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わたしの夢は、年に一度七夕の夜、ディズニーランドにも勝てる「ろうそく」を、大人達とつくること。


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記事:おはな(ライティング・ゼミ)

こども達の憧れ、ディズニーランド。
訪れた人みんなに魔法をかけ、夢の世界へと誘う。
そんな唯一無二の夢の国だと、今までずっと思っていた。
なのに、ふと心に浮かんだことがある。

「ディズニーランドを越えてみたい。
年に一度、一晩だけ、ディズニーランドからこどもの姿を消してみたい」

わたしは、何を言っているんだ。
突拍子もない思いつきに飲み込まれ、真っ暗闇の現実に戻される。
それでもなぜか、わたしの心の中では、小さな灯りがゆらゆらと揺れ始めていた。

 

 

「竹に短冊 七夕まつり 大いに祝お ろうそく一本ちょうだいな」

七夕が近づいてくると、こどもたちの歌う元気な声が、頭の中に浮かんでくる。
わたしの今住む東京の街では、それは幻の声。
七夕の夜にあの歌声が聞こえないのは、本当に淋しい。

わたしの故郷、北海道の函館市やその近郊には、七夕に独特の風習がある。
地域によって歌詞は違うようだが、浴衣を着たこども達が、放課後夕方から夜にかけて、歌を歌いながら家々を回っていく。

よく例に出されるのは、「日本版ハロウィン」

近所の仲良しの子数人がグループになり、近所や学校区を中心に、次々と訪ねて歩く。
やることはシンプルだ。
訪れた家の玄関先で、「たけーにたーんざーく たーなばったまっつり おーいにいわおっ ろーそーくいっぽん ちょーーだーーいなっ」と大きな声で歌う。
すると、その家の人が「はいはい、待ってね。順番だよ」と言いながら、玄関先までやってきて、こどもたちの持っている袋に、お菓子を入れてくれる。

昔は歌の通り「ろうそく」を配っていたらしい。わたしがこどもだった20数年前にも、時々小さなろうそくをくれる家があった。わたしと兄が集めてきたろうそくを、祖母は仏壇の引き出しに入れ、母は防災用にとどこかに閉まっていた。
それでもやはり、こども心に「ろうそく」は、ガッカリだった。
自分で「ろうそくちょうだい!」と歌っているのに、中には露骨に嫌がる子もいたという。
こどもの気持ちの変化と共に、段々と「ろうそく」は、「お菓子」に変わっていった。

うまい棒、ゼリー、飴などなど。
一つ数十円のお菓子を各家庭でたっぷり用意し、訪れるこどもたちに配る。

一晩で回る家の数は、小さな子でも十から数十軒。高学年の男の子にもなれば、100軒近く回る子も出てくる。
こどもたちは次々と歌い歩き、家に帰るころには、特大ビニール袋の持ち手が切れてしまいそうな程、ずっしり詰め込んだ大量のお菓子を集めている。
まるで、浴衣を着た小さなサンタクロースが、おもちゃいっぱいの袋を担いで町中を歩いているみたいに。

わたしも小学生の頃は、家にある一番大きなビニール袋や布の袋に2つ分。
詰め込むだけ詰め込んだお菓子を引きずりながら持ち帰り、母を呆れさせていた。

集めたお菓子は少しずつ計画的に食べていくと、夏休み中お菓子に困ることはない。
冬が来る前に、アリが必死で食料を集めて巣にこもるように、函館のこどもたちは自分たちのお菓子を七夕の晩に必死で集めるのだ。

北海道の短い夏休みは約25日間。頑張れば一晩で夏を楽しむお菓子を集められてしまう。
まさに、こどもにとっては夢の夜、魔法の時間だった。

こどもだけではない。大人たちもこの時間を楽しみにしている。
たくさんのこどもに来てほしい家庭は、工夫した「ろうそく」を用意する。
他よりもちょっといいお菓子を用意したり、種類を揃えて好きなものを選ばせてみたり。
消しゴムをくれたり、くじ引きをする家の噂は、すぐにこども達の間で広まっていく。
小さなアリ達は、運びきれないご馳走の在り処を、仲間達にあっという間に伝達するのだ。

各家庭だけではない。この日は町中のお店も趣向を凝らして、自分たちならではの「ろうそく」を用意する。
それほど大きくない街の、さらに郊外の住宅地に住んでいたわたしの家の近所に、あまり大きなお店はなかった。それでも、かまぼこ屋さんがくれるカレー味のかまぼこや、たこ焼き屋さんがくれるアツアツのタコ焼きを、親にねだらずとも、歌うだけでもらえてしまうことにワクワクした。
市街地出身の子に話を聞くと、ドーナツがもらえたり、ノートや石鹸、日用品がもらえたり、豪華な「ろうそく」を配るお店には、列が絶えなかったという。
そんなお店には、後日親たちがお礼にお買い物にやってくる。
こどもたちを喜ばせるお店は、街の人気店として、続いている。

そんな、こども達が「歌」と引き換えに「ろうそく」を集める函館の七夕の夜。
街に元気な歌声と笑い声が響き渡る、こどもにとっても、大人にとっても夢の時間だった。

そこでふと考える。
もし七夕まつりの行事が、池袋でも実現できたら。
いや、ちょっと飛躍しすぎだ。
もし、天狼院書店が函館にあり、七夕の夜にこども達を迎えるとしたら、
「ろうそく一本ちょうだいな」と歌うこども達に、何を用意するんだろうか。

定番のうまい棒? ゼリー?
いやいや。それじゃあ、こどもに「あの本屋だめだ」と屈辱のレッテルを貼られてしまう。

七夕にお子様限定の「ライティング・ゼミ」を開催?
一晩限り、お子様限定の「READING LIFE」を配布?
たくさんのこども達が、親に手を引かれて、恐る恐るあの階段を上るのだろうか。
もしかすると、幻の一品として、全国のマニアが欲しがるかもしれない。

「天狼院スタッフの心を動かす作文を書いてきたら、店内にある好きな本を一冊プレゼント」
これはまた魅力的だ。
いやいや。赤字になるにも程がある。一晩だけでお店が潰れかねない。

でも、『未来記憶』の著者であり、天狼院書店主催の『読み方を変えれば人生が変わる! 起業家兼ベストセラー作家・池田貴将氏が教えるなりたい自分になる読書術』講師の池田貴将さんは、こんなことを言っていた。

現在地から目的地を眺めるとあまりにも遠く感じてしまう。だけど、願いが叶った状態から現在地を見ると、より近く感じるし、叶える方法も見えてくる。

例えば「こどもが本を好きになり、大人になっても本と暮らし続ける」、そんな生き方が浸透していることを、理想の世界とする。
そこから考えると、こども達に、どうやって本を好きになってもらうかが肝心だ。
もしも、こどもが本屋さんの中にあるたくさんの本の中から、どうしても欲しい1冊を手にする経験ができたら、その子と本との付き合い方は、大きく変わるんじゃないだろうか。
これだ!と思う1冊を、5歳から毎年七夕の夜に手に入れ続けたら、15歳になるその子の本棚には、これからの人生を後押ししてくれる大切な10冊が並んでいる。

そうすれば、その子達が大人になった頃には、コンビニでお菓子を買う、みたいに、
本を買うことが今よりもっと当たり前になっているかもしれない。
そんな未来を想定すれば、書店や出版社や、いろんな企業が協力して、こどもに1年に1冊プレゼントをすることも、意味のある一歩になるかもしれない。

なんて妄想をさらに広げてみる。
もしも、年に一度七夕の夜、日本中の大人達が、こどもに喜んでもらうための「ろうそく」を真剣に考え、本気で用意して待っていたら、どんなに楽しいだろうか。

「ろうそく」は多くのこども達に配れるように、低コストで手軽でなければならない。
何か物を作るなら、たくさんの物を持ち帰れるように、小さくて軽い必要がある。
体験を提供するなら、短時間でできなければならない。
もしくは、その体験で一晩使ってもいいと思わせるような、魅力的なものでなければ、ならない。
これまでの経験と知識を総動員し、こどもが「お菓子」よりももらって嬉しい、「ろうそく」をそれぞれの家庭やお店、企業が用意する。そしてそんな大人が待っている家やお店を、こども達が限られた時間で回って歩く。

そんな街があったら、そこはこども達にとって、魔法のかかった夢の国に変わる。
その日だけは、ディズニーランドに行くよりも、自分の住むその街にいることが、楽しいと思えるかもしれない。それが全国に広まれば、年に一度、七夕の夜だけは、ディズニーランドからこどもが消えてしまうかもしれない。

もしそんな日が来たら、天下のディズニーランドが黙っているわけがない。本気の本気を出してくるだろう。こどもも大人も、日本全国一人残さず、すべての人の心を掴んで離さないとびっきりの魔法を用意するはずだ。そんな日を想像しただけでも鳥肌が立つほど、ワクワクする。

地方の大人達も、都会の大人達も。
下町の工場で働く大人達や、テレビ局で働く大人達。
日本中の大人が本気で愛情を込めて、こどもの笑顔の為に「ろうそく」を用意する。
こども達は、あちこちから「ろうそく」を集めていく。
そしてある時、強い思いを胸に、その一本に火を灯す。
大人になったら、自分もこんな「ろうそく」を作りたい、と。

「竹に短冊七夕まつり 大いに祝お ろうそく一本ちょうだいな」
以前より規模が縮小しつつあるとは言え、今年の七夕の夜も、こどもたちは元気に函館の街中をを歌いながら、「ろうそく」をもらって回っているだろう。

わたしはこれから先、どんな「ろうそく」を作っていけるだろうか。
今年は久しぶりに、短冊に願い事を、書いてみようかな。

 

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2016-07-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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