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そういえば京都には2年間住んでいた ~闇鍋の街どす編~


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記事:Mizuho Yamamotoさま(ライティング・ゼミ)

4年制の福岡の大学に行かず、京都の短大を
選んだのには訳があった。紫式部や清少納言
と同じ感覚で、京都の街を体感したかったか
らだ。高校の古典の補助教材として使ってい
た「便覧」に載っていた京都の地図。例えば
「三条通」と言われたら、それが文字ではな
く風景で頭に浮かぶ。「鴨川を通って」と言
われたら、点と点ではなく面としてその場所
をイメージできる。風の匂いや、あたりを賑
わす植物や、寺院の建物が即座に目に浮かぶ
…… そんな自分を目指していた。

下宿を決めに行った時点で地名に圧倒される。
最寄りのバス停が「羅生門」、短大に続く坂
道を登れば秀吉のお墓である「豊国廟」。ち
ょっと歩けば「清水」に「祇園」。この歴史
の混在にすっかり魅せられてしまった。

6000人の女子大生が、毎朝夕に上り下りす
る女坂の隣には智積院というお寺があり、い
つも若い修行僧たちが庭を掃く凛々しい姿に
接していた。青光りのするそりたての頭で、
作務衣を着て、てきぱきと行動し修行を積ん
でいた。

しかし彼らも同じ十代で、休日には光る頭で
スケボーの練習をしていたりするから驚いた。

「お坊さんもスケボーしはるんや」

そのミスマッチが京都らしくてまた良かった。

そのころまだ走っていた路面電車や、バスに
は、お坊さんだけでなく、山伏も乗っていた。

やまぶし?

そうなんです。白装束にあの頭襟(ずきん)
と呼ばれる黒い烏帽子みたいなのをかぶり、
結袈裟(ゆいげさ)と呼ばれる、サスペンダ
ーにまっくろくろすけをつけたようなものを
身にまとい、ほら貝を下げて風呂敷包みを膝
に乗せ座席に腰掛けていらっしゃるんです。
初めての時は、思わず3度見しましたっけ。

もちろん京都人は、だれもびっくりせず普通
にしてはりました。

12月。単発のバイトでためた大枚をはたい
て南座の「顔見世」に行けば、すぐ前に舞妓
はんがお客さんに連れてもろて座ったはるし。

「きゃー」

下宿の先輩の悲鳴で目覚めて、階段を駆け下
りると土間に置かれた洗濯機のホースがやけ
に膨らんでいて。しかも、少しずつ動いてい
る。よく見るとホースはちゃんとその横にあ
って、直径10センチほどの白いホースは、
なんと! まさかの大蛇!!!

下宿のおばさんを呼ぶと、

「ああ、これなあ、時々出てきはるこのあた
りの守り神様え、そおっとしとおき」

怖くて2,3日は下宿生6人とも洗濯ができ
なかった。

三十三間堂の西隣に引っ越したら、早朝から

「おー、おーーー」

サッカーの応援ではあらしません。
2階のカーテンの隙間からそっと下をのぞく
と、ドアの前でお坊さんがお念仏唱えてはり
ました。

この声にもすぐ慣れて、なんやこんなんも京
都やなあと納得。

お隣にあった京都芸大の芸術学部の学長で哲
学者の梅原猛教授のファンだった私は、高校
時代にその著書に魅かれ、講義を受ける隙を
狙っていた。仲良しの芸大生のお兄ちゃんに
頼んで、講義に潜り込むことに成功。聴講生
のおばちゃまたちが最前列を陣取り、芸大生
はまばら。当の教授といえば自己陶酔型講義
で、90分の間ずっと宙を見つめて、唾を飛
ばしながら持論を展開なさるのだった。私も
前列でしっかりノートを取りながら講義を受
けた。一度だけ、教授の目がやけに私に向く
日があって、気づけば黒の胸のカットが深い
パーカーを着ているときだった。

おお!見えてはるんや!!

宙を見ながらも、興味ある所はしっかり押さ
える学者魂に感動した。

通っていたのは仏教系の女子大学で、「仏教
学」が必修だった。週に1度のその時間には、
袈裟を着た教授が合掌しながら大教室に入っ
て来て、

「さ、さ、みなさん立って立って!」

全員起立すると、教授が黒板の隅のボタンを
押す。なんと黒板が左右に開いて、中から金
色の仏像を配する祭壇がガーッと音を立てて
お出ましになる!

なんとエレクトリックな仏様の御登場!

初回はあまりの衝撃に、みんな口をポカンと
開けていた。

「仏教学」の講義まで、何度もこの大教室は
使っていたのだが、まさか、こんな仕掛けが
隠されていようとは…… 。

恐るべし、京都!

どんなに不思議なことが目の前で起こっても

「ここは京都どす」

と思えば、それもありかなと思えるところが
さすが千年の都である。

なんでもありの京都文化は、何が出るのかわ
からない闇鍋のよう。

そう、京都生活は結構スリルとサスペンスに
満ち溢れているのだ。

だから私は「京都天狼院書店」のオープンが
待ち遠しくてたまらない。これまでも、かな
り異彩を放つ天狼院書店であるが、これが京
都とコラボすることで、どう歴史の中に食い
込んで行けるか!

三浦和尚の御利益にあやかるために京都天狼
院参りをする日が楽しみだ。

 

***
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2016-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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