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メディアグランプリ

心臓でも心でもなく私の左胸が教えてくれたこと


田中のぞみさん

 

記事:のんさ~ん!(ライティング・ゼミ)

 

「え? いやいや、え??? 待って、やばいかもしらん、待って待って、どうしよ……」

夜中の十二時頃、私は一人、
パニック状態に陥りそうで、陥らなさそうで、陥りそうな、思考停止状態になりました。

少し恥ずかしいのですが、ズバリ言うと、私の左胸に大きなしこりのようなものがあったのです。着替えの途中、ふと左の胸に痒みを感じかいていたところ、ん? ここ、かたいぞ? こんなの前からあったっけ? というふうに自分の異変に気づきました。どう考えても何かがある。そんな時思い浮かんだのは、乳がんでした。ちょうどそのころ私の周りには、乳がんや重たい病気にかかっている人がいて、病気の話題を話す機会が多々ありました。だから、病気や健康に関して敏感にはなっていたのですが、まさかこんなタイミングで自分にも乳がんという女性にとって残酷な病気が本当に降りかかってくるとは思いもしませんでした。乳がんは遺伝だし、こんな若くに患う可能性は低いし、ほっといたら治るでしょ……いや、でも確実にあるのです。何か固いものが。もし本当に病気だったらどうしよう。手遅れになる前に早急に検査してもらったほうがいいに決まっている。と、と、とりあえず親に電話しなきゃ、ひとりでこの事実を抱えていたらどうにかなってしまいそうだ……息が浅くなり、どうしよ、どうしよ、と涙目になりながら恐怖心を癒してほしいという願いを込めて、必死に平静をたもつ努力をしながら電話をしました。母はこんな時間に、と驚きながらもどうしたと? と聞いてきました。私は胸がいっぱいパニック状態の中、ねぇ、お母さんやばいかもしらん……と言い、震える声でしこりがあることを何とか伝えました。母は、以前看護師だったこともあり、私の状態を事細かに何度も尋ねてきました。私は母の声をきくことができ、思いを誰かに知ってもらうことができ、さらに今後の動きをこうしなさい、と言われたことで何とか冷静さ取り戻しました。それでも、電話を切った後の一人で恐怖を抱え、言い表しようのない孤独感に襲われた眠れぬ夜を忘れることはできません。

次の日の朝、私は実家に向かいました。電車での移動中、様々な想いが頭の中をめぐります。もうすぐ、かねてからの願いであった海外渡航だったのに、それもできなくなるかもしれないし、やりたいことはたくさんあるのに、たくさんたくさんまだやりたくてやれてないことがあるのに、もうできないかもしれない。なんで、もっと自分の心に素直に生きてこなかったんだろう。思うままに行動せず、周りの目を気にして我慢なんかしてたんだろう。私の人生後悔ばっかりじゃないか……こらえる目から涙がにじみ出てきて止まりません。電車を降り、迎えに来てくれた母がそのまま病院に連れて行ってくれました。いつものようなテンションで話しかけてくれますが、顔は疲れ切っていて、何も話さない時間が多くなります。病院につき、たくさんの検査をしました。後は検査の結果を待つのみです。名前が呼ばれました。緊張しながら、結果を言われるであろう部屋に入ると……

「な~んにもありません。様々な検査をして、結果を見ましたが、な~んにもありませんでした。」

と言われ、あぁぁぁぁ、よかったという気持ちが深い呼吸として現れました。

「では、このしこりは何なのですか?」と次に浮かぶのは当然であろう質問をすると、いとも簡単に
「乳腺です」
と言われ、もう親子ともどもあきれ笑いしか出てきませんでした。

何はともあれ、よかったぁ、ほんとによかったぁ、と笑う私と
ほんとに心配して、お父さんと話しながら泣いたばい、夜も眠れんで、乳がんを経験した友人にも朝早くに相談して、ほんとに申し訳なかばい、ちゃんと早寝早起きしよる? ご飯はちゃんと食べよるね? もう実家に帰ってこんね……といつもの少しネガティブ目な母と車の中で泣きじゃくりました。

今、本当に思います。
あの時私はリアルに死を感じ、絶望的な感覚を味わった、と。本当に自分のこととして死に触れたのです。病気の主人公が亡くなる映画を観て同情して泣く感情とは全く違います。これほどにまで自分の人生に後悔の念を抱いたことはありません。家族にも申し訳ないという気持ちは浮かんだものの、やっぱり一番は「自分の人生」のことです。
こんな経験をしたものの、人間とは怖いもので、日常に戻ると、ほんとは死がいつも近くにいることを忘れ、ご飯を食べなかったり、夜更かしをしたり、不規則な生活をしてしまうし、思いのままに行動することができない臆病な自分にもなってしまうことがあります。誰もが、いつも死をリアルに感じていれば、みんなが健康に気を遣うだろうし、本気で自分の人生を生ききるだろうと思います。でも、命のタイムリミットを知らされていない人たちは、どんなに危険な体験をしたとしても、時間がたてばたつほど自分の人生が一度きりで、短いものだということを忘れてしまうのです。しかし、逆に言えば、危険な体験の記憶を薄れさせることができることで、人は安定して生きていけるとも言えます。心臓でも心でもなく私の左胸は、そういう人の習慣性の強さというものを、身をもって教えてくれました。だから、人間の本能ともいえる習慣性は人生にとって天使にも悪魔にもなりえます。そんな習慣と向き合っていく方法は、習慣を打ち破るような体験を大切にすることかもしれません。そしてそれは、他人の経験で得られるようなことではありません。人から聞いた話に共感したとしても、実感は生まれないからです。自分が体験しないとわからない。誘拐されたことのない人が、ニュースで、誘拐され殺害された女の子をかわいそうだ、なんて残酷だと思っても女の子の気持ちをわかるはずがないのと同じです。

私のこのエピソードも私にしか効果はありません。けれど、この記事を読んだ人が、習慣を打ち破る体験で落ち込んでしまった後に、自分にも人生を見直す機会が与えられたんだと前向きになってもらえたらいいな、と思うのです。

 

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2016-05-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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