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「自分たちで映画が撮れるなんて思ってもなかった」とその男の子は言った


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記事:Yushi Akimotoさま(ライティング・ゼミ)

それは、この夏の最高気温を記録した日のことだった。僕が住んでいる秋田県五城目町(ごじょうめまち)という程良いサイズの田舎町で、晴れ渡る青空の下、540年以上も続いている朝市が開催されていた。

五城目の朝市は、2m×2mの面積を数百円という破格の出店料でおさえることができる。普段は地元の農作物や沿岸から運び込まれた海産物が並ぶが、地元の若者や移住者の働きかけにより、今年からは誰でも気軽に出店ができる枠組みが整った。地元の女性たちが手作りの雑貨を売り始めたり、九州での震災を受けてチャリティーの一環で募金を集めたり、様々な人が多様な形でこの朝市に集まり始めている。当然、保健所の許可等考慮すべき規制はあるが、割となんでもありだ。

「誰でも自由に出店できるのなら、子どもだって出店していいってことじゃないか」

そんな悪だくみを思いついた大人たちがいた。ここ数年、「キッザニア」のように、子どもたちに様々な仕事を疑似体験してもらうことで、働くということ、キャリアについて考えるきっかけにしてもらおう、という趣旨のプログラムが人気を集めている。五城目の朝市なら、実際に子どもたちが出店をして、商品やサービスを売り、お金を稼ぐことができる。もちろん、どんなものを提供するのかも、子供たちの創造性に委ねる。もはや疑似体験なんてものじゃない。この五城目町でしかできない教育プログラムができる。題して、「キッズクリエイティブマーケット」。その可能性を実証するべく、早速、知り合いづてにトライアルに参加してくれる子どもたちを募ったのだった。

朝市の前日の土曜日、集まったのは小学6年生の男の子、小学3年生の男の子、小学2年生の男の子と女の子1人ずつ、そしてこども園の年長さんの女の子の計5名。僕もサポートスタッフとして参加した。初回のトライアルということで、みな五城目町在住でお互いに面識がある子同士だ。まずは、翌日の朝市でお店に出す商品を子どもたちで考える。アイデア出しの方法として、僕がユーザー役となって子どもたちからヒアリングを受け、僕の抱えている課題を解決する商品やサービスを考える、という流れをとった。

子どもたちの意欲と集中力は、驚くべきものだった。小学生であれば学校の45分間の授業の中で集中力を維持するのが精一杯と思っていたが、4時間に渡るワークで、子どもたちはたくさん質問をし、たくさん付箋にメモをし、積極的に議論した。大人たちは、ワークの進め方を示すだけで事足りた。あとは子どもたちが責任を持って進めてくれる。下手な大人がやるよりよっぽど生産的なミーティングだった。

そうして、僕が普段の生活の中で「休日の朝はついついだらけてしまい、生産性の低い1日になりがちである」という悩みを持っていることを特定した5人は、商品・サービスの検討に取り掛かる。僕の自堕落な私生活が暴露されてしまうのは気恥しさがあるが、それくらい鋭い質問攻めにあったということでもある。

そこで子どもたちが出した結論は、「映画」だった。朝だらだらしてしまう僕が、朝市に出かけることをきっかけとして元気をもらい、休みの日でも朝起きてきちんと生活しよう、と心を入れ替える、そんなストーリーで、映画をつくる。そうしたら、朝市にみんな来たくなるんじゃないか、そう提案してくれたのだった。ヒアリングの中で僕が「『シン・ゴジラ』はすごくリアルで面白い映画だった」と熱弁した影響も多少あったかもしれない。アイデア出しのために子どもたちが書いた付箋の中に、「映画」の二文字があった。そのメモがまさかこんな形で活用されるとは。

「映画」という選択肢は大人たちが全く予想だにしていないものだった。そもそも、この日は翌日に控える朝市に出店する商品やサービスを考えるのが趣旨だ。子どもたちが五城目町や朝市で調達できるような資源を用いて何か商品を作るのだろうと思っていたのだが、まさか映像という形になるとは。

少し困惑気味な大人をよそに、子どもたちはやる気満々だった。小学6年生の子が、監督をやる、と意気込み、明朝までに脚本も書いてくる、という。まだ小学生にもなっていない女の子は、ナレーターに立候補した。まだ漢字も読めない年齢にも関わらず。結局、子どもたちの意志を尊重し、明日の朝市で映画を撮影し、その場で大人が編集して、当日朝市にいる人たちに見てもらう方向で落ち着いた。幸い、運営側でiPhoneに装着するスタビライザーをたまたま持っており、以前に動画を編集する経験があったことも後押しとなった。その場で映画の大まかな流れをみんなで確認し、キャスト等の分担を決め、その日はそこで解散となった。

翌日。朝8時から会場は猛烈な日差しが降り注いでいた。大人たちはブースの設営に取り掛かる。集合時間が近づくにつれて、子どもたちが集まりだした。しかし、監督の男の子が来ない。彼が持ってくる脚本がないと、撮影がスタートできない。焦る大人たち。親御さんと連絡を取るが、なかなかつながらない。10分ほど遅れて、ようやく監督が合流した。動作やセリフがぎっしり書かれた台本を手に。彼は今日、撮影も一手に引き受ける。監督兼脚本家兼カメラマン。チーム最年長として責任重大である。さあ、これで役者が揃った。

早速、撮影に取り掛かる。ナレーターの女の子が一生懸命に文章を読み上げる。そして、キャストのセリフが始まる。しかし、一人の男の子の演技にダメ出しが入った。さっきまで元気いっぱい声を張り上げ、いたずらをする余裕まで見せていた子が、本番になって急に小さい声でぼそぼそとまくしたてるように話し始めたのだ。緊張しているのだろうか。監督や大人たちの声掛けがあったが、そのほかのシーンでも何度か撮り直しをすることになった。撮り直しをするたびに彼は面倒くさがるようなしぐさを見せたものの、役を放棄することなく、なんとか撮影は継続された。

朝市は12時には撤収となる。長引けば朝市というシチュエーションが成り立たず、視聴してもらう時間も確保できなくなる。時間との勝負だ。そんな状況の中、一生懸命セリフを覚え、その場でカメラを向けられて演技をする。監督もそう簡単に妥協しない。文化祭の演劇の練習でも、もっと時間をかけるのが一般的だと思うが、よくこの強行軍に子どもたちがついてくるものだ、と感心してしまう。みんな、映画を撮るなんて初めてのことなのに。

撮影は1時間ほどで終了。編集経験のある大人が速やかにiMovieでそれぞれのシーンをつなぎ合わせる作業に入る。監督と僕は朝市を練り歩き、映画の上映会の告知をする。「ねえ、もっとちゃんと声出してよ!」「どこで上映するのか言わないと誰も来ないよ!」監督は大人相手でも容赦なく指示を出す。

編集作業が無事終わり、まずは関係者だけで小さくお披露目会だ。さっきまで自分たちが一生懸命に演じていた様子が、画面の向こう側に映されている。話し言葉と文字だけで共有されていた台本が、それぞれの脳みその中にあったイメージが、一つにまとまった映像として見事に再現されていた。スタビライザーのおかげで流れるようなカメラワークが実現したおかげもあってホームビデオ以上の出来上がりになったこともあり、画面を眺める子どもたちの顔が少し興奮しているようにも見えた。

そして、朝市に隣接する施設の一角を借りて、上映会を開始した。といっても、スクリーンは小さなパソコンの画面なのだけれど。キャストたちの同級生や兄弟も含め、大人や子どもが15名ばかりがノートパソコンに映し出された7分ほどの映像を食い入るように眺めていた。監督とキャストたちは、どことなく恥ずかしそうに、でも誇らしそうにしている様子。「すごーい!」「がんばったね」「これ、全部子どもたちが考えたの!?」短いながらも一つの作品としてきちんと完成にこぎつけた子どもたちに対する称賛の言葉が集まる。それは、商品という分かりやすい形ではないにしろ、まさしく人に喜んでもらえるような価値を提供できたということなのだろう。

そして、最後の振り返り。猛暑に体力を奪われ子どもたちの集中力もさすがに途切れていたが、何らかの手ごたえを感じてくれている様子が伝わった。「疲れたけど、楽しかった」率直な感想だ。前日から4時間延々と考え続け、当日は炎天下での撮影。子どもたちが2日間で取り掛かるワークとしては、かなりの密度だったと思う。そりゃあ疲れただろう。でも、ちゃんと子どもたちは走り切った。彼らの自発性に火がつきさえすれば、小学校低学年でも、年長さんであっても、考え続けることができるのだ。

最年長としてチームをまとめた監督は、自分の頭の中でストーリーを生み出し、それを形にしていく醍醐味を覚えてしまったらしい。

「実は、あの子、夜中の1時まで作業していたみたいなんですよ」

お母さんがそうこっそり教えてくれた。それが集合時間に遅れた原因の一つかもしれない。他の子どもたちも読めるようにわざわざすべて平仮名で書かれていたあの台本は、ナレーションも含めてほぼ手直しが発生しなかった。彼の頭の中でイメージされていたストーリーと会話のやり取りがいかに緻密だったかがわかる。それを書き切る根性には脱帽だ。「自分でも映像を撮ったりストーリーを考えたりしていきたい」、そう話していた彼の充実した顔は、普段の生意気な彼とは少し違ったふうに見えた。もしかしたら、これが未来の映画監督の生まれるきっかけになるかもしれない。

「自分たちで映画が撮れるなんて思ってなかった」

ぼそぼそとそう語り出したのは、何度も撮り直しを食らったあの男の子だった。

「自分たちで映画が撮れるなんて思ってなかった、でも、今日実際にやってみて、映画だって自分たちでつくるのも不可能じゃないんだってことがわかった」

乗り気になれないようなことがあったのかな、多少そんな心配もしていたのだけれど、朝市を舞台にした映画撮影が、彼にとっても特別な経験となったようで、ほっとすると同時に、ちょっとじーんとした。

月並みな感想になってしまうけれど、映画撮影という特殊なシチュエーションの中で、子どもたちが普段見せないような表情やキャラクターと出会えて、本当によかったと思う。きっと、子どもたちにとっても、普段出会えない自分自身とばったり出くわすような機会になったのではないか。

この2日間を通じて、大人たちは「お膳立て」をした程度に過ぎない。大人の想定する枠に子どもたちを当てはめようとしたら、映画撮影は実現しなかっただろうし、これだけ子どもたちが集中して取り組むこともなかったはずだ。むしろ僕こそが、子どもの、そして人間の可能性を、子どもたちに教えてもらったように思う。そして、それはそのまま、「人にはいろんな一面があり、多様な可能性がある」という実感につながる。

ちなみに、この映画の主演は、僕だ。貴重な休日をダラダラ過ごしてしまう僕が演じる大人が、朝市を通じて子供と触れ合い元気になる様子を、子どもたちの台本通り精一杯演じた。降り注ぐ日差しに負けず劣らない子どもたちの熱意がなければ、僕はこの人生で映画に出演する機会なんかなかったと思う。教育プログラム、つまり子どもたちが学ぶ機会を提供する側である僕が、逆に子どもたちに機会を提供してもらえた。こんな体験、初めてだ。あの突き抜ける青空の下、子どもたちと台本を読みあったあの日のことは、だからきっと忘れはしないだろう。

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-09-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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