メディアグランプリ

スペシャルなひと時は、冷めたコーヒーとともに


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本和輝(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
その出会いは、私の中の世界観を、天地がひっくり返るほど変えてしまった。
いや、正確には見てはいたのに、見えていなかった世界がそこにあったというべきだろうか?
その出会いから、私の朝のひと時の過ごし方がすっかり変わってしまった。
 
きっかけは、約1年半前に近所にできた小さなコーヒーショップ。
大きな公園の横の閑静な住宅地にポツンと存在する小さなお店だ。公園の前を通る人からは、一風変わったおしゃれな外観がチラッと見え、ちょっと気になる店なのだ。私もそうやってふらりと立ち寄った一人だった。
 
その時は試しに豆を100g買ったが、家で淹れたコーヒーは可もなく不可もなくという印象だった。おそらく、ここ数年で近所にポツポツと増えてきている、自家焙煎のお店と代り映えしない印象だった。
 
そもそも、私にはコーヒーにそれほどの思い入れは無かった。家ではコーヒー豆を挽いて飲みはするものの、苦くて濃いか酸味があってスッキリか程度の大雑把な感覚で豆を選んでいた。カルディやスタバで買った豆で十分だったのだ。
 
その状況が一変したのは、そのお店のオーナーに淹れてもらったコーヒーをテイクアウトした時だった。
 
その一杯のコーヒーは、それまで私が経験したことの無い、未知の飲み物だったのだ。
口に含んだ時に感じる苦味はほとんどなく、酸味と甘みのバランスがとれ、鼻に抜ける豊かな香り。あきらかにコーヒーなのだが、どちらかというと上質な紅茶に近いかも知れない。そして、口の中にその余韻がずっと続く。まるで上質なワインを飲んだ時のようなのだ。
 
さらに驚きは続いた。テイクアウト用カップのコーヒーが冷めてくると、その味わいが変わって別な顔を出してくる。淹れたての時よりも余韻が長く、甘みも増したようだった。冷めていくコーヒーがどんどん美味しくなるなんて経験は今までなかった。
 
「なんだ? 私が買ったコーヒー豆って、こんなポテンシャルを持っていたのか?」
 
私はコーヒーの素晴らしい世界を知ることなく、今まで生きてきたのだ。そしてコーヒーの淹れ方もいいかげんでで、買ったコーヒー豆を台無しにしてしまったのだと気づいた。
 
その時、私がオーダーしたコーヒーは、品名は「エチオピア ハルスケ」
あまり耳にしない名前だと思う。
エチオピアハルスケの特徴は、ブルーベリーやラズベリーのようなフレーバーだと言われている。とても繊細な風味を出すのは難しく、浅煎りでローストする技術が問われるらしい。
私は、そんな知識をネットで検索してようやく手に入れることができた。これらの品質の高い香り高きコーヒー豆は、スペシャルティコーヒーというらしい。
 
この店では、他にも様々な銘柄のコーヒー豆を扱っている。
エチオピア アラモ
エチオピア ブク
コスタリカ ジャガーハニー
コロンビア サンアングスティン
グアテマラ ジャスミン
スペシャルティコーヒーは、扱う店が増えてきたとはいえ、まだまだマイナーな存在だ。その本当のすばらしさに触れた人も、さほど多くはないと思う。
 
まだ大した知識も経験もない私は、スペシャルティコーヒーの美味しい淹れ方について、どうやったらあの味が再現できるのかオーナーに詳しく聞いた。
まず、コーヒーを淹れる時に一番大切なのは、豆と水の分量だということだった。基本は豆の重さに対して、お湯は12-14倍。豆6gに対してお湯100gが目安だろうか。豆を挽くときも、ドリップでお湯を注ぐときも、料理用の計りの上で正確にグラム数を確認しながら行う。
次は、豆の挽き方だ。細かく挽くほど成分が出やすくなるが、その分不要な苦味、雑味も増すという。適度な粗挽きにすると、豆が持つ美味しい成分だけが抽出されやすいということだった。
あとはドリップの仕方だ。よく使われるペーパーフィルターによるドリップでは1分ほどの蒸らしの時間や、お湯を注ぐ回数、勢いなどの調節で味に変化が出てくるという。考慮すべきポイントがあまりにも多く、私はだんだん頭が混乱してきた。
そんな私に、オーナーは「クレバードリッパー」というドリッパーを勧めてくれた。これは、ドリッパーの底にシリコンの蓋がついていて、挽いた豆を入れたドリッパーにお湯をため込んで長時間浸しておく「ハイブリッド型」というタイプのものだ。スペシャルティコーヒーは、繊細な風味を出すのが難しいが、豆を粗挽きにして4-5分と長めの成分抽出をすれば、プロがドリップするレベルに近い安定した味が再現できるというのだ。
 
私は早速、そのドリッパーを買った。
ペーパーフィルターをセットし、いつもより粗挽きにした豆を20g放り込む。
そして、お湯を320cc注いで5分待つ。
クレバードリッパーをポットの上に載せると下部の蓋が開く。
そして、透明感のあるブラウンの液体が勢いよく流れ出す。
そして…… それを少し口に含んでみる。
 
「キタッ! 成功だ! 美味しい! お店のような風味が出ている!」
 
あの素晴らしい世界が、私の口の中に広がった。
それ以来、その店のコーヒー豆は私の毎日の生活に欠かせないものになってしまった。
 
その店が営業しているのは、土曜、日曜の週末だけ。毎週金曜日の夜には、LINEでお店からの案内がくる。今週末に売るコーヒー豆、3種類をお知らせするメッセージだ。どの豆も100gで1200~1400円ぐらいと、少々お高いのが難点だが、一週間のコーヒー代だと考えるとむしろリーズナブルだ。
私はすぐに返事を出して、お取り置きをお願いする。土曜の夕刻には販売予定数のほとんどが売約済みになってしまうからだ。
 
そして、この店に私が夢中になるのには、もう一つ理由がある。
それは、オーナーが常にローストの方法、温度や圧力の変化のさせ方、時間などを調整して、豆の特徴を上手に引き出すためのチャレンジをしていることだ。同じ銘柄の豆でもローストの仕方で随分味わいが変わってくる。毎週、違った味わいのコーヒーに出会えるのも、この店の楽しみなのだ。
 
もし、今までスペシャルティコーヒーを試して今一つだったという人が居たら、このようなタイプの店を探してみるとよい。とはいっても「スペシャルティコーヒー」で検索しても良さげなお店のウェブページが表示される事は稀だ。
探し方にはコツがあるのだ。
この記事に書いたコーヒー豆の名称でネット検索してみるとよい。
きっと、特徴のある素敵なお店が見つかるはずだ。
そして、興味を持ったら、ぜひその店のオーナーの淹れたコーヒーを試してもらいたいのだ。
そして、淹れたての香りや味わいだけでなく、冷めてしまったコーヒーもぜひ味わってみてもらいたい。スペシャルティコーヒーならではの味わいの奥深さは、冷めた時にこそ初めて知ることができると思うからだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-06-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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