メディアグランプリ

どうしても私は人と行く旅が好きなのだ


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記事:やまとまさえ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
旅好きのはしくれとして、ずっと一人旅に憧れがあった。人のことを気にせず自由気ままに旅をして、現地で友達を作ったりしている旅人たちはとてもかっこいい。一人旅のハプニング体験や現地での心温まる体験をエッセイなどで読むたびに、私もこういう旅がしたい、と思っていた。
 
2018年の夏、ついに初めて一人っきりで異国に旅に出た(デンマークは叔父にお世話になったのでノーカン)。場所はポルトガル。スペインに友達といった後、私だけポルトガルに4日間ほど寄って帰る形での旅だった。
 
私は結構前もって旅の計画を立てがちなタイプだ。旅が終わった後に、こんなところもあったのか、知らなかった! と後悔したくないので、ガイドブック数冊を隅から隅まで何度も読み返す。SNSなどでもいろいろと情報収集をして、4日間のだいたいの動き方は事前に決めていった。普段なら、同行者は興味ない観光地などはお互いに相談の上で折り合いをつけざるを得ないところ、自分ひとりの好みだけで、周る場所を選べることはとても快適だと思った。
 
リスボンに着いて、ゲストハウスに荷物を置いたら早速中心地に向かう。どこに向かうでもなく、街中をうろうろするのはとても楽しい。かわいい建物の壁や何気ない小道を見つけるたびに立ち止まって写真を撮ったり、通りかかっていいなと思ったショップにふらっと入ったり。自分のペースでカフェでお茶をしたり、歴史的な建物を好きなだけ眺めていたり。修道院の入り口に並んでいるときに声をかけてくれた中国人の中年グループに話しかけられて写真を撮りあったのも、一人旅! って感じがして楽しかった。流れる時間の緩やかさにルンルンになりながらの街歩きは贅沢な時間だ。
 
ところが、夕ご飯を食べようとレストランに入ったとき、ふと楽しい気持ちが止まってしまった。なごやかに家族でご飯を食べている人たち、友達とワイワイお酒を飲む人たち、その中に一人でいるのは自分だけだ。孤独が際立って感じられた。うーん、寂しいかもしれない。しかし時々、店員さんたちが話しかけてきて、おすすめメニューや旅の予定、日本のことを聞いてくれたのでいつの間にか寂しさがまぎれ、一瞬感じた違和感はどこかへ。ホテルに戻ってからも、同室のインド人の女の子が話しかけてくれ、それなりに人と話して過ごすことができ、一瞬感じた寂しさはどこかへ消えたのだった。
 
次の日、私はアンブレラスカイプロジェクトで有名なアゲダを訪れた。2時間に一本しかない、落書きだらけのドローカル電車に乗ってたどり着いたのは、およそ日本の女子に有名な観光地とは思えないくらい、人のいない駅。地元の人と少しの観光客しかいない中、カラフルな傘がちりばめられた街中を歩くのは夢の中にいるような気分だった。この時期、アートフェスティバルが行われているので、壁やベンチにも様々なアートが置かれている。どこもかしこも写真映えするエリアだ。旅先で写真を撮るのが好きな身としては、天国のような地だと感じた。
でも、時々ふと寂しさを感じる時間が少しずつ増えていった。素敵な景色を見るたび、私の頭の中ではカワイイが爆発しそうなほどに飛び跳ねているのに、それを声に出して、伝えられる人が隣にいない。感情を、その景色がいかに素敵かを、同じ時間に共有できる人がいない。それは私にとって、すごくもったいなく感じられた。
旅の醍醐味とは、ただその地の素晴らしい景色を見ることではないのではないか。それを一緒に行った人と並んで眺めて、その時の感情を共有することこそが大事なことかもしれない、ふと気づいてしまったのだ。
大好きな友達、恋人、家族。一人で自由気ままな旅をするよりも、旅での時間を共有する旅が私はしたいのだ。それがはっきりと見えた。
 
さらに、自分が人との旅が好きだと最近自覚することがあった。
 
旅が終わってから、私はよく写真を見返す。コロナが流行し、旅に行けなくなってからは余計に過去の写真を見返すことが増えた。仕事の行き帰りに、ぼーっと写真を眺めて、旅の思い出に浸るのだ。
グーグルフォトを何気なくスクロールしているところ、目に留まる写真、旅を思い出す写真のほとんどが、景色だけが写る写真ではなく、一緒に行った人々の何気ない一瞬が写った写真だということに気づいた。それも、観光地の前でポーズを撮った写真ではなく、歩いている後ろ姿、半目の写真、笑いすぎてぶれている写真。ほかにどんなにきれいな景色を写真に収めていても、後から私に旅の情景を思い出させるのは、一緒に行ってくれた人だったのだ。
 
一人旅にあこがれていた私がいなくなったわけではない。今でも、同世代の女性たちが一人旅をしている様子は、すごくかっこよく見えて、やっぱり一人旅がしたいと思ってしまう。それでもきっと私は、これからもできるだけ大好きな人たちと旅に行きたいと思い続けるだろう。きれいな景色を一人で見て、その景色だけを納める時間より、景色を見た時の感情を一緒に共有し、後から思い出がブワっと浮かんでしまうような写真を撮る旅をこれからもたくさんしたいのだ。
 
 
 
 
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2021-06-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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