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メディアグランプリ

やっと登り始めた大人の階段



記事:山口 美佳(ライティング・ゼミ)

若い頃から葬儀も婚儀も苦手な私は、どうしても外せない仕事の予定が入っているとホッとしたものだ。

しかし、郷里にUターンして15年、すっかりいい年にもなり、立場上出ないわけにはいかない式が増えてきた。嫌々出席しているなんてとても失礼な話なのだが、どうしても苦手なのだ。当日の朝、仮病でも使ってしまおうか? と思ってしまったことさえある。時には起き上がれないほどの高熱が出ればいいといい年をして願っている自分にあきれてしまう。これは自分が喪主であろうが花嫁であろうが変わらなかった。

そして、最近私は少し珍しい経験をした。
6月14日に私の母が亡くなり、後を追うように17日に母のすぐ上の伯母が逝ってしまったのだ。
母も伯母も80代、長く闘病もしていたので親戚一同想定内の出来事ではあったが、さすがに病院への頻繁なお見舞いの末の、週に2件の見送りに皆の悲しみも疲れも倍増した。その分私にとっては心身ともに疲れ切って、力が抜けた状態で経験した葬儀は今までとは少し違うものに感じた。

今回の1週間を経て、私は3年前の父の葬儀も含め、今まで参列したお通夜やお葬式などを回想した。
親戚で集まると必ず誰かに喧嘩を仕掛けるので皆に煙たがられていたおじさんが、意外にもとてもきれいな所作でお焼香してる姿。些細な事で20年以上縁の切れていた兄妹が親の訃報で再会し、言葉少なに兄妹らしく会話する姿。もう忘れかけていた人が訃報を伝え聞き、長く疎遠にしていた事を悔いる表情で駆けつけて来る姿。騒がしいだけだと思っていた人が、伯母の火葬場での待ち時間に振舞うお茶請けにと美味しいパンをわざわざ持参し振舞ってくれる姿。親戚付き合いをしていなかった親のお陰で会ったことの無かった人々に、それまでの空白の時間を埋めようと丁寧に話しかけて回る故人の息子たちの姿。目を離せない美しさを放っていたいつもは普通のお姉さんの喪服姿など……さまざまな印象的場面を思い出した。

葬儀の参列者の姿には本来の人柄や意外な一面が顕れる場面が散らばっている。なるほど映画にお葬式の場面が多いことも納得できる。お葬式は有意義なものだ……
私はやっと「お葬式嫌い」を克服できたような気がする。

そもそもどうして葬儀や婚儀がそんなに苦手なのだろう? と考えてみた
1人っ子だったこともあり、人と足並を揃える必要がなく育ったせいもあるのだろうが、基本的に意味を感じない集まりに時間を費やすことにとてつもない虚しさを感じるからだと思う。葬儀は亡くなった人を見送る為のものだというきちんとした意味があるといわれても、死んじゃったらきっとそんなことはどうでもよく意味が無いはす、皆に無駄な時間を費やさせるぐらいなら私のお葬式もしてもらいたくないと思っていた。全く未熟な思考である。
しかし今回遂に両親を亡くし、何も考える余裕がなくただ流れにまかせ二つの葬儀に出席したことでお葬式は残された者同士が亡くなった人を弔うという理由で集まり、それぞれが今後楽しく助け合って生きていく為にお互いの関係を修復したり、改めて関係を構築するきっかけとなるとても良い機会であると気づいた。

そしてもう一つの苦手である婚儀についても、私は花嫁という立場だった時でさえ、相手方の両親の意向にそって我慢して終わらせただけの記憶しかない。そして祝う側としても、普段は出来ない恰好ができると自分に言い聞かせ奮い立たせてどうにか行った独身の20代、結婚式の裏側も知りつつ余裕をもって温かく祝福しようと行ったが過剰な演出に辟易してしまった既婚者であった30代……
過去に出席した様々な結婚式ももったいなく思えてきた。
また独身に戻った40代である今、次の結婚式はちょっと切なさも感じながら力を抜いて大人の心で楽しめる気がしてきた。祝う側としても、花嫁としても(笑)……

私ほどお葬式や結婚式が苦手な人はそうそういないと思うが、誰しも多かれ少なかれ苦手な場面というものがあると思う。今増えている職場の飲み会や社員旅行が嫌な人も、力を抜いて身を任せて。ただ眺めるだけのつもりで挑んでみると、それまで見えなかったその場の存在意義や楽しみ方が見えてくるのではないかと思う。無駄な時間を無理に過ごす必要はないが、どんな場面でも何かしらの意義や楽しさがある場合がほとんどだと今は思う。

どんな場面にも自然になじみ、力まず居ることのできる人に憧れていたような気がする。
それができない自分に気づけば気づくほど私は抗っていたのだろう。

お葬式嫌いの克服をきっかけに、今の私はどんな場面も楽しめる気がしている。
私が次に結婚式を心から楽しめれば、やっと大人になれた証だろう。

そしてほんの2週間前まで自分の葬儀もしてほしくなかった私だったが、今はおこがましくも、残った友人知人が私の死を媒体として新しい関係を築き、その後の生活に少しでも楽しみを増やしてもらえる様なお葬式の計画を立てておこうと思い始めている。

 

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2016-07-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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