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GREEのクイズになっている私の名前について


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記事:築地 海露穂さま(ライティング・ゼミ)

「ツキジ ヒロコ様ですね」
「いえ。ヒロ、ホです。ホ!」

何度このやり取りをしたことだろう。私の名前は大抵一度で伝わらない。口頭で名乗るとヒロコさんになってしまうことがほとんどだ。ヒロホなんて珍しくて聞きなれない上に、ヒロコさんがメジャーなので仕方ない。

ところが、さらにやっかいなことに文字で書いても読んでもらえない。

「うーん、ミロホ。違うか、カロホ?」 

小学校五年生のとき担任になったY先生は、ゲームが大好きだった。クラス担任になった初日、名簿を初めて読み上げていたとき私の名前の読み方がわからずに点呼が止まった。どうやら名簿にはフリガナがふられていないらしい。Y先生はプレイヤーの血が騒いだのか、先生に当てさせてくれとクイズでも出されたようにはしゃいでいた。

「カイロホ!」
「ウロホ!」

粘ること五回。すべて不正解だった先生はすっかりテンションが低がり、なんて読むのかなと静かにつぶやいた。自分名前のせいで先生が落ち込んでしまったと私も落ち込む。珍名のせいでとんだ新学期初日となった。

先生が読めないのも仕方がない。海という字をヒと読むのは当て字なのだ。本来ヒとは読まない。勘がいいと当たるくらいのものなのだ。まともに読めるはずがない。

そんな私の名前をクイズにしたいのは先生だけではなかったらしい。試しに「GREE 海露穂」と検索してみてほしい。グリキューなるサイトが上位に表れる。クリックすると、私の名前の読み方がクイズのお題として出題されているページが開く。

このサイトは、ある日興味本位で自分の名前を検索したときにみつけたものだ。知らない間に自分の名前がネット上でクイズデビューしているではないか。家族を招集して一緒に読む。

クイズに挑戦してくれた人はウミホタルかなと尋ねている。おしい。ホだけ当たりだよ。出題者はクラスメイトらしいのだが、いったい誰なのか。人の名前を勝手にネタにするとはまったく失礼な。

鼻を鳴らしながら最後までやりとりを読む。するとなんと、下の方で私のことと親のことを頭がいいとほめてくれているではないか。おやまあと、一家そろって手のひらがくるりと返る。どなたか存じませぬが、この場をおかりしてお礼を申し上げます。どうもありがとう。

私の名前を文字で見た人は、大抵「露」の字に反応する。そして二パターンの質問をしてくれる。まずひとつ目は、「親御さんヤンキーなの?」である。夜露死苦からとった露かと思われるのだ。そんな名前はいやだ。両親ともに堅気ですので、ご安心ください。

二つ目は「親御さんロシア人なの?」である。私は顔の彫りが深いせいでよくミクスチャーなのかと聞かれる。残念ながら違います。両親は鹿児島県の奄美大島出身です。これはロシア人ではなく、ネイティブアマミヤンの顔でございます。海の外ですが一応日本人の設定です。

自己紹介すると、たまに優しい人が私の名前を見て心配してくれる。こんなに画数があったら、書くのが大変ではないですかといってくれるのだ。おっしゃる通り、本当に大変です。名前だけで45画もあるので、書くのが面倒くさくて仕方ない。苗字を含めると67画もあるフルネームを小さい頃からずっと頑張って書き続けてきたのだ。

あれは忘れもしない小学校三年生のとき。テストの最中K先生が私の回答用紙をのぞき込んで言った。

「もう三年生なのだから、名前は漢字で書きなさい」

見つかってしまった。泣く泣く消しゴムでひらがなのフルネームを消し、漢字で書き直す。小学校のテストは名前を先に書く時間をもらえなかった。回答用紙に名前を記入する時間もテスト時間に含まれるのだ。隣のクラスメイトが一問解き終わっているときに、私はまだ名前を書いている。不公平でしかない。ひらがなで書いたっていいではないか。面倒な名前のおかげで、私は世の中が理不尽であることを早いうちから学んだ。

時間がかかるが、私はこの画数を気に入っていた。名前をつけてくれたのは父だ。父は私が将来絶対に幸せになれるようにと、最強の名前を考えてくれたらしかった。

父は幼い私に、45画の名前はどんな苗字とも相性がいいから、誰と結婚しても幸せになれるのだと教えてくれた。私は嬉しくて、外国の人と結婚してもいいのかと尋ねた。父、絶句。国外からお婿さんが来るかもとは考えていなかったらしい。確認してよかった。どうやらローマ字の苗字は効果があるかあやしいので、日本人と結婚しようとこのとき決めた。

名前を書くたびに、大変だけど幸せな結婚ができるなら我慢するかと思えた。が、昨年念願の結婚をしたところ、あっという間に失敗に終わった。これまでの努力!

ご利益がないとわかった以上、もはや迷惑な長さでしかない。しかも、迷惑なのは長さだけではない。

私の名前について一番聞かれて困るのが由来である。どういう意味なのかと尋ねられると自分でも困ってしまう。私の名前の由来は、スケールが壮大なのだ。

またしても小学生のとき、自分の名前について話しましょうと宿題が出た。父に由来を尋ねてみるとまるで意味がわからないことをいわれた。ジュゲムのような説明をそのまま丸暗記して発表する。

「すべての命の源である海のエッセンスを凝縮した露が育ちやがて稲穂のように人々の恵みとなるように、という意味です」

クラスが静まり返る。私も黙って席に座った。

私は自分の名前が嫌いじゃない。ネタは尽きないし、出会った人から一度聞いたら忘れないねと言ってもらえる。他の人と同じでない、自分だけが持っているたった一つのもの。今となっては、他界した父が残した遺産のひとつでもある。

結婚と離婚を経験し、私は苗字が変わったり戻ったりすることを学んだ。新しくなるときはいいが、戻るときが切ない。新しい苗字で呼んでくれていた人に、築地に戻りましたというときのあの気まずい空気。

もう変わらないと思うが、万に一つの確立でまた嫁にいくかもしれない。

そのときのために、お声がけくださるときはどうぞ下の名前でお呼びください。

ヒロホ

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-08-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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