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財団法人は、未来への贈り物ツール


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記事:Sono Mamada Den (ライティング・ゼミ)

日常に入りこんでいて、よく耳にするけれども、実は正確な意味がわからない法律用語というのは、案外たくさんあるものだ。

「財団」とか「財団法人」という言葉もその一種だろう。

法律の教科書には「一定の目的のために拠出された財産またはその集合体」などと説明されている。何度読んでもピンと来ないのがふつう。

法学部の講義でも人の集まりである社団法人の説明には多くの時間が割かれるが、財団法人が詳しく説明されることは少ない。今の大学のキツキツのカリキュラムでは仕方がない面はある。

ネタ、雑学的に「大相撲をやってる日本相撲協会は財団法人なのだ」なんて話が出ることがあるけれども、そう説いたところで
「で?」
と問われるのがオチで後が続かない。

実際、私も財団法人について、教科書的には理解していたものの「ピンと来ない制度だな」というモヤモヤ感を持ち続けていた。

このモヤモヤが晴れた体験があった。数年前、ご縁があって東京、表参道近くにある根津美術館を初めて訪ねたときのこと。

表参道交差点から有名海外ブランドの店が並ぶ通りを、青山墓地方面へ歩くこと15分くらい。北杜夫の「楡家の人びと」の舞台に近い喧騒を離れたエリアに根津美術館はある。

美しく竹が生えそろう入り口。青山エリアという土地柄もあってか、入場者の外国人比率が高い。フォトジェニックな入り口通路付近では多くの人が思い思いの構図でカメラを構えている。

一階には各種の仏像と、特別展のエリア。二階から上に東武鉄道の社長などを務めた実業家、根津嘉一郎氏のコレクションが展示されている。広い庭園にはいくつかの茶室があって、実際に茶会も開かれるらしい。庭の中には調和を崩さないおしゃれなカフェも建てられている。後ろに青山墓地を控えていることもあってか、ここが港区とは思えない閑静な空間。

美術館の資料によると昭和15年の開館当時のコレクションは4,643点。これら根津氏の「旺盛な蒐集の成果」をもとに、平成28年3月末までに所蔵品は7,420件に増えたという。

個人でよくこれだけの幅広いアイテムを集めたものだとつくづく感心する。展示されているものは所蔵品の一部にすぎない訳で、倉庫にはもっと多くのコレクションが収められている。

特別展は数カ月ごとに入れ替わり、刀剣だったり、茶器だったりテーマ別のイベントも折々に企画される穏やかな空間。

この根津美術館は根津氏の遺志により「財団法人」として設立された、とある。

庭に面した美術館のロビーで、そんな歴史を読んでいて、あ、と気がついた。

財団法人という制度は、過去・現在から未来へ贈り物をするツールだったんだ。

根津氏は、私財で収集したコレクションを、未来の私たちに残し、見せたくてコレクションを自分やご遺族の資産と切り離し、財団として拠出することにしたのだ。

財団法人には利益配当という見返りを期待する出資者が制度上、いない。

コレクションを維持・管理、場合によっては拡張しながら、多くの人に見てもらう工夫をし、財務状況については、その収支が相償えば、つまり損失がでない資産運用をすれば足りる。もちろん利益を出してもよいが、それを出資者に配当する必要はない。間違ってもコレクションを売り食いしてまで利益を出す必要はない。

根津美術館の基本ルールを定めた定款には、こうある。

「第3条 この法人は、文化及び芸術の振興に関する事業を行い、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする。」
 第4条 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1) 美術品その他文化財の展示及び活用
(2) 美術品その他文化財の収集、保管及び修復 (以下略)」

根津氏の遺志がここに書かれていた。自ら旺盛に収集したコレクションを後世の私たちに「パス」したかった根津氏の夢がこの基本ルールの簡潔で堅い文章に込められている。

財団法人が未来への贈り物ツールになりうるのだ、と気づいて調べて見ると、「三鷹の森ジブリ美術館」は財団法人である徳間記念アニメーション文化財団(公益法人認定)によって運営され、「長谷川町子美術館」も財団法人の形をとっている。

なるほど、やはり財団法人は夢とコレクション、財産を未来に託すためのツールとして使われているのか。

私の法学部生時代、法人を学ぶ民法総則という講義には一回しか出なかった。その一回が財団法人の説明だったのだ。伝統的な民法学の継承者とされていた教授が
「財団法人というのは、大砲のようなものです。ドーンと撃ったら、自分で方向転換はできないんですね」
とマイクを持たない方の手で砲弾の軌跡を描きながら語っていたのを思い出した。

申し訳ないことに当時は先生の意味するところが、まったく理解できず
「やっぱり、法律はつまらん」
と再び授業に出ることはなかったのだが、根津氏の夢、遺志を実現するためのツールだと考えれば、なるほど、コレクションを残した氏の想いを、そう簡単に変えられるものであっては、まずいわけだ。

昭和15年に亡くなった根津氏の夢とコレクションを乗せた財団法人としての根津美術館は、公益法人認定も受けて、70余年の時を飛び続けている。

夢、思いを未来に贈るためのツール。初めて出会って以来、ものすごく時間がかかったけど、南青山の静かな美術館のガラス張りのロビーで、やっと腹落ちする理解ができました。財団法人。

 

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-09-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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