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最期を看取ると、約束します。


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記事:ひより(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どんなことがあっても、この子の最期を看取るって、約束してください」
 
 
何やら物騒なこの言葉は、
「レンタネコ」という映画の台詞だ。
 
レンタル猫屋を営む女性と猫たちの、平和な日常を描いたストーリー。
ハラハラドキドキする場面は特に無く、心をほっこり温めてくれる映画だ。
冒頭の言葉は、レンタルしていた猫とどうしても離れ難くなり、
譲ってほしいと懇願するお客さんに対して、レンタル猫屋の女性が掛けた言葉。
観ている私まで、思わずドキッとしてしまった。
映画の持つ、柔らかな空気には似つかわしくない、鋭い響きだったから。
 
この女性は、別に腹を立てているようには見えなかった。
むしろ、お客さんと猫のご縁を結ぶことができて、満足気な表情だ。
だからここは、「大切にしてくださいね」とか、
「可愛がってあげてください」とか、もっと優しい言葉でいいんじゃないの?
この女性のキャラクター的にも、その方が合うじゃない。
そんなことを思いながら、呑気に観ていたような気がする。
 
 
「あんた、何も分かってないぞ!」
当時の自分に、そう喝を入れたい。
 
 
我が家に初めて猫がやってきたのは、映画を観た数か月後のことだ。
まだ両手に収まるほど小さい、メスのサバトラの子猫。
家族会議の結果、名前は「小梅」に決定した。
 
小梅ちゃんは、家に来たその日から、半年以上経った今でも
甘えん坊のやんちゃ盛りだ。
ゴロゴロ言いながら家族の後をついて回り、隙あらば背中をよじ登って来る。
ボール遊びが大好きで、投げてやると、それはもう嬉しそうにすっ飛んで行く。
飽きるまで何十回と付き合わされるので、人間の方はへとへとだ。
最近は、ボールをくわえて戻って来るようになった。
もしかして犬なんじゃないかと思う。
犬でも猫でも、とにかく私達家族にとって、
この可愛い末っ子の存在は大きな幸せだ。
 
 
小梅の存在が「可愛い猫」から「可愛い妹」に変わっていくにつれ、
私の中に、始めは無かったある感情が芽生えてきた。
恐怖と、後ろめたさである。
 
 
この子は、捨て猫だった。
 
 
寒空の下、冷たい段ボール箱の中で、
兄弟猫と3匹で身を寄せ合っていたらしい。
幸いなことに親切な方が拾って、病院に連れて行き、
ご友人と手分けして、3匹とも里親を探してくださったのだ。
 
小梅が膝に乗って甘えてくる度、
ごめんねと言いたくなってしまう。
一度、人間に裏切られたことを、この子は多分分かっていない。
私たちを信頼してくれて、ありがとうと思うと同時に
人間として少し、後ろめたさを感じてしまう。
 
捨てた人は、やむを得ない理由があったのだろうか。
どんな気持ちで、段ボール箱を置いたのだろうか。
辛い心境だったと推察するが、どうしても同情はできない。
 
 
もしもあの日、拾ってもらえなかったら。
もしも、里親探しを諦められていたら。
今、お腹を見せて眠っている可愛いこの子は、
保健所のガス室の中で、冷たくなっていたかもしれない。
抱きしめると、こんなにも温かいのに。
生きているのに。
 
想像しただけで、身体の芯から震え上がるような、
言葉にできない恐ろしさが込み上げてくる。
 
 
助けられなかった動物達の中には、
殺処分の直前まで抵抗し、暴れる子がいるという。
その理由は、本能的な危機感や恐怖だけではないような気がする。
もしかすると、飼い主が迎えに来てくれると信じて、
待っていたのではないだろうか。
大好きな人達がまさか、自分を捨てただなんて
思いもしなかったのではないか。
最期の、最期まで。
 
 
 
「どんなことがあっても、この子の最期を看取るって、約束してください」
 
今、私が彼女と同じ立場だったら、間違いなく同じことを言うだろう。
どうかこの子が、最期の瞬間まで、お腹を空かせることがありませんように。
痛い思いをしませんように。寂しい思いをしませんように。
あの言葉には、そんな祈りのような気持ちが込められているのだろう。
 
ペットを飼う事は、娯楽とは違う。
動物達から、たくさんの愛情と幸せをもらうと同時に、
数年にもわたって「命を育てる」という、重大な責任を負う事でもあるのだ。
この頃小梅は、はっとするくらい優しい目で、
こちらを見つめてくることがある。
私達飼い主は、この瞳に応えなければならない。
 
 
小梅ちゃん。
一人の無責任な人間が、生まれて間もないあなたを、
寒空の下に置き去りにしました。
どれほど心細かったかと思うと、同じ人間として、
心から申し訳ない気持ちで一杯です。
 
でも、それ以上に何人もの人間が、
あなたを助けたい一心で、手を尽くしてきました。
たくさんの人に愛されていることが、
どうかあなたに、伝わっていますように。
 
我が家に来てくれてありがとう。
これからもずっと、一緒にいてね。
 
 
 
 
***

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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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