メディアグランプリ

私恋



記事:谷合美香(ライティング・ゼミ)

つまり片思い。
ラブレターも書けないくらい密やかな恋心。
そのくせ、なんとしても伝えたい心。
でも、本人に伝えて「ごめんなさい」と言われたら立ち直れない心。

ときに、諦めなければならぬ恋もある。
そういう、伝えても叶わないとわかっている恋の場合。
友達でいるのはいいよねと、期待したりして。

実際、友達という距離は便利だ。
うまく友達を作れなかった私が便利に使えていたわけではないが、
恋人という距離よりは気ままに付き合えるポジションだ。

友人から恋人になれる日が来るかもしれないし、と甘い夢を見させてもくれる。
かえって、友人として見ているうちに、恋も醒めるかも知れないし。
友人て本当に便利。

そうはいってもやはり抱えているのは恋心。
恋した人に大事にされたい。
一生懸命、相手のことを思って、相手の喜びそうなことをして、気に入られたくて。

今は昔。
「アッシー」や「メッシー」と呼ばれた人々がいた。
女が呼びつければ、タクシー代わりに自分の車を出してくるから「アッシー(足)」。
女にタダメシを提供するから「メッシー(飯)」。
そこには純粋に下心があり、女もそれを知っているから利用している。
そういう需要と供給のバランスが取れていた時代もあった。

現在はそんな習慣もすたれてしまったので、
お金をかけられない分、本当に真心で相手の「好き」を得なければならない。
差し出すのは高価な品物ではない。プレゼント攻撃は功をなさない。

一つの答えとして、「謎」がものをいう武器になると考える。
付き合わなければ知ることのできない「答え」を、渇望するくらいの「謎」。

しかし疑心暗鬼になるほど「謎」を深くしてはいけない。
あくまでも「答え」を知りたい、好奇心を持たせる「謎」。

それは誕生日でもいいし血液型でもいい。年齢あてなんてのもいいかもしれない。
雑談から入って、核心に触れていけばいい。

それを一気に加速して、短期決戦にする必要はない。
会う機会を増やすために、謎はとっておいたほうがいい。
恋愛だけは長期計画でじっくり育んだ方がうまくいく。

やがて別れる関係だとしても、
恋をしている間から、恋が実って過ごした時間は幸せだった記憶だけ残している。
そんな恋がいいと思う。

謎のない恋もあろう。
お互いの手の内を知っている幼なじみのような二人には、謎が通用しない。
付き合いだけが長期に及び、恋としてはまるで時間を費やす方法を知らない。

打開するために、どちらかが均衡を破る。
お互いが均衡の崩れることを願っている場合、それは願ったり叶ったり。
うまく恋に移行できる。
片方が性急だった場合、気まずくなる。

この「気まずさ」は、すべての恋の始まり前夜に心配される、たった一つの障害。
「嫌われたらどうしよう」
「変なこと言って次の日から合わせる顔がない」
「もう我慢できないから言ってしまいたい、で、その後は?」

悲しいかな、自分にあるプライドで、叶う恋も叶えられない。
そこから一歩踏み出せば、それはそのまま、自分を差し出すための第一歩。

恋は五体投地に似ている。
自分を差し出すことでしか、真心を示せない。
自分を捨てているから、相手に拾ってもらわないと立ち上がることもできない。
そこまでむき出しの心を、体を、否定されるから「失恋」は立ち直れなくなるのだ。

何をする気にもなれなくて、まさに「心が壊れた」状態に陥る。
あの人を好きだった時間が無になって、まるで意味を成さなくなって、その喪失感で動くこともできない。

それでも、倒れっぱなしは嫌だ。
だから頑張って立ち上がる。
次の恋まで足取りは不確かでも。

それこそ、友人に支えられながらでも、じわりじわりと立ち上がる。
もう恋なんてしない、と心を閉じても。
いつかまた恋をして、そうして今度は叶える準備をしっかり作る。

軽い「謎」をいくつかと、もしかしたら、相手から「好き」を聞き出せるかもしれない、小さな真心を用意して。

 

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2016-06-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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