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手間暇かければいいってもんじゃないのです


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:千代子(ライティング・ゼミ)

「隠し味は、ビタミン愛ですっ!」
アツくなったおばちゃん料理人が、テレビの料理番組でそんなことを言っていた。

それは肉じゃがだったか、里芋の煮っ転がしだったか忘れてしまったが、とにかく茶色い煮物だった。
見た目の派手さはないけれど、確かに愛情たっぷりのおふくろの味だ。

私は料理が好きだ。
料理がと言うか、おいしいものを作って食べることが大好きだ。
そして料理と言うものは、手間をかければかけるほど美味しくなると信じていた。
じっくりコトコト煮込んだとか、一晩漬け込んだとか言われれば、もう確実に美味しい。
私にとってのビタミン愛は、手間をかけることだった。だから、時短やお手軽、ラクチンを謳う料理がどうしても受け入れられなかった。

ところが最近、その信条が崩れつつある。

2年前に一人暮らしを始めて、まず買い揃えたのは冷蔵庫と石釜オーブンと圧力鍋だった。
帰宅したらまず米を研いで、30分浸水している間におかずを作り、圧力鍋で炊き上げる。
冷蔵庫には常に4~5種類の常備菜を用意し、それぞれを小皿に盛った豪華な夕食で一日を締めくくっていた。
野菜が高かろうが、ラーメンを食べたい気分だろうが、とにかく手間をかけた健康的な料理を食べることが幸せで安心できた。その頃よく作っていたのは、オーブンと圧力鍋を駆使した身欠きニシンの甘露煮や、わざわざ中華街で買ってきた蒸籠(せいろ)で蒸した手作り焼売、何十種類もの野菜を煮込んだ具だくさんスープ、エトセトラ……。
自分の夕飯を作るのに毎日2時間くらいかかっていたたし、家計に占める食費の割合もかなり大きかった。

転機はインドカレーとの巡り合いだった。

その日は朝からカレーが食べたくて、夕方になっても頭の中がカレーでいっぱいだった。
しかし、手間をかけないと気が済まない私は、手抜き感の否めないルーカレーは絶対に作りたくなかった。
そうなればスパイスカレーを作って食べるしかない、とどこか追い詰められた気持ちで本屋へ向かい、スパイスカレーのレシピ本と数種類のスパイスを購入して帰宅した。

その本によれば、スパイスが3~4種類あれば本格的なスパイスカレーが作れる。
スパイスが少ないのはいささか手抜きな感じはしたが、基本さえつかめば手をかけるポイントはいくらでも見つけられるはずだから、最初は素直に従うことにする。

しかし、しょっぱなから驚いた。フライパンに熱した油と粗みじんにした玉ねぎを入れたら、あとは極力触らない。飴色玉ねぎ、なんて言葉は、どこにも出てこない。
少しでも焦げ臭く感じればすぐに混ぜてやろう、と木べらを握りしめながら玉ねぎを観察していると、狭い台所に強烈な香ばしさが充満した。放置しただけのくせに、大変においしそうなのだ。
さらにもっと驚いたのが、この後の工程だ。トマトを加え、スパイスと塩を加え、水を入れて煮立てたら肉を入れて煮込んで完成。カレーができあがってしまった。

しかも、そのカレーはおいしかった。
玉ねぎの香ばしさや甘味、トマトの酸味、ほろほろの鶏肉に凝縮された旨味が融合した、シャバシャバのルーが白いごはんに合うことと言ったら……! 特別な食材を使ったわけでも何時間も煮込んだわけでもなく、出汁やスープの旨味にも頼っていないのに、コクがあってうまい。ルーカレーと違って、スパイスカレーは出来立てがいちばんおいしい。日本のおふくろカレーは2日目がいちばんおいしいなんて言われてるけれど、インドでは毎食ごとに新しくカレーを作り、出来上がったらすぐに食卓に並べる。そういうレシピなのだ。
尚且つ、スパイスカレーは簡単だ。レシピの分量通りに作ったし、材料も工程も省いたり足したりはしていない。正当な作り方で、もともとが簡単だった。

信じられなかった。
今まで大切にしてきたビタミン愛に裏切られた気がして、悔しかった。
悔しくて、あら捜しをするような気持で解説を読んでみると、さらに信じられないことが書いてある。
「スパイスには味が無い」
頭の中はハテナだらけ。スパイスの役目は色・香り・辛味をつけることだけらしい。
「インドカレーには旨味と言う概念がなく、味を左右するのは塩分だけ」
かつお節や昆布の出汁、ブイヨンやフォン・ド・ヴォーのUMAMIがその料理を支えるベースになるのではないのかッ!

仕方がないから、もっと手間をかけて、もっと美味しく作れるようになったら、それを私の定番にしようと思った。なんとしても、簡単な料理は楽をしているようで嫌だった。
しかし、安易にスパイスを増やせば「カレー味」のバランスが崩れ、ただ「スパイスたちの混ざった匂い」がする。スパイスを入れ過ぎればカレーが苦くなった。
飴色玉ねぎを作ってから同じレシピでカレーを作れば、おいしいけれど香ばしさがグンと減った。
野菜を煮だして作るスープで作れば、共通認識のカレー味からオリジナルカレー味へシフトしていくのがわかった。
とにかく、手をかければかけるほど、カレーの味がずれていく。

そして、実験だと思って繰り返しカレーを作るうちに、あろうことか、簡単に作れることに心地よさを感じるようになってしまった。一日働いて、帰宅して、さっさとカレーを作って、煮込んでいる間に米を炊けば、1時間で食べ終わって洗い物まで終えられる。ゆっくり休める。

あれほど妄信していたビタミン愛には、実は味が無く、「料理を頑張っている気分」を盛り上げる役目しかなかった。
手間がどんなにかかっていようと、塩分の足りないおかずはごはんがすすまない。
思い込みをいったんクリアにしてみれば、合わせ調味料を使った中華も、3食98円の焼きそばも、冷凍枝豆もおいしくて、疲れた体に染みわたる。無理をする必要はない。そう思ったら、肩の力が抜けて急に楽になった。

自分ルールに囚われすぎると、窮屈だ。
おいしさの中には、味だけではなく作りやすさも含まれていると思う。
たまには頑張って凝ったものを作るのもよいけれど、毎日のごはんは気軽に作れるくらいがちょうどいい。

食べることは生きること。

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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