メディアグランプリ

別れは突然おとずれる


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記事:スピードウェイ(ライティング・ゼミ)

 

出逢いがあれば別れもあることはわかっているのに、いつも別れは突然おとずれる。

 

美人と評判の女の子が僕と同じ大学のクラスにいました。

いつか彼女と仲良くなれたらいいなと僕は淡い恋心を抱いていました。

しかし、そんな彼女を周りが放っておくはずもなく、しばらくして誰かと付き合うことになったという噂を耳にしました。どうやらサークルの先輩と付き合うことになったようです。クラスの男と付き合ったのなら嫉妬しますが、先輩なら仕方ないと諦めました。でも本当は悔しかったのです。

結局その子と仲良くなることもなく卒業することになりました。

 

彼女と再会したのは卒業後のクラスの同窓会でした。

僕はすぐに彼女の姿を探しました。同窓会に参加した目的は彼女に会うためだったのです。

社会人になっていた彼女はさらに綺麗になっていました。

そして幸運にも席は彼女の隣でした。初めて彼女とゆっくり話すことができたのです。

至福の時を過ごしました。

この時間がずっと続いてくれればいいのに。

しかし夢のような時間はすぐに終わってしまいました。

この再会をここで終わらせてしまうのか。

このチャンスを逃したら、もう二度と会えないかもしれない。

勇気を出すなら今しかありませんでした。

僕は彼女にもう一度会えないかと思い切って尋ねました。

すると彼女は何のためらいもなくいいよと応えてくれました。

そしてお互いに連絡先を交換して帰りました。

 

何故だかわかりませんが、あの時の僕は何でもうまくいく気がしました。

彼女と食事をしては夜遅くまで語りあい、何度目かの夜にずっと好きだったと、彼女を一目見た時からずっと好きだったと告白しました。

彼女は驚いた様子でしたが、すぐに嬉しいと笑顔で応えてくれました。

こうして幸せな日々が始まりました。何もかもがうまくいって怖いくらいでしたが、本当に幸せな日々でした。

 

僕はその幸せが永遠に続くと思っていました。

しかし、別れは突然おとずれたのです。

再会して1年が経過した頃、彼女が突然僕に話しかけて来ました。

 

「ごめんね。もう無理なの」

 

僕は言葉の意味を理解できませんでした。

でもいつものケンカの時と様子が違うことはわかりました。もしかしたら振られるのかもしれないという考えが脳裏をかすめました。

僕は理由を尋ねました。僕を嫌いになったのか、誰か他に好きな人でもできたのかと。

彼女はそうではないと言いました。そうではないけれど、将来のことを考えると、もう僕と一緒にいれないと言うのです。

僕はひどく困惑しました。

僕は彼女と一緒にいるだけで幸せだったのです。一緒にいるだけで心が満たされていたのです。たったそれだけが望みだったのに……。

でも彼女は違いました。生涯の伴侶として僕がふさわしい人なのかどうか冷静に見極めていました。そして彼女は頼りになる男を探していたのです。

彼女と付き合うようになって単純に浮かれていた僕は愚かな男でした。今の今まで振られるなんて少しも思ってなかったのですから。

あまりにも突然だったので、僕は感情の抑えがきかなくなりました。別れたくないとまるで子供のように泣きじゃくりました。見捨てないでと泣いてすがりました。

本当に不様でどうしようもなくみじめな気持ちになりました。

 

それからの僕はまさに抜け殻状態でした。自分という人間を否定されたようでひどく苦しかったのです。

何もする気は起こらないし、こんな人生を生きていても意味がないのではと思いました。

そして自分が許せませんでした。

なぜ一番大切なものを失ってしまったのか。なぜあんなふがいない態度をとって醜態をさらしてしまったのか。

このままずっと死ぬまでこのことを引きずっていくのではと思いました。

 

それでも時が過ぎて季節が変化するように、僕のココロも穏やかに回復していきました。

あの時の自分を認めることができるようになると、彼女への憎しみも消えていき、やっと前に進むことができると感じました。止まっていた時がやっと動き出したのです。

 

今でも時々思うことがあります。

彼女と別れていなかったらどんな人生になっていたのだろうと。

でも結局どこかで振られてしまう気がするのです。あの頃の僕はあまりに自分のことしか考えていませんでした。悲しいけれど、失敗してやっと気づくことができるのです。不器用な生き方ですが、同じ過ちを繰り返さないようにするだけなのです。

あれから僕は人の痛みや苦しみをどれだけ理解できるようになったでしょうか。

少しはマシな大人になることができたでしょうか。

あの別れを経験したからこそ、今の自分がいる。

あの出逢いと別れは僕の人生にとって大切な価値があったと思うのです。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-08-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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