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ふるさとグランプリ

地元スナックから25歳OLが帰れなくなってしまった理由《ふるさとグランプリ》


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記事:千代子(ライティング・ゼミ)

東京で、一人暮らしをしよう。

通帳を見ながら、ふと決心した。
就職して半年が経ち、仕事にも慣れてきた。資金も少しばかり貯まっている。
憧れの東京暮らしに胸を躍らせ、早速物件探しにとりかかった。

キッチンが広くて、オートロックで、駅から近くて、お風呂とトイレは別で……。
インターネットの検索機能は便利だけれど、条件リストのチェックが増えればヒット数は減ってしまう。
終いには「お探しの物件が存在しません」との冷たい返事。6万円で東京に住もうというのは図々しいのだろうか。
それでも、最近物騒だからセキュリティは捨てがたいし、お客様にお風呂を見られるのは気が引けるからユニットバスは避けたい。考えれば考える程どの条件も捨てがたく、高望みだとわかっていても適当な妥協点が見つけられない。

……なんだか、難しいな。
大きくふくらんだ期待がしょんぼりとしぼんでいく。

「決め手は、珈琲かな」

翌日、一人暮らし歴の長い先輩に部屋選びのコツを尋ねると、そんなことを言われた。
それは、古くからある喫茶店Sのオリジナル・ブレンド、420円。何か特別な仕掛けがあるわけではないけれど、その店で、その珈琲を飲むために、西荻窪に引っ越してきたというのだ。

「部屋探しじゃなくて、まずは街選びからだよ。部屋は『縁』だから、街が決まればおのずと出会えるよ」

そんなものなのだろうか。

「試しに、家に住んでみる? 3ヶ月くらい旅に出ようと思ってるから、その間だけ貸してあげるよ」

しぼんでいた気持ちが一気に膨らむ。
そして、是非に、とお願いした3日後から、西荻窪のアパートで東京ライフをスタートさせた。

その部屋は、ごはんが驚くほどおいしく炊ける炊飯器や、アンティークの素敵なお皿、多機能オーブンレンジなど、一人暮らしを充実させるアイテムがたくさん並び、ため息が出そうなくらい素敵な空間だった。

毎日、会社から帰るのがものすごく楽しみだった。

西荻窪の飲食店はバラエティ豊かで、夜遅くても選択肢が無限に広がっている。日本一おいしいかつ丼、看板娘がとってもキュートなインドカレー、ニンニク餃子が絶品でいつ行っても満席の中華飯店、お洒落な家具や雑貨に囲まれたネパールカフェ……。朝には焼きたてのパンの香りが駅までの道に充満している。
八百屋や肉屋、魚屋が数店舗ずつ存在し、お店のおばちゃん、おじちゃんと話をしながらその日の献立を考えるのも楽しかった。
アンティークの生活雑貨を売る店も多く、帰り道に寄り道していると平気で1、2時間は経ってしまう。アンティーク家電と言えば聞こえはいいが、そこまで古くないけれど新しくもない「中古製品」をさす場合もある。一人暮らしを始めるにも、初期投資が大分抑えられるわけだ。
アンタァ、これ持っていきな! と庭になっている柿をわけてもらったり、ボールペンと一緒に洗濯してしまった白い服を知らないおばさんに漂泊してもらったり……西荻窪は憧れていた以上に素敵な東京だったけれど、なんというか、思っていたより敷居の高くない東京だった。

あっという間に借り暮らしの3ヶ月も過ぎ、気が付けば私も西荻窪の住民になっていた。
駅から徒歩25分の、私の砦。フローリングを捨てた代わりにコンロが2口。部屋はちょっぴり狭いけれど、台所が広い。シンクが大きい。松下電工(!)のバランス釜には、追い炊き機能が付いている。先輩に言われた通り、西荻窪という街が大好きになったら、部屋選びには苦労しなかった。

私の場合、強いて言うなら決め手はインドカレー。週に4回通っていたら、いつの間にか「おかえりなしゃまっせ」と迎えてもらえるようになった。ちょっと難解な日本語で、外国人の店員が一生懸命話しかけてくれる。こっそりデザートをサービスしてくれたり、何日か会わないと心配してくれたり、店の外ですれ違っても挨拶をしてくれる。通い続ける内に、その店に行けない日が続くと寂しくなった。もう、離れられなかった。

ようやく珈琲の正体をつかんだ。
(実は、喫茶店Sの店員はみな手足の長い長身イケメンだから、そのイケメンが淹れてくれた珈琲を目的に通っていたのかと疑ってしまった。まあ、それも含めて、珈琲にまつわる、この街のコミュニティが魅力だってことなんだろうけど。)

先輩の好きな喫茶店の並びには、スナックがちらほら存在する。
そういえば、街のスナックは、食べログやフェイスブックを使った宣伝、ビラ配りや呼び込みなどの集客をしないけれど、毎日通う客がいる。ちょっと敷居が高くて入りにくいぶん、近所の常連客が守られ、なおかつ近所付き合い故の「ボラれない」という暗黙の了解があるかららしい。
ママに紹介したいと思える仲間だけを、お客さんが店に連れてきて、少しずつ輪が広がってゆく。

スナックはコミュニティ・ビジネスなのだ。
だから、その店が3年もったなら、あとはママが死なない限り安泰らしい。

同じだ。
西荻窪のコミュニティにはまってしまった私は、西荻窪がなくならない限りここから出られない。

『スナック西荻』とでも呼びたくなってしまうこの街に入り浸って2年が経った。
おいしいお酒に小料理をつまみながら、悩んだり嬉しかったり、時には叱られたことを思い出す。西荻窪で出会った人と話が合って、そのままお花見に行くことになったり、家を行き来する仲になったりもした。近所に助け合える仲間もずいぶん増えたし、おいしいお店を教えてくれと頼まれたらある程度案内できるようになった。

きっと、私もこの街に受け入れられて、コミュニティの一部として機能しはじめている。
次は、私が新しい仲間を連れてくる番だ。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

ふるさとグランプリとは?
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