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やめられない!とまらない!のは病気かストレスかひまつぶし


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記事:辰巳葉子(ライティング・ゼミ)

「あのこ白玉みたい!」
って、いわれたのは、一緒に暮らして7年が過ぎた愛犬ヴィーと散歩の途中。

真っ白でふわふわした頭をまん丸く整えた頭の形がヴィーさんのトレードマークで、どちらかというとゆっくり歩くのが好きなマイペースな犬だ。
というか私のペースで歩くのが嫌いといっていいくらい、ときどき反抗して地面に坐りこむ。
ご機嫌をとったり励ましたりして、なんとか歩くように仕向けて、ちっとも運動にならない小1時間の散歩が日課になっている。

ヴィーさんはちょっとしたツンデレ犬で、なかなか他の犬とは仲良くしないし、犬連れの人間にも愛想がない。近づいてくる子供は嫌いだし、できることならば散歩は一人でしたいタイプなんだけれど、犬好きの奥様を見つけるアンテナはものすごく優れている。

「この人だっ!!」そう思うと、信じられないくらいの笑顔でカラダを躍らせて近づいていき、
「これでもかっ!!」ってくらいの愛嬌を振りまくる。

そのときのふりふりするお尻をみてると、あまりにもギャップがありすぎてこちらが照れるくらいツンツンデレデレな犬に成長してしまったなぁと思う。

数日前の散歩から帰ってきてから、左前足の肉球部分が気になって仕方がないらしく激しく舐めて、それが止まらない。
ピチャピチャどこかで水漏れしているような音が舐めている間ずっと聞こえている。

「犬は舐めて傷を治すんだ」って聞いたことがあったから、肉球チェックしてみたけれど見た目の傷は見つからなかった。

それでもますますずっと舐めているので、1件目の動物病院でかゆみ止めの薬をもらってきた。

「犬が足をなめるわけ」で検索してみると、病気かストレスかひまつぶしという結果で、飲んだ薬の効果は全くでないままだった。

薬が切れたのでもうちょっといい病院に連れて行こうと思い、設備の整った2件目の病院に行ってみたけれど、ペロペロ舐める原因はわからない。

3日間だけ飲む強めの薬と7日間飲み続けるかゆみ止めと胃薬を処方されて帰ってきた。

その3日間だけ飲む強めの薬を飲みきった夜、ヴィーさんの様子が変わり動悸が激しくなった。

おとといの夜のことだ。

ゼーゼーハァハァと激しく荒々しい呼吸がずっと続く。
鼻息もどんどん激しくなってくるし、全身で必死に息をしている。
苦しそうな息なのに、まだ左前足の肉球をしつこくなめ続ける。
やめられないし、とめられない。

今まで見たことがない激しい息使いは全然止まらないから、夜通し激しい貧乏ゆすりをする人と一緒にベッドに横になっている感じがずっとつづく。

まったく眠らないし、眠れない。

浅くて激しい呼吸と荒々しい鼻息とで、横になったり、座ったりで場所をかえて、ちっとも落ち着きかない。

「明日の朝になったら病院行こうね」と話しかけると、自分の前足を舐めるのをやめて、私の手の指を舐めはじめた。 すごく丁寧に、指と指の間はとくに念入りに舐める。

「おいしい?」
「ヴィーちゃん、 こんなにしっかり舐めてくれるのね」
「ありがと。 もういいから、寝よ」

といってはみたけれど、状態はどんどんひどくなっていくように思えた。

いちばん近い病院が開く時間は朝9時。
ながいながい夜が続く。

今できることはないか? とまたネットで検索してみると、

①疲れやすく散歩で坐りこむ
②ゼーゼー咳がでる、呼吸が苦しそう
③食欲が落ちる
って、全部に当てはまるじゃないか……。

こんな症状は心臓病であり、肺疾患を伴っていて、体力が弱っていると急に逝ってしまうこともあるって書いてある。

最悪の事態までのシミュレーションはとても簡単にできてしまった。

……そんな急に? 急すぎる。 いやだ! だめだ!

ヴィーさんに何かあったら泣く。いや、その前に完全にパニクっていて吐きそうだ。

まずトイレに行ってこよう!

深呼吸しよう!

抱きしめたり、さすったり、話しかけた。
できるだけ笑顔で、不安が伝わらないように、全然おもしろくないジョークもいってみた。

 

ながいながい夜が続く。 
でもやっとあさが来た!

家に1番近い3件目の病院に連れて行く。

問診票に記入して診察を待っているときも、ゼーゼーハァハァな息づかいは止まらない。
シュッ! シュッ! シュッ! シュッ! シュッ! シュッ! シュッ! シュッ!っと、小さい蒸気機関車みたいな鼓動だ。

1件目の病院でもらった薬と2件目でもらった強い薬と胃薬とかゆみ止めの話をして、今までのいきさつを話す。

わたしという人間とヴィーという犬は、少々の興奮を抱えて徹夜して新しい病院に臨んでしまった。

そして3件目の病院で診察結果が出た。

出された診断は……

「この犬種にしては肉づきがいいほうです」

「えっ?」

3件めの先生の診断は、「肥っている」だった。

「肥っている」から、息が荒かったのか……。
「肥っている」から、暑くて眠れなかったのか……。

ふいに出された結果を前にして、カラダから力が抜けていく……
想像した最悪の事態は、それほど深刻ではなかったんだ。

「心臓の音も肺の音も正常です」
「この子の場合、足をなめるのは新しいアソビ。楽しくてクセになって止められなくなっているんでしょう」
「舐めすぎて赤くなっているから、化膿しないように2件めの病院でもらった薬は飲み切りましょう」

はい……。
3件目の先生の解釈で、昨夜から続いた私の妄想はどこか遠くに吹き飛ばされていった。
思い込みのストーリーから大きく外れて、カラダがふにゃふにゃになりそうだ。

今日はエアコンのタイマーをつけて家をでた。
部屋の温度が上がりすぎないように、カーテンをきちんと閉めて太陽を家にいれないようにした。
わたしはもともとできるだけエアコンを使いたくないエコを言い訳にした節約家なんだけど、今日のエアコンには理由がある。

「この犬種にしては肉づきがいいほうです」

3件目の先生の言葉がわたしの混乱を鎮めてくれた。
まずはダイエットからはじめてみようかな。
 

***
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2016-07-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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