メディアグランプリ

1995年 エヴァンゲリオンのTV放映は朝だった


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記事:ダモイ コジロー(ライティング・ゼミ)

 

タイトルを見て、

「まさか、自分は知らないけど、吊りでしょう」と思っているのは、おそらく若い方。

 

「いやいや、俺は夕方に見たぞ、嘘つくなよ」というのは東京、大阪の方が多いはず。

 

そして、「そうだよね、朝だったよね」と共感してくれた方。

画面上の時刻表示がうっとおしかったですよね。生で見ましたか?録画でしたか?

 

これからの話は21年前の真実の物語です。

 

放映開始時、僕は当時高校一年生でタイトルすら知りませんでした。ほとんどの友達もそうだったと思います。

それが、最新映画の「Q」は興行収入52.6億円。エヴァスマホ、エヴァ新幹線、はたまた月に槍をさしに行くなんてプロジェクトも。エヴァは今でも話題に事欠かない、近代アニメの金字塔的存在になっています。

 

僕がエヴァを知ったきっかけは、ある友達からの録画依頼でした。

友達がおもしろいアニメが始まるけど、受信できないから録画してほしいと頼まれたんです。

 

なぜ友達がこんなことを頼んだかというと、僕の住んでいる田舎では、ほとんどの地域ではテレビ愛知が受信できなかったんです。うちの実家はたまたまテレビ愛知が見られる地域でした。

(なんだかレトロな話ですね。こう思うとアニメに公衆電話が出てきたりするのも納得です。)

 

という訳で、友達から録画をお願いされて、僕は引き受けました。

テレビ愛知での放映時間は木曜の朝7時35分から8時35分。

なんでこんな朝にアニメやってるんだ、誰も見ないだろうと思ったのを覚えています。

 

僕は朝7時40分には家を出て自転車で通っていたので、

予約録画をして、翌日の金曜に友達にビデオカセットを渡していました。

友達は登校するとすぐに寄ってきて、うれしそうにカセットひったくっていきました。僕はロボットとかそんなに好きではなかったので、はじめは見ていませんでした。でも、友達の様子を見て話のネタになるかと試しに一回見てみたんです。

まさか、それがエヴァ歴21年のはじまりの日になるとは……

 

まずオープニングの歌から目が釘付け。

主題歌の残酷な天使のテーゼに合わせて、映像が次々に入れ替わる演出。

フラッシュカットという技法で、1秒以下の細かいタイミングで映像が替わります。

見始めて2,3回目、僕は謎解きの鍵があるんじゃないかとビデオを一時停止して

コマ送りで全カットを調べたりしました。

きっと他にもそうした方、いるんじゃないでしょうか。僕はそれをしてた時に姉に見つかって、とても冷ややかな視線をもらった記憶があります……

 

週追う毎に僕はエヴァにのめりこみ、ついには一日が待ち切れず木曜日の朝に生で見るようになりました。

「もう学校に行かないと……」とあせりながらエヴァを見て、終わった瞬間にビデオを抜き取り、自転車で猛ダッシュ。それを毎週繰り返しました。

8時すぎなんかに家を出たら筋肉痛になるくらい自転車をこいでも、8割は始業に間に合いません。思えば、学生生活を通してあんなに遅刻をしたのは、あの高校1年の1月から3月だけです。

 

一度、木曜日の朝に今日は見ずに時間通り学校に行こうかと思ったことがありました。前の週にこっぴどく先生に遅刻を怒られましたんです。でも、そうはいきませんでした。どうしても続きが気になるんです。激辛カレーを食べて唇がヒリヒリしてるのに、やっぱり次の一口を食べてしまうような感覚。これ見たら、今日も自転車全力疾走だし、遅刻したらまた先生に怒られるし。と分かっていても、ついつい見てしまうのです。

 

特にシリーズ後半は謎が謎を呼ぶ展開。先がまったく予想できず、実はストーリーも半分も分からない。というのも、設定の大部分は隠されていて視聴者はそれを予想するしかないんです。まだ若くて純粋だった僕は、自分が見過ごしたのかなと思ってビデオを何度も見返すほどでした。

 

こうした設定をあえて隠して視聴者をひきずりこんでいく、というアニメ手法もエヴァが生み出したものなんじゃないでしょうか。それまでも、ある程度設定を隠すというのはあったと思うんですが、あそこまで分からないだらけというのは、なかったと思います。

それでも、「分からないからもういいや」とならないのが不思議ですよね。昼休みには図書館に通って辞書で「エヴァンゲリオン(福音)」とか「使途」とかを調べたりもしました。勉強でもこういう気持ちになれると楽なんですが……、世の中うまくいかないものです。

 

そうして、迎えた最終回。数々の謎が解かれるだろうと、前の夜から期待して布団の中でワクワクした気持ちを抑えきれず長い夜を過ごしました。朝は7時半からテレビの前で正座です。

 

30分後。8時5分になってもビデオ録画を止められませんでした。なぜって、まだ続きがあるんじゃないかと思う気持ちを止められなったからです。テレビはCMが流れていて、頭ではもう終わったと分かっていたんですが、動けなかったんです。俺はまだカレーライス全部食べ終わってないぞと心の中心で叫びました。

 

詳細は、まだ見られていない方のお楽しみにとっておきますが、いろんな意味で衝撃的な最終回でした。たぶん、これほど記憶に残る最終回はないでしょう。

ちなみに、もやもやは1997年の映画版で解消されることになるので、その点はご安心ください。

 

こうして、僕は、高校生活を「エヴァの先が待ち遠しい」という激辛スパイスと共に過ごしました。

 

でも、それは終わりではなかったんです。

 

2007年から新たな映画版が公開。2009年、2012年と3作目まで公開されており、謎が深まる構造はテレビ版と同じ。4作目はいつ公開されるかも決まっていない。そもそも、3作で終わるといってたのに終わらないし、本当に次で終わるのか?という疑問もぬぐえません。

 

「エヴァの先が待ち遠しい」スパイスとは、あと3年、いや10年くらいはつきあう覚悟が必要そうです。しかし、高校生の時を思いだせば、それもお安いもの。朝から毎週激辛カレーを食べ続けた経験を潜り抜けてきた訳ですから。そしてなにより、今も本当に次を楽しみにしているから。

 

この苦行は、制作側からの一種の挑戦状みたいなものなのでしょうか。「お前たち、どれくらい耐えられるんだ?」みたいな。

挑戦状とあっては、やっぱり逃げちゃダメ……ですよね。

 

 

 

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2016-07-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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