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シネフィル(映画狂)なのに、映画館で映画を見ることにあまり興味が持てないことについて


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記事:菊地功祐さま(ライティングゼミ)

私はTSUTAYAから年賀状が送られてくるほどの映画狂だ。
学生時代には年間350本ほど見ていた。休みの日になると1日に6本も映画を見ていたと思う。

自分でも思うけど、だいぶ気持ち悪い。

とにかく映画が大好きだったのだ。
ふつうの大学に通っていたが、図書館に映画資料室があったため、授業をサボっては映画を見に行っていた。
もはや大学まで勉強しに行くというより、映画を見に行っていると言っていいほどだった。

フランスの言葉で言うと、完全なシネフィル(映画狂)だ。

ま、そんな学生時代を送っていた映画好きの私であるが、一つだけ矛盾した点を持っていた。

それは……
「映画狂なのに、映画館で映画を見ることにはあまり興味がない」
ということだった。

公開されても、すぐにDVDが出るから映画館に行く必要がないということもあるが、私はどうしても日本の映画館というものに抵抗意識を持っていたのだ。

その理由は単純で……
入場料が高すぎる! のだ。

ただの映画一つで、大人1800円は高いというのが一般的な感覚ではなかろうか? 数ある娯楽の中でも高額な部類に入ると思う。

調べてみると日本の映画館の入場料は世界一高いらしい。
アメリカやフランスでは600円ほどで映画を見れるから、やはり日本の映画館の入場料は相当高い。

日本には映画館で映画を見るという文化自体がないから、年間入場者数も少なく、自然と入館料も高くなってしまうのだ。

そして、日本の映画館は映画をあまりに高尚なものと捉えすぎているような気がする。座り心地がいい椅子、映画が始まると静まり返る客席。
椅子の隣の人と一切会話をしない。

六本木の映画館でタランティーノの映画を見ていた時なんて、隣のおじさんにポップコーンを食う音がうるさいと注意された。
タランティーノの映画なんだからポップコーンと一緒に楽しみながら映画を味わいたいのに、なんで周囲の音を消してまで映画だけに集中しようとすんだよ。

そのおじさんもタランティーノを見るということは、かなりの映画ファンだと思うが、周囲の雑音を消してまで、高尚に映画を楽しみたいというのはどうなんだ? と思った。映画を高尚なものと捉えすぎているような気がする。

どこか心の中で映画館といえば、大衆がワイワイと楽しみながら映画を見て、見終わった後には、隣の席の人と、「この場面、面白かったね」と語り合い、コミュニケーションや人情味が溢れる場所な気がするのだ。

むしろ、そうあってほしいのだ。
70、80年代の日本の映画館はそんな雰囲気があった気がする。

自分が望んでいるのはそんな映画館だった。
どこかにそんな映画館ないかな? あるんじゃないかな? と思っていた矢先。
見つけた!
旅行先で行ったタイ・バンコクの映画館で。

バンコクの中心街は、経済成長が著しく映画館も整備されていて日本の映画館と外観はほとんど変わらない。とても綺麗で最先端の映画館だった。
何が日本と違うかというと、映画を見る鑑賞者の態度だ。

自分が見た映画は「Lights Out」というホラー映画だったが、とにかく怖いシーンになると観客が反応しまくるのだ。

「きゃー!」と。

しかも、上映前の注意点で、隣の人と手を握らないでくださいとある。
皆、手を握ったり、おしゃべりしながら映画を楽しむのだ。

タイには王室を尊重する文化があり、上映前に王室のCMが流れるときには全員起立して敬礼する。
なんだ? この一致団結感は……

映画館にいる客席全体が同じ映画を見ているだけで、お互いコミュニケーションを取り、一致団結している感じがしたのだ。

タイの映画館はコミュニケーションをする場所だった。

映画の内容よりタイの映画館に衝撃を受けた私は、フラフラになりながらも宿があるカオサンロードに向かっていた。

世界中からバックパッカーが集まるカオサンロード。
その通りで映画館というものにカルチャーショックを受けた私。
面白い映画に出会って衝撃を受けたことは今までに何度かあったが、映画館という空間で衝撃を受けたのは初めてのことだった。

何かモヤモヤを抱えながら日本に帰国し、タイの旅行を忘れかけていた頃、
ある日、渋谷のスターバックスに並ぶ人を見て思った。

あ! この感じ、タイの映画館に似ている。

みなさん、週に何度かスターバックスに行きたくなる日はないだろうか?
スターバックスのコンセプトは「職場と家庭をつなぐ第3の場所を作る」なのだ。コーヒーを売っているのではなく、コミュニケーションをする場所を売っている。

スターバックスという空間には、人々の心の中でブランドが芽生えているのだ。
タイの映画館という空間にも、ブランドがあった。

日本の映画館という空間はどうだろうか?

映画というコンテンツ自体を面白くすることが第一優先なのはわかるが、映画館という空間を面白くすることも大切なのではなかろうか?
スターバックスのように、あの空間に自然と人が集まってくるような映画館を私は作りたい。

 

***
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2016-10-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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