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失恋したから髪切るわけじゃないからね。


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るみさん

記事:櫻井 るみさま(ライティング・ゼミ)

 

髪を切った。

 

意外にバッサリ。

予想以上にバッサリ。

 

前回の美容院から3ヶ月ほど経っている。

なんだか美容院に行くたびに、短くなっているような気がする。

 

まあ、切りに行っているのだから当然なんだけれども。

 

 

 

思えば、ここ1年ほどで私の髪は急激に短くなった。

去年のGWくらいまでの私のヘアスタイルは黒髪ロングだった…… といえば、きっとこの1年くらいで知り合った人達は驚くだろう。

前から私を知っている人は、今の髪型を見たらきっと驚くだろう。

 

去年のGWくらいまでは肩甲骨くらいまであった。

ロングだ。ロン毛だ。

それをバッサリ切って、あごのラインくらいで揃えたいわゆる「ボブ」を1年くらい。

 

 

そして先日。

 

 

私のヘアスタイルは完璧にショートになった。

自分でもビックリだ。

 

 

が、いかにも「切りましたー!」なバッサリ感が逆に気持ちいい。

これなら、口に出すか出さないかは別として、髪を切ったことに気付いてもらえるだろう。

 

 

やっぱり、髪を切ったら……というか、これくらいの分かりやすい変化には気付いてもらいたい。

 

 

 

 

そんな思いで出勤した。

 

社内に入って、さぞかし驚くだろうと思いきや、皆さん見事なスルースキル。

気付いてはいる。

気付いてはいるけど、「ああ、切ったのね」とまるで「ああ、雨降ってきたのね」とでもいうかのような興味の無さ。

むしろ、雨の方がまだ興味持たれてる。

 

 

社会人だものね。

いい大人だものね。

髪を切ったくらいでいちいち騒がないよね……。

 

 

 

ほんの少しだけがっかりしながら仕事をしていると、「髪、切ったよね?」と話しかけられた。

 

 

おじさんに。

 

 

でも、声をかけてくれたのは嬉しかったのでそのまま少し話す。

「予想以上に短くなってて驚きましたー」

「バッサリいったよねー。 何かあったのかと思ったよー」

 

 

何故女性が髪をバッサリ切ると「何かあった」という発想になるのだろう??

 

 

その場合の髪を切るという行為は決してポジティブなものではない。

良く言われるのが「失恋」だ。

おじさんが発した「何かあった」の「何か」も失恋ではないにしても、いい意味での「何か」

ではない。

思わず髪を切りたくなるほど、衝撃的なこと。嫌なこと。悪いこと。

確かに、髪を切ったことで今まで溜まっていたモヤモヤやイライラがすっきりした気はする。

でもそれは「髪を切ったから」であって、「イライラ・モヤモヤするから髪を切ろう」ではない。

 

ドラマやマンガでそんな有名なシーンでもあったのだろうか?

そして、今でも「女性が髪を切ることは特別なこと」だと思っているのだろうか?

 

 

 

 

 

でも、いつも思う。

 

 

 

実際、そんな人いるの??

 

 

 

あくまで私の場合はだけど、「髪を切る」ということにそういったものは重ねない。

切るにしろ伸ばすにしろ、それは他人のためではない。

自分のために伸ばすし、自分のために切る。

今回は切りたかったから、切った。

ただそれだけだ。

 

 

 

とはいえ、例えば自分と付き合っていたときはロングヘアだった彼女が、別れたらバッサリショートになっていたのを見たら、男性としては言いようもない罪悪感に襲われるんだろうなぁ。

たとえ彼女が「いやー、元彼が伸ばせ伸ばせ言うから伸ばしてたけど、本当は切りたくてしょうがなかったんだよねー。 やっと切れてスッキリしたわー!」と思っていたとしても。

 

 

 

 

だから、そんな心配そうな労わるような目で見るのはやめてほしいかな、うん。

切りたかったから切っただけで、心配されるようなことは何にもないから!

大丈夫だから!

 

 

 

 

その後、何人か同僚の女性には「切ったんだー」「似合ってるよー」と声をかけてもらったけど、一番気付いてほしい人からはいまだに声をかけてもらわれず……。

 

きっと気付いてはいるはず。

だって、隣にいるんだもの。

一番近くにいて気付かないってことはないでしょう……。

 

 

出勤直後のドキドキワクワクした気持ちは、週明けのばたばたした社内の空気によって、いつもどおりの日常にだんだんと溶けていってしまった。

 

 

 

 

それが起こったのは、もはや髪のことなど忘れ、とりあえず残っている仕事を片付けて早く家に帰ってライティング・ゼミの記事を書かなきゃ……と焦っていた時だった。

 

 

「何で、髪切ったんですか?」

 

 

不意に隣の席から聞こえた。

彼の方に顔を向けると、彼がこっちを見ていた。

 

「え……。 切りたかったから」

っていうか「何で」って何?

理由なんかないし。

 

「聞いてないです」

言ってないし。

 

「……気付いてたんですね」

「いや、そりゃ気付くでしょう」

 

 

どうやら、彼は彼なりにずっと私に声をかける機会を窺っていたらしい。

お互い今日は仕事が忙しくて、結局終業するまで雑談するタイミングもなかったから、こんな時間になってしまったようだ。

 

 

 

 

 

これこれ!

これを待ってたんだよー!

 

 

 

 

そう。

女が髪を切る理由。

私に限って言えば、「失恋」なんかじゃない。

むしろその逆。

もちろん切りたかったから切ったんだけど、あわよくばそれをネタに話したかったからだよ。

だってこんなに短くなったのに、気付かないわけないもん。

良かった。スルーされずにすんだ。

 

 

 

 

でも……、

 

 

 

まだ聞いてない言葉があるなー。

「似合ってる」とか、

「可愛い」とか、

「キレイになった」とか。

 

直接的に表現するのはちょっと……っていうなら

「いいんじゃないですか」とかさ。

 

 

 

そういう言葉、聞きたいんだけど……??

 

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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