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私が難民になった日 

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記事:Mizuho Yamamotoさま(ライティング・ゼミ)

ガラガラガラ……
地下鉄の駅を降りて、東京駅に向かった。
羽田空港へ行く前に、丸の内OLの友人とラ
ンチをするために。

その前に本屋さんに寄って、昨日友人が薦め
てくれた本を買って。

丸の内北口にコインロッカーがあったはず。
えーっと、ん? 何これ?? まさか???

そうなのでした。
コインロッカーを閉鎖せよ!

伊勢志摩で行われるG7サミットの厳重警戒
で、サミット終了まで使えませんという貼紙
が、全コインロッカーに貼ってあったのでし
た。

まさかの展開に、このスーツケースを引きず
ってうろうろするの、私??? と焦りつつ
使えるロッカーはないかと頭をめぐらせ、向
こうから歩いてくる警戒中のおまわりさんに
聞きました。

「このあたりで使えるコインロッカーって、あ
りますか?」

「駅から離れたビルなら、使えるところがある
かもしれませんが…… 。なんせ、サミットで
すからねぇ」

かくして私は、コインロッカー難民になった
のでした。

ガラガラガラ……

あっ、デジャブ

そうでした! 暑い夏の南フランスはアビニ
ヨンで、ずっこけ三人組のマダ~ムたちは(
正確には1人だけうんと若い)やはり荷物を
預ける場所がなく、海外旅行ですから、より
大きなスーツケースを本当に引きずって石畳
の道を歩いたのでした。

歩いたことのある人ならわかるでしょう!

石畳でスーツケースを引きずることの無情を。

微妙な段差と石の継ぎ目で、コロコロタイヤ
があっち向きこっち向き。なかなかうまくつ
いて来てくれないのです。スーツケースが。

まぁ、歩きにくいといったらありません。そ
の上真夏で、カラッとはしていても気温はそ
こそこ高く、歩くと汗が出るのは当たり前。

このときは、厳重警戒ではなく、予定では列
車の駅にあるはずの「荷物預かり所」がなく
もちろんコインロッカーなんていうしゃれた
ものもないので、そうなってしまったのでし
た。

ガラガラガラ……

騒音公害かと思わせる音を立てて闊歩する日
本人のマダ~ムたち。
左右をきょろきょろしながら、ランチのため
のレストランを物色。

こういう時、脱落するのは暑がりの私。

「ねぇ、もうどこでもいいからレストランに
入ろうよ」

こういう時、根性のある二人は、

「だめだめ、ちゃんとよさそうな店を探さな
きゃ!」

「ビールが飲めたらどこでもいいんだけど」

と私。

「いやいや、ちゃんとした店を探すのよ」

ガラガラガラ……

「もうだめだぁ~、ビール!!!」

「なんかあそこよさそうじゃない?」

「うんうん、よさそう!」

「って、ちゃんと見てるの?」

庭のパラソルの下には木製のテーブルとイス、
素敵な室内での食事もOK

まずは、スーツケースを預けたいとお願いす
ると、室内できちんと預かってくれたのでし
た。

ああ、荷物のない解放感!
ガラガラ音の聞こえない静かな庭でのランチ
の何と美味しいこと。せっかくなので冷えた
シャンパンを頼み、ひととき夢の世界へ。

「橋の上で輪になって踊ろう♪」

アビニヨンと言えばこの歌。やっぱり橋まで
行きたくなった三人組。

「このスーツケース、預かってもらえますか
?」

「Oui」

快い返事をもらってご機嫌で、軽やかな足取
りで歩き始めました。

「橋の上で♪」

ずっと頭の中ではこの歌が流れ、

歴史の重みを感じる街並みを、橋の方へと歩
いてゆきました。

中世の街並みを歩いているようで、石畳と石
造りの家と。自由に歩ける嬉しさで軽やかに
ステップでも踏んでみたくなるような。

しかし、行けども行けども橋はなく、迫りく
るバスの乗車時刻。

仕方なく戻って、スーツケースを受け取り、

ガラガラガラ……

また石畳を歩く。

そんなことを思い出しながら一人で歩く東京
駅、八重洲口への通路。外に出るとアスファ
ルトの歩道は、石畳よりはまし。

そこに小旗を掲げたバスガイドさんに連れら
れた中学生の団体。
修学旅行生は、きょろきょろぺちゃくちゃと
我が物顔で歩いて行くのでした。

大規模校なのか、なかなか列が切れず、ずっ
と立ち止まって待っている大人たち。

ああこのスーツケースがなければ、あの列の
一瞬切れたところをすっと通り抜けるのに。
あな恨めし

書店に行っても、狭い通路をスーツケースが
通るのは気を遣うのでした。おちおち本も選
べないとぶつぶつ。

レジに行くのももたもたするし、

さて待ち合わせ場所のKITTEに向かうとし
ましょうか。

ガラガラガラ……

周りを見回すと、やけにガラガラ族が目立つ。
みんなそうなんだ、今日はコインロッカー難
民なんだ。

友人に会ってスーツケースを預けられなかっ
た話をして、

ガラガラガラ……

ランチのお店を探すのもおっくうで、

「ここにしよう!」

20歩ほど歩いて、即決!
サンドイッチとジュースで軽いランチ。
これもサミットのせいだとぼやきながら。

後日同じ時期に東京にいた友人が、

「このスーツケースあんたのじゃない?」

いきなり画像が送られてきて、

「サミットでコインロッカーが使えず、困っ
た人がロッカーそばに放置して大騒ぎになっ
てるってTVで言ってるけど!」

「確かに似てるスーツケースだったけど、そ
こまではしないよね、いくら私でも」

ちょっと口をとがらせて話す友人。

「でも、スーツケース置き去りにしたくなる
気持ち、わかる」

「コインロッカーって、ありがたいものだよ
ね!」

確かに、体験して初めてわかるコインロッカ
ーのありがたみ。

「やっぱり旅行は豪華客船よね!」

激しく同意した私でした。

 

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2016-06-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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