていくわけなのだが、気持ちは胸ポケットにそっと入れとく気分だ。シンプルな言葉であればあるだけいいと思う。使う機会がたくさんあるってことだ。
 
イタリア旅行では、トラットリアと呼ばれるイタリアの大衆レストランで、デキャンタに入った赤ワインと大量の揚げ物を食べた後、最後に店員のお姉さんに「イルコント ペルファボーレ」といつも通りそこだけイタリア語でお願いした。お姉さんはウィンクして笑顔で対応してくれた。
 
「ラディション シルヴプレ」も「イルコント ペルファボーレ」も意味は「お会計お願いします。」だ。それだけだけど、それだけで店員はだいたい笑顔で送り出してくれる。予習して一生懸命喋ってる感があるからだろうか。それだとしてもこちらも気持ち良いし、良いコミュニケーションだと思う。
 
旅先や海外での生活では言葉がネックになるが、言葉をしゃべること自体が目的となってそこからコミュニケーションが始まりやすいというメリットがあるというのが、僕の感想だ。日本語に戻ると途端に口下手になるので、日本語ではどんな内容のことを喋ってコミュニケーションを始めたらいいのかわからない。でも母国語でなければ、「お会計お願いします。」が会話の糸口になったりする。
 
先程のフランスのカフェのおじいさんの店員さんが「フランス語うまいじゃん、他にしゃべれるの?」と聞いてきたので、僕は「他には喋れないので今度来るときに勉強してきます」と答えた。「じゃあ、待ってるよ」とおじいさん。「また今度」と僕。そんな短いけどコミュニケーションが交わされた。全て「ラディション シルヴプレ」のおかげだったりする。そう考えると、日本語でも今日、この言葉を使おう、という言葉を決めて朝、家を出るのって良さそうと考えた。ポケットに今日使う一言を入れて、1日を始めるのだ。その言葉は、最初は挨拶でもいいし、人を褒める言葉であっても素敵だし、普段あまり言わない言葉に挑戦するのもいいかも知れない。使うのにハードルが高そうなチャレンジな言葉だと一回使っただけで達成感を得ることもできる。
 
さらに、それ以上の体験をしたこともある。イギリスでの生活では近くにあったパブの店員のお兄さんが暇そうな時間に僕は毎日通っていた。今日はこの単語使ってみようとか今日はこの表現を使おうとか考えながら短いコミュニケーションを交わさせてもらっていた。(今、考えると付き合ってくれたその年下のお兄さんに感謝したい)短いコミュニケーションだったが何度も交わしているとそのパブの前を通った時も手を振ってくれたりした。そんなある日、そのパブが音楽イベントでたくさんの人に溢れた。チケットがないと入れないのか、雇われの警備の大きな男がいつものドアの前に立っていた。いつも通り入ろうとした僕に大男はチケットはあるのか、何歳なんだ?(アジア人は若く見られる)と質問し追い返そうとしてきた。僕がめんどくさそうな表情でマゴマゴしているとそこにいつものお兄さんがやってきて「彼は問題ないから、入れてあげて」と言ってくれて僕はいつも通り中に入ることができた。大袈裟だけどなんだかイギリスに認めてもらった気分がした。
 
ポケットに入るくらいの小さな言葉を用意して、短いコミュニケーションを始めてみるってことを僕はおすすめしたい。それが母国語だとしても今日はこの言葉を使うという用意があると、機会さえくれば迷わずに言葉が出てくるし一回使っただけで達成感もある。大きな見返りは期待しない方がいいけど、たまに嬉しい出来事が起こる場合もある。ポケットの中にどんな言葉を入れるのか考えてみませんか?
 
 
 
 
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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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