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メディアグランプリ

駄菓子屋とポンカンとゴミ山が教えてくれたこと


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記事:つん(ライティング・ゼミ)

「いや、だからですね……このキッチンは弊社で1番の高級商品ですので……ええ、120万円はいたします」
今日も会社から支給された携帯電話が雄叫びを上げている。何度取ってもやまない着信音が、わたしの心をせかしている。

小さいころ。田舎育ちのわたしは、友達と近くの駄菓子屋さんへ行くのが好きだった。
「はい、じゃあ今日も100円」
そういって曾祖母が握らせてくれた硬貨。ぴょんぴょんとはねて喜び、わたしはそれをまじまじと見つめ大切にポケットへとしまうと、いつものように友達を呼びにいく。近所の友達と歌をうたい、長い坂道を登って、近所の犬をなでたりたんぽぽの綿毛を飛ばしたりしながら、にこにこと駄菓子屋に向かうのだ。駄菓子屋につくと、入り口近くに座っているおばちゃんにあえて大声で呼びかける。
「おばちゃーん! きたよー!」
おばちゃんのムスッとした顔。はいはい、わかってるよという素振りが見え見えではあったが、いつでも黙ってわたしたちを入り口に招き入れてくれた。
当時100円はわたしにとって驚くほどの金額で、それをもってすればおせんべい3枚と飴を1個、それから色つきのジュースを1本とアイドルの写真入りくじが1回引けてしまうのだった。それは子どものわたしが、お金の偉大さを勉強するための絶好の機会だったと思う。すごい。100円って本当にすごい。駄菓子やさんでの買い物を通じ、わたしはこの100円という金額に圧倒され、魅了され、心を踊らされていたのを今でも覚えている。

100円でぴょんぴょんと喜んでいた少女は、小学生にもなると少し知恵がつく。お金はなくてもおやつを手に入れる方法。そう、人様のおうちの柿やみかんを、高い木に登って強奪すればいいのである。これならば100円を払わなくてもいいじゃないか! なんというシンプルで浅はかな計画。しかし、わたしたちはいたって真剣だった。みかちゃんとりさちゃんに肩車されるわたし。木の棒をぶんぶんと振り回し、汗だくになりながらポンカンに棒の先をぶつけようと手を伸ばす。
「こら! あんたたち何しとんの!」
慌てふためき体が前に倒れる。ポンカンの育て親のおじちゃんにしこたま怒られて、
「だって、それ、みかちゃんが欲しいって言ったんだもん!」
しまいには罪をお互いになすり付け合う始末……なんとも滑稽である。泣きべそ顔のわたしたち。よれよれになったスカートを直し、道端に投げ捨てていたランドセルを背負いなおしていると、そこへおじちゃんが3つのポンカンを持って、戻ってきてくれた。
「いいか、このポンカンは今ここでいきなりできたものちゃうんや。おじちゃんが1年かけて、じっくりゆっくり作ったものなんやで。だから、これはほんまは1個250円もする。市場で売ってるやろ。あんたらには1人1個ずつこれをあげよ。鼻水でてるから、拭いてから食べなさい」
なんだかよくわからない感情が押し寄せてきて、わたしは声をあげて泣いた。恥ずかしいのと悔しいのと、ちょっと嬉しい気持ちがぐちゃぐちゃに入り混じっていた。そうか、このポンカンはおじちゃんの日々の汗でできた、大事なものだったのか。でも、欲しかったから盗もうとした。恥ずかしい。ごめんなさい。わたしたちはこうやって、1つのポンカンにこめられた価値と、おじちゃんの心の大きさを学んでいったのだった。

そんな少女も25歳。社会人3年目で仕事にも慣れ始め、普段と違う場所に立ってみたいという思いから、夏休みを使って海外へ旅行に行くことにした。わたしが選んだ地はカンボジア。日本から飛行機で約7時間程度、4日間の1人旅である。ツアーコンダクターさんのどこにいきたいですか? という質問にわたしはすかさず答えた。
「たくさんの子どもたちが働いてるって聞いた、ゴミ山に行きたい」
カンボジアはまだまだ貧困に苦しむ人々が多く、日々の食事や水ですら満足に摂れない家庭も多い。日中は両親が出稼ぎに出るだけでなく、本当に貧しい家庭では子どもたちも学校に行かずにゴミ山で働く。それはそのゴミ山から、少しでも硬貨に変えられるものを探しだし、市場へと売りに行くためだった。
わたしたちの乗ったバスがゆっくりと、ゴミ山に近づく。田畑で不要物を焼きながら、火を見つめている子どもたちが見えてくる。青く晴れた空にもくもくと灰色の煙が立ち、窓を開ければつんと鼻をつく異臭で、思わず口元を覆うほどだった。
勇気を振り絞りバスの外へ足を踏み出し、思い切って目を開けてみる。すると、驚いた。足を踏み出した1歩目から、子どもたちがわたしのそばへ駆け寄って、服やかばんをわしづかみにしてくるのだ。
「ちょうだい! これをちょうだい!」
子どもたちの圧倒的な力。これがほしい、という心からの願い。その想いの深さと大きさが、この手の力にこめられている。言葉を越えて、それを体感した瞬間だった。しかし、わたしは何ひとつあげられない。髪留めのゴム。携帯電話。持ってきたカメラ。小さな花柄のハンカチ。全部全部、あげる勇気もやさしさもなかった。何ひとつとしてあげられない自分がそこにいて、だけど何かをしたい自分がいるのも事実だった。このゴミ山での体験で、わたしは普段当たり前にあるものの価値と、気づかないうちにそれに固執する自分の姿を、はっきりと見つけることができたのだった。

今日もわたしは心をせかされながら、営業活動に励む。100円で飛び跳ねていた少女が、いつの間にやらメーカーの営業となり、120万円のキッチンを売っているのだから驚きである。
「本当にありがとう。キッチンを変えたことでこんなに素敵な生活ができるといのは、お金の金額以上の価値があるってものね」
リフォームされたお客様がにっこりと微笑みながら発する一言で、目が覚める。そうだ、ものの価値は重い。そのものにこめられた想いと時間の蓄積がお金になり、それを受け取った人がそのものに意味と、価値を与えていく。わたしは今そんな仕事をしているのだと、身が引き締まる思いになる。
あの夏の日に確かに感じた、手のひらのポンカンの重さ。カンボジアの子どもたちの手に込められた力。いつか、わたしもポンカンをくれたおじちゃんのように、作られたものの価値を伝えながら、それをそっと人に手渡したいと、心から思った。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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