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メディアグランプリ

電車で泣き叫んで迷惑がられている子どもの正体は私


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遠山 涼(ライティング・ゼミ)

電車は公衆浴場のようなものだ。
そこに居合わせた客同士がマナーを大切にすることで、秩序が守られている。

先日、丸ノ内線に乗っていた。
見ず知らずの人たちが押し黙ったまま居合わせる密室。
乗客たちは、みな静かにしている。
極力、マナーを守りながら、まわりに迷惑をかけないようにしている。

でも、それができない人も電車に乗っている。

同じ車両に乗っている子どもが、急に泣き出し、大声で叫び始めた。
本気を出した防犯ブザーみたいに響き渡る声で、
同じ車両中の乗客たちに悲しみを訴えていた。

そんな時、いつも私は大体このようなことを考える。
(早く泣き止まないかな)
(やっぱり子育てって大変そう)
(だから子どもってメンドくさいよな)
(まあ、子どもだから仕方ないか)
(泣き止ませられない親が悪いよ)

しかしどういうわけかその時、私はそのいずれとも違う気持ちになった。
私の精神年齢が、親よりも子どもの方に近いからだろうか、
私は泣いている子どもの方に感情移入してしまい、悲しい気持ちになってしまった。

思い出してみると子どもの頃は、私も些細なことで絶望的に悲しくなったりしたものだ。

小学3年生くらいの頃、先生に提出しないといけないプリントを失くしてしまったことがある。
クラスの連絡網を作るために、自宅の電話番号と氏名を書いて提出するだけのプリントだった。
それを次の日の朝に、先生が回収して集めることになっていた。

夕ご飯を食べ終わってから、母親に言われてプリントの存在を思い出した私は、
ランドセルの中を探ったのだが、全く見当たらない。
ランドセルを逆さまにひっくり返しても見つからず、
絶対に入っていないだろうというポケットの中や、学習机の全ての引き出しを隈なく探したが、
いっこうに出てこない。

どうしよう……。
私は不安と恐怖に震え、井戸のように深い悲しみに落ちていった。

明日ぜったい、先生に怒られる。
しかも昨日も今日も、他のことで怒られた。
明日もまた怒られるなんて本当に情けない。
3日も連続で怒られるなんてほんとに嫌だ。
でも、プリントが無い……。
こんなに探しても見つからないってことは、たぶん何かと一緒に捨てちゃったんだ。
だからもうどうしようもないし、だからといって逃げたりごまかしたりもできない。
もうダメだ。もうイヤだ。ああ。
死のう。
もう、それしかない。
先生に怒られる前に死ぬしかない。
もう死ぬしかないんだ。

本気でそう思った。
「自殺」という言葉を、テレビでなんとなく聞いたことがあった私は、
「死」という事柄をリアルにイメージできていなかった分、
それを実行することへのハードルは今よりも低かったように思う。

翌日。教室にやってきた先生がプリントを全員に配布した。
それはまさしく私が探していたプリントだった。
「ずいぶん前に渡したから、失くした人もいると思って、また刷ってきました。
まだ書いていない人はいま書いて提出してください」

エンピツで氏名と電話番号を書いて、何事もなかったように先生に提出した。
死ななくてよかった……と安心した。
午後にはすっかり忘れて、いつものようにヘラヘラと過ごした。

そんな子供の頃のエピソードを思い出すと、電車の中でああやって泣く子供は、
なるほど確かに心の底から本当に悲しいんだろうなと思う。

その理由が何であれ、だ。
ほしいオモチャを買ってもらえなかったとか、もっと遊びたかったのに帰らされたとか、
お母さんに抱っこしてもらえないとか、単にお腹が空いているとか。それだけでも、
子どもにとってはマジで絶望的に心底絶叫したいくらいに悲しいのだ。
プリント1枚で死にたくなるほど悲しい気持ちになることも、現にあったのだから。

しかし、当然ながら今の私があの子どものように悲しみを露わにすることはない。
もちろん毎日仕事や人間関係で辛いことや苦しいことはあるけれど、
たとえ欲しいものが手に入らなかったり、時間を自由に使えなかったりという理由だけで、
公衆の面前で泣き叫んだりすることはない。

そのことを、私は改めて思い出させられた。
ということはつまり、忘れていたのだ。

些細なことが悲しかったはずなのに、そのことをすっかり忘れて、
悲しい気持ちにフタをするようにして、いつのまにか人前で泣かずに、
生活していられるようになっていたことを。

あの時、電車で泣いている子供に感情移入して悲しくなったのは、
何かの弾みで、ふだん心がけていたはずのことが疎かになったからだろう。

恐ろしいことだと思う。
そうやってふいに疎かになったことも、そもそも心がけているという事実を忘れていたことも。

たぶん、自分だけに限ったことではないはずだから、おそらく多くの人々がそうなのだろう。

本当は誰しもがいつもあらゆることが悲しいし、実は泣きたがっている。
そんな不安定な感情は、さっさと忘れてしまわないと日々生活するなんてムリだ。

最近「涙活」という言葉を耳にすることがある。
「就活」「婚活」そして「涙活」だ。
能動的に涙を流すことで、こころのデトックスを図るということらしい。
「観たら涙活できます!」を宣伝文句にする映画もあるようだが、
そういうやり方に賛否両論の意見が出てくるのは当然だろう。

本当はいつでもどこでも泣きたいということを忘れて、
むやみやたらと泣かずに過ごせている。

思い出すとややこしくなることを思い出させるような行動は慎んでほしい。
電車の中で子供には泣かないでほしいと思う。

しかし少なくとも、私はもう、なんとなく思い出してしまった。

残念ながら今日も、電車で泣いている子供がいた。
ギャーギャー叫んでいて、全く泣き止む気配はない。
今日はその声を聞いて、少しうらやましく思えた。
***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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