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メディアグランプリ

私は物語を読まない。


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記事:宮澤輝さま(ライティング・ゼミ)

私は物語を観ない。
いや、観ることができない、と言った方がいいのかもしれない。
友人が熱心に勧めてくる小説もアニメもマンガも私は目を通すことはない。だが、目を通さなくとも友人たちとはその話でしっかり語ることができる。できてしまうのだ。

ウィキペディアというのは魔法のページだ。私にはその使い方が分かっている。そこに書かれた集約物を丸飲みにすればどんな話も全て自分の中に入っていく。花言葉・元素・偉人・天文などの情報だって一発だ。その中に小説やアニメのあらすじだって存在する。キャラクターのあらましや彼らの声優まで書かれている。これだけで十分だ。その少ない情報だけで私の頭の中はその物語が展開していくのだ。彼らが住む世界も、彼らが笑いながら住む場所も、怒りに震える顔も。なにもかもが手に取るように分かる。それらを駆使して話せばまず大抵の人と私は語り合うことができるのだ。

この方法を作り出したのは小学生時代。私はその時中学受験のまっただ中だった。学校を出ればすぐ親の車に拾われて塾へ送り届けられ、塾が終われば待っているのは風呂と布団。娯楽を楽しむ時間はこれっぽっちもなかったのだ。
しかし他の連中はそうではない。トレンディドラマやマンガの話で持ちきりだ。何も知らない私はその楽しげな話の中に入ることができない。それらについての情報を何も持っていないのだ。笑い合うこともできないどころか理解することすら困難だ。楽しいはずの休み時間をたった一人で過ごさなければならない。笑い合う声をBGMにしながら。
寂しい! 一人にしないで! こんなのはイヤだ! 

こうして話の中に入るために編み出したのが「あらすじから全てを観る」という私の能力だった。ドラマやアニメ、マンガに目を通す時間を短縮することで僅かな休憩時間を有効活用して勉強時間を死守しながら娯楽を楽しむことができるのだ。
これで勝てる! あの笑い合う中に入れる! 
そう確信して飛び込むとみんなは手を広げて受け入れてくれた。娯楽を共有することがこんなにも心躍るものだったとは! みんなと笑い合う時間はとてつもなく楽しくて嬉しくて舞い上がってしまう。

だが、その楽しさは長くは続かなかった。
知らないでしょ。
誰かが放つその一言で楽しかったこと全てが切り捨てられる。何故か途中でばれるのだ。私が全くその物語を観ていない、ということを。笑っていた顔は全て険しい顔になり、そしてみんな口を揃えて言うのだ。
ちゃんと観ろ、と。
観れない。観れるわけない! 観てる暇があったら話したい!
時間短縮の裏技は今でも重宝している。仕事に追われる身としては一つの物語をじっくり読み解くよりも沢山の概要を詰め込んだ方が話のネタに事欠かない。
どうしてそう言うの? 時間が足りないでしょ! 
そう叫んでも返ってくる答えは全て一緒だった。

楽しめるはずなのに楽しめない。そんなフラストレーションに押し潰されそうになっていた時、見かねた親友がポツリと提案した。
「騙されたと思って一緒に観よ」
正月、親友宅に拘束されて差し出された一本のアニメ映画。ファインディング・ニモ。あまりにも有名な迷子の魚の物語。概要は知ってるし、これをモチーフにしたアトラクションで亀に質問できる栄誉に預かったこともある。わざわざ今日のために借りてきた、などと言われたら今更観なくともとは口が裂けても言える訳もなく。渋々ながらも最後まで観きった後、私はこう思った。
やっぱ観なきゃだめだ、と。
これを観てから行くべきだったのだ。あのアトラクションも。夢の国も。
ちゃんと観た人にしか分からないものは確実にあるのだ。
色鮮やかに泳ぐ魚たちも、潮の香りが漂ってきそうな海の風景も、何故あのキャラクターがアトラクション内でそう言ったかも。
やはり付け焼き刃では本当に楽しむことはできないのだ。
どんなに背伸びをしてもしっかりと作られた刀には遠く及ばないのだから。

 

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2016-06-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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