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メディアグランプリ

その苦手意識が、あなたをスーパーサイヤ人にする、かもしれない



 

記事:Yushi Akimoto(ライティング・ゼミ)

 

「お前さあ、ストレス耐性高いよね?」

 

研修の成績がすこぶる良かった同期がさらりと言ったそのセリフに、僕は自分の耳を疑った。ストレス耐性が高い? 美容院で「染めますか?」と聞かれるほどのこの若白髪が目に入らないのか? 初対面で「苦労しているんですね」と同情してくれる人も少なくない。その通り、子どもの頃から些細なことからのストレスに苛まれているのだ。それなのに。

 

「まさか、いくらなんでもそれはな……」

 

咄嗟に否定しようとしたが、ふと、何かが引っ掛かった。

 

「いや、確かに、割とストレスに強いのかもしれない」

 

そのとき、僕の脳裏には、とある有名なマンガの絵が浮かんでいた。ベジータがセル第二形態を圧倒する力を獲得し、悟飯をスーパーサイヤ人へと目覚めさせた、あの過酷な環境を。そう、「精神と時の部屋」だ。

 

 

僕はいわゆる「コミュ障」だという自己認識を持っていた。つまり、なにかにつけて過剰にストレスを感じるタイプだと思っていた。まず、気軽に人に話しかけることがなかなかできない。職場では、仲の良い同期であっても、話しかける前にいちいちセリフを頭の中で整えないとうまく喋り出せない。相手がよほど暇そうにでもしていない限り、話しかけるだけでちょっとした勇気がいる。

 

もちろんプライベートでも同様だ。送ったメールに返信がないと気に病む。いや、そもそも、返信が来ないのが不安だから、メールを送ること自体が怖い。誘いを断られると凹むから、自分から遊びに誘うことはほとんどない。誘われたら誘われたで「社交辞令かもしれないのに、参加するなんて言っていいのか……」といらぬ心配をしてしまう。

 

買い物や食事の際に店員に話しかけるのも一仕事になる。スタバで無事オーダーが通ると、心の中でほっとため息をついてしまう。道がわからなくてもなかなか人に聞く度胸が湧かない。ダメだ、列挙するときりがない。僕はあらゆるコミュニケーションで常にストレスを感じている……。

 

 

そうなのだ。「常にストレスを感じている」のだ。あたかも地球の10倍の重力を受け続けているかのように。

 

 

ただでさえ現代はストレス社会と言われている。メンタルの問題で休職したり退職したりする人は数知れず。実際、同期の中でもリタイアする人は後を絶たなかった。しかし、僕は毎日のように朝から終電まで働き、時折土日も出勤して、会社に泊まることだってあったが、仕事を楽しんでいられた。孤立無援になったり、上司に激詰めされたりするような場面に遭遇することもなかった。ストレスに過敏な自分でも、このストレス社会の中でなんとかやっていけそうだとぼんやり思っていた。

 

シンプルな話だ。「常にストレスを感じている」、つまり常人よりも感じているストレスは多いはずなのだから、それだけストレスへの耐久力は高まり、許容量が大きくなる。常に“筋トレ”をしている状態に近いとも言える。

 

ストレスを感じることが多いということは、ストレスへの対処法を訓練する機会に恵まれていたということでもある。人に話しかけるのに勇気がいるのは、相手の機嫌を損ねたり無下に突き放されるような対応をされたりするのを極度に恐れているからだ。だから、僕は相手が喜びそうな話題をなるべく持って行くことを心掛けている。加えて、相手の状況をよく見る習性を自然と身に付けた。忙しそうだったり、そもそも機嫌が悪そうだったりするならば、その人に話しかけるのは一旦諦めて、別のToDoを消化する。

 

「そんなことをしていたら、いつも不機嫌な相手にはいつまで経っても話しかけられないじゃないか」、そんなふうに思う人もいるかもしれない。しかし、僕は自分がどんなことにストレスをより感じるのかよくわかっている。伊達にストレスフルな人生を送っていないのだ。不機嫌な相手に不機嫌な対応をされることと、仕事の要件を伝えずにいることで不機嫌な相手や上司・先輩に後で怒られることと、どちらが自分にとってストレスなのか。僕は怒られるのが大嫌いだ。周りの目を気にする性質だから、仕事ができない人間だと思われるのもできる限り避けたい。だからいつもより勇気を多めに使う覚悟を持ち、不機嫌な相手に立ち向かう方を選ぶ。すべてはストレスを最小化するためだ。

 

過剰なストレスと日々付き合うことが、かえってストレスに対応するクセを定着させることにつながった。余計なストレスを回避しようとするその習慣は、業務上のToDoを消化していくこと、人間関係を円滑にしていくことに直結していた。周囲とのコミュニケーションがうまく行き、仕事が順調に進めば、ストレスは最小限になる。よくよく考えれば当たり前の話なのかもしれないが、そんなことを無意識にやっていたようだ。

 

これに気づいたときは目から鱗が落ちる心地がした。些細なコミュニケーションであっても勇気を振り絞るような状態だった僕は、ずっとコミュニケーションが苦手だと思っていた。同期のふとした一言がきっかけで、僕は、苦手意識があることを自分なりに克服しようとしており、さらにその成果が仕事の場面で多少なりとも生かされていることに初めて気が付くことができた。おかげで、わずかながらでも自分のコミュニケーションに自信を持つことができるようになっている。ストレスとの付き合い方も上達してきたように感じる。

 

小さな頃から植え付けられていた苦手意識。学校生活では人間関係にしんどさを感じていた。どう振る舞えばみんなのように円滑なコミュニケーションができるかわからなかった。今でも些細なことで躊躇したり悩んだりすることはある。苦しみは尽きない。でも、結果的にその状況が自分を鍛えてくれた。これまで僕よりもストレスを感じずに過ごしてきた人よりも、もしかしたらこれからのストレス社会をうまく生きていく術を知っているかもしれないと思うと、なんだか不思議な気分になる。「コミュ障」なのに。

 

 

この話があらゆる人に通用するのかはわからない。仮に自分がスーパーサイヤ人になれるまでの爆発的成長を遂げたとしても、その過程が辛く苦しいことには変わらない。それを一様に「良い」と言い切ることは僕にはできない。

 

でも、もし、すでにこれまで苦しさやしんどさを味わってきたという人がいたら、少し立ち止まって考えてみる価値はあるのかもしれない。今、自分は「精神と時の部屋」の中にいるかもしれない、と。さて、あなたは、今、どんな力を鍛えているだろうか?

 
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2016-06-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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