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≪怖い描写はないですよ≫ほんとにあった? 呪いのビデオが気づかせてくれた意外な優しさ


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記事:田沼はるま(ライティング・ゼミ)

僕はビビりだ。子供の頃から変わらない。
児童館の図書室で水木しげるの『妖怪事典』の表紙を見て半泣きになったことを覚えている。

加えて僕は強がりだ。これも子供の頃からだ。
涙目であえて『妖怪事典』を持ち歩くことで、勇敢さをアピールしていた。

極めつけに僕はバカだ。もちろん昔からだ。
「常に『妖怪事典』を小脇に抱える少年」という怪現象を自分自身が演じてることに気づかない。

ビビり、強がり、バカの三重苦が治らないまま30歳になった夏。
会社の動画制作部の上司から最大の試練を言い渡された。
「こんど怖いのやるから、心霊関係を死ぬほど調べてオススメをピックアップして」
本当に死にますよ、と思った。
なんと無慈悲な、優しさのかけらもない上司だろうと思った。
しかし30歳にもなって「怖いからヤです」とは言いづらい。
ビビりと強がりは本当に食い合わせの悪い不便な性格だ。

結果的に2カ月ほど怖い話、写真、映像にどっぷり漬かった。
でもそこで出会った心霊写真家、怪談師、心霊映像編集者、怪談蒐集家……。
彼らを見て僕は思った。優しい、と。

調べ始めた頃は、昼夜問わず心霊写真や心霊映像に「ひぃ!」とか「ひゃあ!」とか驚き続けていた。
夜道を歩きたくなくて会社に残り、朝日が出てから帰っていた。
この時点で唯一得られたプラスの感想は、怖い話系ビデオの構成の素晴らしさだった。
当時40~50本借りて夜な夜な観続けた「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズがその代表だろう。
すごく理解しやすい。その流れはこう。

1.まず、「河原」などのシンプルなタイトルが表示される。
2.一般投稿者から送られてきたという映像が映し出される。
3.「これは、投稿者がとある河原で撮影した映像である」といった状況説明のナレーションが流れる。
4.そのまま「投稿者が語るには、得体の知れない何かが映ってしまったというのだが……」と前フリがあり、ここでナレーションが一旦止む。
5.映像が続き、そのクライマックスシーンまでが映し出される。
6.シーンが終わると「おわかり頂けただろうか?」とナレーションが入り、スローモーションや拡大映像で誰の目にもわかるようにリプレイされる。
7.最後に「投稿者がその土地の住人に聞くと、こうこうこういう云われがあるらしい……」というエピローグが語られて終わる。

超わかりやすい。でも超わかりやすいからこそ怖い。
夜道を歩くのが怖くて朝日が出てから帰る日々。
いくら観ても「全部怖い」という感想だけで何の下調べにもならない。
ひとりぼっちで見続けるのも心細すぎる。
そこで、見る目が養われているプロの怖い話の人々から教えを乞うことにした。
その学びが有意義だったので、以下に記したい。

 

【挑戦①】心霊写真専門家に写真を見せてもらおう
まずはネットで見つけた心霊写真供養の専門家に事情を話してお話を聞きに行った。
おばあちゃんとおじいちゃんの二人一組で活動しており、おばあちゃんが撮影や分析をし、住職のおじいちゃんが写真や撮影現場の供養をしているとのことだった。
マンションの一室に迎えられ、梵字の張り紙や何かよくわからないけど神々しい置物に囲まれて緊張していると、おばあちゃんが奥へ引っ込んでは紅茶やスーパーで買ってきたシュークリームを出してくれた。
結論から言うと、最も印象的だったのは心霊写真どうこうよりこのシュークリームの美味しさだった。
数日間、苦手な異文化に囲まれて食欲も落ちていた僕は久々に物を美味しく頬張った。
たぶん、あの美味しさは安心感だったのだと思う。
職場の人も顔色の悪い僕を「大丈夫か?」と心配してくれたが、この人達はただ普通に優しかった。
穏やかな気持ちで、差し出された心霊写真アルバムをめくった。
対面のおばあさんが指さしながら「これはね、ここね」「これ、わかるかしら、これ」と写真を説明してくれるため、孫の成長記録でも見せられているような構図だった。
「この場所はね、昔はこういう場所だったからね。きっとその時の気持ちみたいなのが残ったのかしらね。かわいそうよね」と写真撮影現場の歴史背景を説明してくれた。
不勉強な自分にはまだうまく認識できない写真が多かったからか、不思議と怖さはなく、そこに生きていた人に思いを馳せる穏やかな語り口にしみじみと聞き入ってしまった。
なんというか、怖がることは、茶化すことと同義のように思えてしまった。
幽霊というものがいたとして、どこかから湧いて出たものではなくて、一生懸命生きた「生前」ていうのがあるんだろうなぁと思った。
帰りにシュークリームを2つもくれた。うまかった。

 
【挑戦①による学び】
「幽霊に優しい人は人にも優しい」
「怖くなくなるためには怖さに強くなるより、事情を思いやることが有効」

 
【挑戦②】怖い話のプロのとっておき映像を見せてもらおう
心霊写真おばあちゃんにお会いして物事を無差別に怖がるモードから脱したものの、怖いモノ選球眼が発達しない。
専門家の思う最も怖い映像を聞くことにした。
何冊も本を出されている怪談専門家の先生に連絡を取り、ご自宅を訪ねた。
マンションの最上階の扉をあけると濃いめの色調の和風家具が並ぶ。
「闇の雑貨屋」と言った風情の部屋が大きく広がった。
正座して映像を見た後、確かに怖いものばかりだったが、最期の解説が最も怖かった。
「まあ、この最後のやつな。見た人には1週間以内に何か起こるらしいから」
まさかのリアル「ほんとにあった!呪いのビデオ」状態。
「実績もバッチリ。 はっはっは! まぁ土産だ!」
先生は豪快に笑ったが、あなたが言うと冗談にはならないんです、と僕は涙目になった。
人の笑顔にあんなに腹が立ったのは初めてかもしれない。
帰りはマンションのエレベーターに乗るのさえ怖くて最上階から一段ずつ見晴らしのいい階段を下りる羽目になった。

先生に聞いた話で印象深かったことも、心霊写真専門家お話に通じるものだった。
身内を亡くした方の中には、「おたくのご主人、あそこで見た気がするわ」などのご近所同士の情報交換を生きがいにしている方もいるそうだ。
そのデータを研究をしている大学もあるらしい。
「怖い話」は怖がるから怖いのであって、話の中身だけ取り出すと「怖い」よりももっと適切な感想が浮かぶ話がたくさんあるのかもしれない。

 
【挑戦②による学び】
「茶目っ気に溢れた心霊の専門家もいる」
「呪われるくらいが域という心の強さを持つべき」
「怖いとか怖くないとかじゃない大切な話がある」

 
【挑戦③】いろんな怖い話の専門家たちに話を聞いてみよう
他にも合計10名くらいの専門家に会うと、業界内での交流が盛んだということがわかった。
「あの先生には僕も頭があがらないんですよ」
「あの方にご挨拶して許可頂いて、あの場所に入ったんですよ」
とても人間くさくて律儀な思い出話の中で、こんな話が印象的だった。
「彼……この話をしてたでしょう? 実は僕ね。コレはガセっぽいなと思うんです。実際に行ったときにコレの見間違いだろうなっていう元ネタを見つけてしまった。でも、胸にしまっておいてください。彼はこの話がすごく好きみたいだから。」
誰かの胸の中の「怖い」を守るためにこんな思いやりが交わされているとは驚いた。
他に印象的だったのは「彼が最も誠実に体を張っている」という同業者への称賛や「この話を聞いたときのお客さんの目の輝きと言ったら……」という職人の喜び。
加えて「この手の話は3つのタイプに分けられるが、共通するのはその場の気温だ」といった論理的な分析。
どれも聞いてて怖いというより、ストレートに感動できる興味深い話が多かった。
人里離れたところに出入りするため、意外な事件・事故の通報で時々お手柄もあるらしいのも納得の話だった。
みんな、嬉しそうに、時間の許す限り優しく丁寧に話をしてくれた。

 
【挑戦③による学び】
「怖い話を楽しむためには、純粋であると同時に、大人である必要がある」
「怖い話に向き合う人々は、互いの誠実さを称えあう」
「怖い話が好きな人は、それを聞いたお客さんの満足を祈っている」
「怖い話を楽しむためには、論理的な分析が有効」

 
【全体を通じた学び】
「怖い話は、どうやらけっこう成熟した文化だ」
「そんな怖い話を好きな人は、総じて優しい」
タイトルに書いた「優しさ」にはもうひとつある。
【挑戦②】でビデオを見た日の帰社後、怯えながら上司に「呪いって労災おりますか」と聞いたら「申請通らないと思うけど、まぁ心配だろうからお祓いに行っていいよ」といわれた。
ほんとにあった呪いのビデオで上司の意外な優しさを知った。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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