メディアグランプリ

月の写真とともに、「月が綺麗ですね」とメッセージを送った結果


月の写真

記事:櫻井 るみさま(ライティング・ゼミ)

ふと見上げた空には、まだ高く上っていない月がいた。
大きく、丸く、周りの雲を月光で照らしている様は、一瞬、不気味にも妖しくも見える。

そういえば、今夜は満月だった。

空や月、虹など偶然目にした自然現象をSNSにアップする人は多い。
特に満月。
何かというと満月の写真をアップし、満月のパワーがどうとか、エネルギーがこうとかいうスピリチュアルな記事が満載になる。

でも、そんな記事も実は嫌いじゃない。
満月のパワーとかエネルギーとかはよく分からないけど、大きく煌々と光っている月は普通に綺麗だと思うし、その丸さや光が上手く写真に撮れたらSNSにアップしてみんなに見てもらいたいと思う。
日本人は昔からお月様を見て歌を詠んだり、団子を食べたり、何かしら感じてきた人種なのだから、やたらと月の写真をアップしたがるのも日本人のDNAのなせる業なのかもしれない。

そんな私は最近、満月を見ると、思い出す言葉がある。

「月が綺麗ですね」

そう、夏目漱石のアレだ。
読書好きな人、あるいは夏目漱石好きの人なら知っているであろう、漱石のエピソード。

漱石が英語教師をしていたとき、生徒が「I love you」を「我君を愛す」と訳したのを聞き、「日本人はそんなことを言わない。月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と言ったとか言わなかったとかいうエピソード。

私は夏目漱石も日本文学もそんなに読んではいないので、このエピソードは最近まで知らなかった。
けれど、知ったときには「明治の男の不器用な愛情表現……!」と胸がキュンとした。

それ以来、満月を見ると漱石の「月が綺麗ですね」を思い出す。

だから、彼に撮ったばかりの月の写真と「月が綺麗ですね」のメッセージを送ったのは、そんな私の乙女心と、たまたまタイミングよく彼からLINEが着たのと、月の写真が綺麗に撮れたのと、いろんなものが合致した結果である。

満月が綺麗だったから写真を撮った。
Facebookにアップしようとしたら、彼からLINEが着た。
だから、最初に彼に送った。

簡単に言えば、それだけのこと……、なはずなんだけどね。

彼とは職場の隣の席で、彼が担当している仕事を一部、私が引継ぐ関係もあって、多分、いちばん良く話す人。
私の方が年上であるにもかかわらず、しょっちゅうからかわれ、イジられている。
帰るタイミングが合えば駅まで一緒に帰ることもある。
一緒に帰れれば楽しいし、帰れなければ少し寂しい。

そういえば先日、「小中高の夏休みの課題図書でいちばん印象に残ったものは?」と聞いたところ、「こころ」と返ってきた。
だからといって、彼が漱石のエピソードを知っているとは限らない。
いやむしろ、知らないと思う。
夏目漱石の作品を一つ読んだくらいで、そんな細かいエピソードまで知っている人はまずいない。
彼は普段「活字を読むヒマがない」というような人だし、ヒマがあってもあまり読書をするタイプではなさそうだから余計だ。

でも……、だからこそ、送った後はドキドキした。

彼が、「隠れ漱石メッセージ」に気付くか気付かないか。
返事は来るのか来ないのか。
メッセージを既読スルーされることなんてしょっちゅうだし、彼の方からメッセージが来ることもそんなにない。
9割がた私の方からメッセージを送り、そして既読スルーされて終わる。
返事が来ないのはちょっと寂しいけど、「SNSは面倒くさいからやらない、LINEは連絡用」というような彼のことだから、読んでくれるだけでいいと思っていた。
だから今回も既読スルーされても気にしないし、もし返事が着たら着たで、どんな答えなのかが楽しみだった。

願わくば、「隠れ漱石メッセージ」に気付いてほしい……、そんな願いを込めて……。

写真を送ってから2時間後。
先程、彼から返事が着た。

「おー。全然気付かなかったわー」

やっぱりね……。
どうやら、彼は私の「隠れ漱石メッセージ」には気付かなかったらしい。

そうだよねー……という落胆半分、変なふうに受け取られなくて良かった……という安堵半分。
でも、気付かれなかったら気付かれなかったで、なんか悔しい。
もう少しだけ、たたみ掛けたくなる。

だから、「【夏目漱石】【月が綺麗ですね】でググって」と送ってみた。

既読にはなった。
返事はまだ、ない。

彼は気付いただろうか??

既読になってから1時間。
返事はまだ、ない。

この時間まで返事がなければ、今日はもう返事は来ない。

彼はググッただろうか……??
私のメッセージの意味が分かっただろうか?

ああ、でも鈍いから気付かなさそうだ。
いつもは気にならない既読スルーが、今日に限っては気になってしまう。

明日、職場でどんな顔して会おうかな……。
今夜は眠れなさそう。

眠くなるまで、満月でも眺めていようか……。

 

***
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