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ダークサイドはライティング・ゼミのせい!


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記事:菊野由美子さま (ライティング・ゼミ)

「すいまっしぇん……」とおじさんは言った。
そして、私はその言葉にハラハラと涙を流したのだった。

久しぶりの二日連休の午後。
午前中で掃除、片付け、トイレ掃除を終わらせて、いつも部屋干ししていた洗濯物も、今日は明るい日差しの下で干すことができた。
部屋の窓も大きく開け放って、心地いい風が部屋を通り過ぎるのが見える。昨晩の残り物でお昼でも食べようと準備していると、いつもBGMがわりにつけているテレビからは、お昼のワイドショーが流れていた。
その番組の一つのコーナーで、「TSUNAGU~言葉より伝わる思い~」というナレーターのアナウンスに、なんとなく心が向かった。
それは、二人のレポーターが町の商店街を歩き、道行く人に「最近手をつなぎましたか?」という質問をしていくのだ。

 レポーターは商店街で年配夫婦のターゲットを見つけては、「最近手をつなぎましたか?」と質問し、そのほとんどが、「つながないですよ~。恥ずかしいですから」と返してくる。そこで、「では、せっかくですからここで手をつないでみませんか?」と踏み込む。すると、最初は照れてつなごうとしない夫婦がほとんどだが、カメラマジックで気持ちがハイになっているのか、最終的には手をつないで、「これからもよろしく」なんてホノボノした人情味あふれるシーンが映し出される。
私はそれを見ながら、「まぁ、こういうのはよくある展開だよね~」と思いながらもチャンネルを変えずに観ていた。

そして最後のターゲットは、ハンバーガーの店先で、100円サンドイッチを売っている40代後半ぐらいの女性だった。
「これ全部100円ですか?」とレポーターは、まずサンドイッチに食いついた。そして、「せっかくですからいただいてみたいと思います」と言って、ほんとうに食いついて食レポを始めた。「100円を侮ることなかれ、具はしっかりしていて、かなりクオリティが高いですよ~」と販売している女性のご機嫌を取ったところで間髪入れずに踏み込む。「最近ご主人と手をつないでいますか?」
その質問に、この女性も例外なく「子供とはつなぎますけど、主人とはつなぎませんよ~」と左手を恥ずかしそうに振る。
レポーターは突っ込む。「今まで一度も繋いでないですか?」
女性は答える。「結婚当初のころはありましたけど、今はね~、ないですよ」
レポーターは、今までの成功体験から自信を持って続けた。「では、今からご主人と手をつなぎませんか?」
これもまたカメラマジックなのか、「え~~!」と恥ずかしがりながらも、女性はご主人を呼び出した。
キツネにつままれたような様子でお店にやってきたご主人。ちょっと強面で堅物そうな感じだ。
「これ、うまくいくのかな?」と私は一抹の不安を感じた。
レポーターとご主人が、ハンバーガー屋の店舗入り口付近に腰かけ、レポーターはその夫婦の話を引き出す。

  以前はこの商店街で代々続く金物店を営んでいたが、リーマンショックで取引先が次々に倒産したり、大手からは取引を撤退させられたりなどで、金物店としては食べていけなくなった。その金物店だった店舗を、今はハンバーガー屋として貸し出し、奥さんが店先でサンドイッチを販売し、ご主人は清掃会社で働いている。
ご主人がレポーターに話す様子の後ろで、奥さんが店先でサンドイッチを売っている姿が画面にズームアップされていく。

 ご主人が話し終わると、奥さんも隣に腰かけ、「もう、毎日が生きていくので必死だったからね~」とテーブルより少し先を見ているようなまなざしでポツリと言う。
そこでレポーターは先ほどの自信満々な口調ではなく、まるで天からの声のように夫婦に促した。

「今から、手を繋いで、ちょっと商店街を歩いてみませんか?」

私は温めかけていたお味噌汁に気が付き、火をいったん消しに行って、またすぐにテレビの前に戻った。

 あの強面な感じのご主人が、その天からの声に、まるで催眠術にかかったのではないかと思うようにスクッと立ち上がり、店舗の出口へと歩き出した。すると、今度は奥さんがキツネにつままれたような表情でご主人の後に続いた。

「じゃあ、繋いでみますか!」とご主人はロボットのようなぎこちない動きで奥さんに手を差し出した。ちょっと吹き出しながら奥さんも手を差し出し、手をつないで商店街をポツリ、ポツリと歩いて行く。カメラは二人の後姿だけとらえて、ここから先はレポーターもついて行かない。夫婦にはピンマイクが付けられており、二人の会話が聞こえてくる。

ご主人「まあね、あれから大変やったね」
奥さん「毎日必死やったもんね」
ご主人「なんかね、思うんよ。あんたが働かんでもいいように、収入上げること考えんとね。そうやけど、なんも才能ないからね……」その後の一言に、私の心は無防備になってしまった。

「すいまっしぇん」

奥さん「なんで、なんで謝ると? そんな、いいのに……」

二人が歩き終えて帰ってくると、奥さんもレポーターも泣いていた。笑いながら泣いていた。
この「すいまっしぇん」の小さな「つ」と「え」にご主人の照れと感謝と情けなさが凝縮されていて、なんとも切なく、でも、春の陽だまりのように温かく、奥さんだけでなく、会ったこともない私の心まで溶かしてしまったのだ。平凡な昼下がり、ワイドショーのワンコーナーを見て、ハラハラと涙が止まらない自分がいた。

いつもならここで、「あ~、いい話を聞いた」で終わるところだ。だけど、今の私はそこで終わらないのだ。
ここから、なんで私はおじさんの「すいまっしぇん」にこんなにも反応してしまったのか、自分を見つめる迷路にはまり込んでしまったのだ。

そう、それは、間違いなく「ライティング・ゼミ」のせい!!

天狼院での「ライティング・ゼミ」では、毎週記事を投稿することが宿題となっている。毎週1記事のペースなんて、今までの生活になかったチャレンジなので、かなり苦戦している。とにかくネタがほしい!とハイエナような自分になっていると、ゼミ中に学んだ一つが思い浮かんだ。

書くことは、日々の生活に起こるすべてのことがネタなる。

しかし、これがさらに私を苦しめることとなる。
どうして「すいまっしぇん」にこんなにも反応したのかを探ることは、自分自身と対話して、見つめて掘り下げることになる。そうすると、忘れかけていた過去の様々な出来事がフラッシュバックしてくるのだ。「すいまっしぇん」というフレーズからは、やはり、あまり思い出したくない過去が顔を出す。でも、反対に、その言葉のおかげで、私はすがすがしい気分の自分になっていたのだ。なぜ?

何日かけても答えが分からない。見つめれば見つめるほど苦しくなる……。
そんなとき、彼と電話で話していて、この商店街の夫婦のことを思い出し、話し始めた。するとまた、「すいまっしぇん」の下りで、泣きながら話している自分がいた。すると彼が笑いながら、

「今度、手をつなぎますか!」と言ったのだ。その瞬間、ものすごい勢いで、昔の自分が現れた。

 私は一度結婚に失敗している。付き合って5年目で結婚し、3年の結婚生活だった。思い返すと、その8年間で手を繋いだことが思い浮かばない。手を繋ぎたいな、と思ったことはあったが、なぜか、言い出せない自分がいたことだけは覚えている。離婚後は、自分の心の奥底で、「男の人って、本気で女性を愛するなんてことはないんじゃないかな?」という気持ちがずっと眠っていた。それが「書く」ことによって掘り起こされたのだ。

そして、「すいまっしぇん」というおじさんの言葉は、再度、男の人を「愛おしい」と思える自分に戻してくれた一言だったということに気が付いたのだ。

さらに、自分散策の迷路から救い上げてくれたのも、「今」の彼だった。

ライティング・ゼミでの毎週記事投稿がなければ、ワイドショーのワンコーナーに涙した自分に、こんなに向き合わなかっただろう。向き合ったおかげで、見ぬふりしていた自分のダークサイドが浮かび上がり、ヒビが入り、光が差した。だから、嬉しくて、すがすがしい気持ちの涙でもあったのだ。

これからも、「書く」ということで、「過去」と「今」が手をつなぎ、自分の歴史が癒されて、「未来」を紡いでいきたいと思うのだ。

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-04-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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