メディアグランプリ

思い出は心の中にしまうものと考えていた


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記事:徳田 潤さま(ライティング・ゼミ)

実家を売却したときに断捨離した。

私が中学校3年生の時に父親が建てた実家は鉄筋2階建て、緑の大屋根で、兵庫県加古郡播磨町にあった。阪神淡路大震災のとき、実家は激震地からかなり離れていたが、父親は亡くなって母親がひとりで住んでいた。電話で母親の無事を確認したが「もしウチの家が地震で壊れるくらいなら、周囲の家は全部壊れる」と言って笑えるくらい頑丈なつくりであった。そう言えば、家を建てるために基礎工事をしているとき、周囲の方から、いったいどんな家が建つのか?と驚かれるくらい、しっかりした基礎だったらしい。父親の友人が経営する設計事務所にお世話になり、中学生だった私も間取りの検討には参加していた。

もう7年前の9月、いつもの週末のとおり母親の様子を見に行った。玄関に鍵がかかっておらず、不思議に思って中に入ると母親は自分の部屋に入ったところにうつぶせになって倒れていた。救急車を呼んで病院に搬送してもらい、最初の病院ではおさまらず、2つ目の病院でICUに入って意識が戻らなかった時には、もう覚悟していた。翌日、どうしても動かせない出張があったので、身近な親戚を呼び寄せ、家内が病院に向かったのだが、電話で様子を聞くと「お義母さん、べらべらしゃべっている」と回復していた。退院後は私の自宅近くにある大阪府池田市の老人ホームで暮らしたが、次男が私立中学に合格し、明日がオリエンテーションで初登校、という日に亡くなった。倒れてから半年後だった。

その後、思い入れのある実家を売却することになった。
実家のお隣に住む方も、長らく入院された後にお亡くなりになり、相続のために売却するので、一緒に売却しないか、という話をいただいた。お隣も高齢女性の独居で、お子様がいなかった。実家の土地は、お隣の方の親戚から購入した関係で、土地の形が入り組んでおり、同時に売却することが合理的であった。

実家売却の話が進んでいる中で、思わぬことが判った。売却をお願いしている不動産屋さんの奥さんが、私の高校同級生とのこと。この同級生は高校時代に私の家に遊びに来てくれたことがあったので、場所と名前から同級生では?と判ったらしい。実家で壊れたまま長らく放置されていた機械時計を、この不動産屋さんが引き取ってくれ、修理をして動くようになって事務所に飾られてある。

実家を売却する条件の中で、残した不用品は全て処分してもらうこととした。
飾ってあった絵画や版画、アルバムを単身赴任宅に運び、ソファーを自宅で使うようにし、あとの物はトランクルームを借りて置いておこう、と考えていた。

しかし……
トランクルームを借りるのは、1ヶ月で止めた。

どんなに私の思い入れのある物も、私以外の人間にとっては何ものでもない。
思い出は形のある物でなく、心の中にしまっておくものと考え、ほとんどのものを処分した。

2012年11月17日の夕方。1974年8月25日から38年3ヶ月近く、働き続けて止まることのなかったブレーカのスイッチを下ろし、私の実家は心の中の思い出となった。

それ以来、思い出は心の中にしまうもの、と考えていた。

 

 

「主人は現職中に癌のため亡くなりましたが、心底信頼のできる上司に出会いその方のお力添えや多くの支えのお陰で最期まで社会人であることができました」

「今、私の上司は癌と戦いながら私に後を継がせる為、体の辛さを口にせず日々仕事を教え込んでくれています。喧嘩ばかりの日々でしたが自分の辛さを語らず部下を育てようとしている上司と明日徳田様の記事をランチの際に話します」

Twitterで思いもしなかったメッセージをいただいたのは、天狼院ライティング・ゼミで尊敬する寺田さんという先輩のことを書いた記事が採用されたときである。

寺田さんは在職中に癌で亡くなられたのだが、その思い出を文章という形にすると、読者の方々から色々な反応をもらった。

寺田さんのずっと後輩にあたるNTTの技術者の方は「寺田さんにお会いしたくなりました」とメッセージを送ってくれた。寺田さんと一緒にお仕事をされた方は「いつも頭が下がる思い出ばかりです」と。

そんな読者の思いを知ることができたとき、思い出を形にするのも悪くない、と考えを改めた。

考えてみれば、私が天狼院ライティング・ゼミで書いた文章は、稲垣潤一さんのコンサートを手伝った時のこと、附属池田小学校の殺傷事件のときに松居慶子さんから暖かいお心遣いをいただいたこと、花總まりちゃんをずっと応援し続けていることなど、自分の思い出を形にしたものが多かった。その思い出に、稲垣さんファンの人達や、松居慶子さん・花總まりちゃんファン仲間が共感して応援してくれる。

思い出を文章という形にすると、その文書を読んだ人達の人生とふれあうことができる。
思い出が文章を通じ、時を越えてよみがえってくる。

 

 

実家を売却するとき、建物は壊されることになっていた。が、聞くところによると、あまりに頑丈な建物だったので解体費用がかさむため、内装をリフォームして新たな人が住んでいるようだ。

元実家近くのお寺に墓参りにいくたび、思い入れのある大屋根を見ながら
思い出が形をもって残るのも悪くない、と考える今日この頃である。

 

 

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2016-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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